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特集 老人の保健問題
老人の福祉問題—特に最下層にある老人について
著者: 塚本哲1
所属機関: 1東洋大学
ページ範囲:P.493 - P.500
文献購入ページに移動平均余命がのびたということを,直線的に老人個々人の寿命が著しくのびたと,うけとることは没理論的だとしても,実際に個々の老人の寿命がのびつつあることは事実でである。今後社会保障や公衆衛生やまた医学の進歩によって,老人は一層長生きできるようになるであろう。しかしいかに長生きできるようになったとしても生活が豊かなものでないならば,その喜びや人生の意義はまことに乏しいことになるであろう。実際にわれわれが相談事業の面で接する老人のなかには,貧困・疾病・人間関係の不調整などから,生きていることに多くの不安を感じ,「お迎え」の一日も早からんことを念願している人が少くない。
ともあれ人間の永い歴史の流れのなかに一つの世代を継承し,個人的にも幾山襞を越えてその経験を社会に生かし,社会的生産に寄与してきたのが老人である。したがってその生活力や境遇に相違があったとしても,ひとしく後代社会への継承者として全く同様に処遇すべきものである。しかし現実の問題として65才以上530万を越える老人の実態は所得や文化の享受に著しい格差があり,処遇の方法も単純一様な型式的なものではあってはならない。換言すれば机上の抽象的な企図や施策であってはならないのである。
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