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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生27巻7号

1963年07月発行

雑誌目次

特集 石垣純二氏の「保健所事業に期待するもの」を読んで

これからの公衆衛生

著者: 児崎宣夫

ページ範囲:P.349 - P.352

 これからの公衆衛生の方針的な,若干抽象的になりますが,公衆衛生一般についての御参考にしていただくというつもりで,以下述べさせていただきます。

みんなのコミュニティに対する意識を

著者: 村中俊明

ページ範囲:P.352 - P.355

はじめに
 本年1月号の「公衆衛生」に石垣純二先生が「保健所事業に期待する」の中で「保健所こそ被害者であり現在の保健所に期待するところは何もありません。期待するのは厚生省に対してであり,あるいは府県衛生部に対してであります。」といわれている。確かに現実は保健所は被害者であるかもしれません。しかし,被害者は保健所だけでしょうか。この反問は別として,ある面においては保健所は自らの手では打ち破ることのできない壁に直面していることも事実です。けれどもそれだからといって保健所は被害者として受動的な立場に立つだけでよいのでしょうか。ただ慢然と他人が解決してくれるのを待つだけでよいのでしょうか。保健所は県からの,国からの,あてがいぶち以外には成すすべはないのでしょうか,私はNo.!といいたいのです。

保健所発展への思慮

著者: 栗原忠夫

ページ範囲:P.355 - P.358

 1月号の本誌所載石垣氏の「保健所事業に期待するもの」という論説の冒頭において,氏は「地区の人々に愛される保健所事業,地区の人々が本当に喜んでいる保健所事業を期待している」ということを総説的に述べている。その通りであると思う。だが現在保健所に勤務する者として,愛されるために保健所は一体いかにしたらよいかを改めて考えさせられた。
 愛されるためには誠実さをもって仕事をやり,住民の信頼をかち得なければならない。その信頼から生れる心の喜び,そんな関係が保健所と地区の人々との間に生じた時愛される保健所といえるのかもしれない。万人が期待している健康長寿に寄与するために保健所は誕生したのだから,仕事を遂行するに当って保健所の現状がたとえいかなる状態であろうとも,信ぜられ喜ばれるということは,保健所の使命からいって,それは至上の命令である。

叱た鞭励の声

著者: 橋本道夫

ページ範囲:P.358 - P.361

全般の印象
 石垣先生の論文を読んで,先生は共同保健計画の原則と重要性を誰よりもよく理解して頂いているという感を強くした。その故にこそ痛烈に厚生省のあり方に批判を加えておられるものであり,これは公衆衛生関係者にとって叱た鞭励の声とも受けとったのは私のあやまりであろうか。
 よく近ごろ共同保健計画は下火になりましたねという声を耳にするが,共同保健計画というのは何も固定的な主体性を監持した1つの事業ではなく,公衆衛生のすすめ方の原理や方法論ともいうべきものであり,従来の統計,疫学,試験検査,健康相談,衛生教育,地区組織などときわめていろいろの角度からの公衆衛生の基礎となる原理,方法のオリエンテーションをつけてくみ合せたものであり,1つの社会的な過程として解されるべきものであるということが正しく理解されていない場合が案外多いことは残念なことであるが,石垣先生の御意見はこのような原理や方式が先がける行政の体制の確立を逆説的に近いような論法でアッピールしておられると私は受けとっている。ただ,ではどのようにして,またどのような具合にそれが行われるべきかという具体的な面にほとんどふれておられないように思われるが,これは行政担当者の責任で明かにすべきことだとしておられるのであろうか。

原著

胸部X線集団検診時に発見された肺腫瘍について

著者: 土屋真 ,   竹内敏博 ,   鈴木弘之 ,   伊藤裕一 ,   一ノ渡義巳

ページ範囲:P.362 - P.368

I.緒言
 わが国における最近の悪性新生物の死亡率は総死亡率の減少とは逆に著明に増加し,ことに肺癌死亡率は10年間で約4倍となり,40歳以上では1万人に1人以上であるといわれている。しかし今日肺癌患者の半数以上が手術不能であるといわれ1),集団検診による早期発見の必要性が叫ばれて来ており,すでに野辺地2),堂野前3),立花4)5)らの成績がみられる。ことに呼吸器は,悪性新生物死亡者の部位的百分比が,男8.5%,女4.8%にすぎないが6),胸部X線検査という苦痛を与えない簡易法で,比較的容易にスクリーニングが可能であるから,結核検診時の読影に際しても注意すべき事と思われる。ここに著者らは,保健所で毎年行なってきた結核の胸部X線集検で発見された,3カ年間の「肺腫瘍の疑い」の患者の事後調査がまとまったので報告する。

