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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生28巻10号

1964年10月発行

文献概要

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DESK・メモ—丹波の徳利

著者:

所属機関:

ページ範囲:P.561 - P.561

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 清水坂を下るうちに夕かげは濃くなってきた。清閑寺から辿って来た脚が心もち重い。古い雑器を売る店なども奥の方はくらくなって,わずかに道へせり出した板土間などにはさすがに残る夕日が微妙な縞目をうつしていた。丹波の徳利を寂びしい夕ぐれの店の隅にみつけたのは,草臥れた脚をほっと休めるしおでもあった。ステテコ姿の取的みたいな主人がくらい中から白い大きな顔をみせて,「へ,ゆっくり見ていとおくれやす」と灯をつけた。切って落したように外がくらくなった。
 「名ばかり丹波」で仕様もない代物だが窯はぜが美しい景色をつくり,肩から口への立ちあがりがむしろ京焼あたりの優しみをただよわせている。一升ばかりのものか,水でも入れて重みをつけたいお手軽な徳利を,いくらか値切って買うことにきめた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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