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綜説
個人・家族・集団単位での先天異常
著者: 柳瀬敏幸1
所属機関: 1東京医科歯科大学
ページ範囲:P.61 - P.69
文献購入ページに移動配偶子の接合から個体発生の過秤におけるいろいろな病気の発現状況をみると,ヒトの生活機能はすでに受精の前後からはじまっているという感を深くする。この点は指摘するまでもないことであるが,改めて認識されてきたのはこの10数年来のことであろう。外部の要因,例えば病原や毒素,或いは低い衛生環境によってひきおこされる病気が減少するにつれて,個体の内部に根ざしているいわゆる宿主要因(host factor)によって決定されるような病気が次第に日常医学の前面に押し出されてきた。最近では,感染症に代って先天奇形,その他の内因病の疫学が盛んにおこなわれるようになり,また過去においてごく少数の研究者の領域であった先天異常の病理学も,最近では広い分野に関連を持って活溌に押し進められつつあるし,この趨勢は,臨床医学の面では出生前小児科学または産前小児科学の提唱となってあらわれている。
これらの傾向は明らかに全般的な疾病patternのいちじるしい変化によるが,そればかりではないであろう。主として遺伝学の立場からこの点に若干の推論を追加してみよう。
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