生命表からみた小倉市民の健康

著者: 坂田守 ,   二村浩介 ,   真次勇 ,   藤原幸夫

ページ範囲:P.371 - P.376

I.緒言
 最近医学の進歩によって,結核をはじめ死亡率の低下は著しいものがあり,それをもとに作製される生命表も年々改善されつつある。その生命表がよく健康度の指標として利用されているが,余等は今回,昭和35年の資料をもとに,簡略生命表を作製し,市民の健康度を推察すると共に,全国および昭和30年小倉市簡略生命表との比較を試みた。
 しかし,小倉市という大きい行政区画を単位とする生命表で,その市民の健康度を推察することは,必ずしも適当ではない(小倉市全体が等質でなく,人口密度,地形,地勢,人口の年齢構成,主職業,その他種々の要素が異つているので)が市域をその特徴によって分割する資料がないので致し方がないと考える。すなわち,ある市域によっては,この健康度に幾分差異のあることを念頭におく必要がある。

高血圧者における一方の眼底のみをみた検査成績とその検討

著者: 竹内敏博 ,   土屋真

ページ範囲:P.377 - P.379

I.緒言
 わが国死因の第1位をしめる脳卒中および第3位をしめる心臓疾患への国民の関心が,最近非常に高まってきた。ことにこれら循環器疾患における眼底の静的,動的変化の重要性が認識され,集団検診にもとり入れられているが,多人数の消化が必要なスクリーニングという目的から,一方の眼底のみによる集検方式が論ぜられている。著者らも今回ことに,一方の眼底のみの検査法による見落し率を検討したので報告する。

九州・北海道等の炭鉱従業員寄生虫相の比較研究—第10報北九州炭鉱における主要寄生蠕虫の駆除効果

著者: 佐々学 ,   田中寛 ,   三浦昭子 ,   白坂竜曠

ページ範囲:P.380 - P.385

 1956年以来三菱鉱業健康保険組合に所属する従業員及びその家族の腸内寄生蠕虫の調査及び駆虫対策の研究を続けてきた。本研究は1960年7月より61年3月迄に行った北九州筑豊炭鉱の従業員の調査成績である。この地区は1958年3月迄に第1回目の検査をすませ,その後駆虫や予防の対策を施して来たので,今回の調査ではその間における総合的な駆除効果を推定することに努めた。

三重県下における伝染性単核症を疑わせる熱性疾患の一流行例

著者: 松井清夫 ,   坂本弘 ,   坂口力

ページ範囲:P.386 - P.389

 Infections mononucleosisは1920年,SpruntおよびEvansにより,また,Drüsenfieberは1889年,Emil Pfeifferにより命名され,同一疾患であり,わが国においては,伝染性単核症として九州四国地方に多く,鏡熱,日向熱,土佐熱などといわれ,その地方の地方病的名称が付されてきた。
 本症の病原体については,種々の検索がなされ,操らのickettsia Sennetsu Misao et Kobayashiの発見2)をみるにいたった。また,同Rickettsiaをもちいての症候学的検討をはじめ,治療に関する知見も数多くあげられてきている。一方,本疾患と思われる流行例が,本州においても兵庫県3),広島県4),などからなされてきた。また,四国の徳島県5),九州の宮崎県7)においても流行例が検討されてきたが,本症特有の三微候を呈しながら,必ずしもRickettsiaの検出に成功しているわけではない。また,欧米におけるInfections Mononucleosis(Drüsenfieber)と同一疾患なりやいなやの論議も見解の一致をみていない7)。われわれは,三重県下における某山村において,本症を疑わせる58名におよぶ流行例を経験した。われわれは病原学的検査をおこなわなかったが,同県下における本疾患を疑わせる流行例の報告が未だないため,あえてここにその概要を報告する。

名誉会員を訪ねて・8

水島治夫先生にきく

ページ範囲:P.390 - P.396

初めは内科を志望
 編集部先生,きょうはお忙しいところをありがとうございました。先生は衛生学会と産業衛生学会の名誉会員で衛生学には非常に御貢献のある方なんですが.先生のこれまでのご経歴からいろんなことをお伺いして.これからの若い人たちの参考にしたいと思うんです。いろいろおもしろいお話を承わらしていただきたいと思います。京城のほうに良いことおいでなすったんですが,東大をお出になってすぐに京城のほうにおいでになったんですか。
 水島 ええ,そうなんです。

保健所の問題点

もっとボランチア活動を

著者: 浜口剛一

ページ範囲:P.397 - P.398

1.ボランチア活動
 私がはじめて保健所に勤務したのは,昭和28年6月だから,今年でちょうど10年になる。それまで大学で結核を専攻していた関係から,主に結核関係の仕事を与えられ(身分は技師補であった。)2カ月程で技師に任官した。運よく公衆衛生院の1年コースに行くことができ,保健所に帰って間もなく,保健予防課長に任ぜられた。2年余りで現在の吹田保健所の所長になった。私の保健所における経歴をざっと招介したのは,いろいろな立場で保健所の仕事をしてきたし,またいろいろな立場で(保健所内から)保健所をみてきたことを理解してほしいからである。
 10年前と現在の保健所をくらべてみると,変っているところは,大きく変っているが,一方では変りばえのしない点もかなりある。昭和28年といえば,講和条約が成立した後で,衛生行政全体が,予算の面においても,機構の面においても(衛生部廃止という)後退が目だってきた時代である。そうして間もなく公衆衛生の"たそがれ"が人の口にのぼってきた時代であった。このような時期に大阪においては,保健所・大学・研究所の若い医師が中心になって,他の職種の人々に呼びかけて,「大阪公衆衛生の会」が結成された。後に全国的な「公衆衛生懇話会」へと発展していったのであるが,大阪においてはこの「公衆衛生の会」に結集した人達による,ボランチア活動が公衆衛生の推進力になっていた。

準都市型保健所のなやみ

著者: 塩沢満

ページ範囲:P.399 - P.402

はじめに
 厚生省では昭和35年8月の通ちょう1)で保健所の運営改善について,総合的,効率的運営および関係機関,団体との緊密な連けいについて指示し,さらに保健所の型別,その運営方針,整備の基準等が明らかにされた。その後,これらの事柄が当所ではどうなっているか,検討を試み問題点を拾ってみたいと思う。

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第16回日本医学会総会における衛生関係4学会連合会

著者: 西川

ページ範囲:P.376 - P.376

 4月1日より5日間,大阪大学において第16回日本医学会総会が盛大にとり行なわれたことはすでに御承知の通りです。衛生学・公衆衛生学関係の分科会は,この5日間の会期中の3日,4日の2日間にわたり分科会を開催した。かねてより待望された衛生学会,公衆衛生学会,産業医学会,民族衛生学会の4分科会の合同分科会である。このうち公衆衛生学会だけは一般演題の募集を行なわなかったが,他の3学会の募集に応じた350題の発表が大阪市立大学杉本町学舎においてとり行なわれた。もち論特別講演・シンポジウムは4学会ともに実施している。一般演題は口頭発表,壁発表,誌上発表の3形式を利用して同一構内の会場において特別講演・シンポジウムとともに並行して行なわれた。参加会員は無慮2,000人といわれている。
 本連合学会の運営については2日間という期限があり演題数はばう大であったから事前に無理のあることは判っていた。けれども口頭発表の時間を10分に延長し討論の余裕を分もつことにした方式,壁発表のなごやかな雰囲気のうちでの討議など何れも十分な成果を挙げたように感ずるものが多かった。おそらく今後の学会運営に示唆するところが大きかつたと思うのは筆者のみではあるまい。学会終了後に,批判会が開かれた。その内容の概略を記すことにする。

文献

大気汚染に著明な相違のみられた2つの共同社会における肺機能及び他のパラメーターについての比較

著者: 大久保

ページ範囲:P.379 - P.379

 T. L. C.,(全肺容量)V. C.,(肺活量)M. B. C.,(分時最大換気量)を性別年齢別にみると男性は女性よりも高く高年齢に至るに従って高くなる。電子高速計算器を使用して回帰分析を行なった所では性別による年齢と身長とが肺機能に影響する重要な因子であることが明示された。身長に於てSewardとNew Florenceの女性では差は余りみられなかったが男性では統計学上5%の水準てSewardがNew Florenceより低い有意差を示した。今回の肺機能検査では性別に年齢と身長に対して補整されたあとの成績をみるとAverage Air-way ResistanceとAir-way Resistance×Voltumeの測定値を除けば有意差はなかった。しかしA. A. R. とA. R. ×V.の測定値における有意差を大気汚染による相違に基くか,または現在まで検査せられていない他の因子によるのかは明白でない。ここで年齢,性および身長に加えて他の因子として体重,体表面積,喫煙習慣,職業および居住期間を考慮に入れて評価すると,体重,体表面積を加えてみた相関係数に於ける増大は統計学的には有意差を示す因子ではなかった。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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