icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生28巻3号

1964年03月発行

雑誌目次

綜説

乳幼児の事故

著者: 館正知

ページ範囲:P.113 - P.118

 14歳以下の年令層で,不慮の事故による死亡が年間約1万件ある。この数値は,この30年間殆んど変ってない。人口10万対の死亡率では,昭和10年が42.4,昭和36年が34.3で,わずかに減少しているが,この25年間にこの年令層の病気による死亡が急速に減少したために,死亡全体の中で占める不慮の事故死の割合が著しく高くなってきた。0歳は別としてそれ以外の年令では,どの年令をとっても死因の首位を占めている。例えば,昭和36年度では1歳での事故死は全死因の29.6%,2歳で35.1,3歳で33.2,4歳で31.6%,5〜9歳で36.6%,10〜14歳で27.0%で,2位以下の肺炎,気管支炎などを大きくひきはなしている。
 以上は死亡事故である。重大な後遺症を残したり,或は長期間の医療を受けなければならなかったりする事故,そのような事故が死亡事故の100〜150倍ある模様である1)。数にして莫大なものになる。

くらしの中の公衆衛生活動の進め方の特徴とその評価

著者: 和田栄子

ページ範囲:P.119 - P.125

I.趣旨
 小田原保健所では,昭和35年度から「くらしの中の公衆衛生活動実践運動」を展開している。公衆衛生活動とは,一面地区住民自身が協力して,健康を害する生活上の因子をとりのぞき,もっと健康な生活を築く意欲をもつようにする一種の社会活動である。従って地区民の一人一人がこの運動の必要性を理解し,自主的に実践するのでなくては,この運動の効果を期待することはできない。「くらしの中の公衆衛生」という表現は,経済,環境,保健,対人関係等,複雑な生活構成条件が錯綜する中で,単なる保健問題としてではなく,他因子との相互関係を考慮しつつ,広い意味での生活改善を目指すことを意図したものである。それ故,ともすれば関連を失い易い多種多様な公衆衛生事業を,如何にしてこの有機的な日常生活のなかに適応させ,また地区民に単なる知識としてではなく実践する意欲をもたせることが出来るかが,この運動の基本的方向である。

循環器疾患の管理—管理のための高血圧,虚血性心血管疾患の分類基準を中心として

著者: 小町喜男 ,   小沢秀樹 ,   飯田稔 ,   富永祐民 ,   渡辺嶺子 ,   坂本寿美子

ページ範囲:P.126 - P.133

はじめに
 病期病型により循環器疾患を分類することは,本疾患の疫学調査ならびに管理の根本方策を検討する上に欠くことの出来ないことである。すなわち,高血圧,動脈硬化症のなかにはその発生原因のことなるものが存在することは,日本と欧米の死因の比較1)(日本では脳卒中死が多く,欧米では心臓死が多い)からもうかがえることであり,また日本国内での検診成績を比較しても,図1に示すごとく地域により特徴ある傾向の存在する2)ことからも推測される。
 また循環器疾患の管理に際しても,これを高血圧性変化と虚血性心疾患に分類し検討することが,現在もっとも要望されている管理区分作製につながることと考えられる。

ダウン症候群を主とする先天異常症候群

著者: 栗田威彦

ページ範囲:P.135 - P.143

まえおき
 われわれ小児科医は出生前の原因によって起る疾患をみることが多い。殊に戦後の抗生物質の発達,衛生知識の向上,予防法の普及等により後天性疾患は激減したが,それに反比例してこの先天性疾患は増加すると共に注目を浴びるに至った。
 一口に先天性疾患といってもその種類は多く,これを奇形のような形態的疾患と代謝障害症,精神薄弱のような機能的疾患とに大別できる。また形態的異常でも一見して明かなものから,心奇形のように体内的で外見上では分りにくいもの,組織的に初めて分るもの更に生直後に分るものから生直後には正常でも乳児期,幼児期と成長するにつれて現われるもの等その種類は様々である。しかしその何れもが先天性即ち胎生期(或いは受精前)にその原因があることには変りがない。また形態的異常の中でもそれが1臓器または1組織乃至系統に止まらず,2カ所以上の部位が同時に冒されているものも少くなく,更に形態的異常と機能的異常とが合併しているものもある。ここに述べるダウン症候群はその代表的のもので,このように数コの形態的または機能的異常が合併したものは多くはその最初の記載者の名称を冠して症候群と呼ばれ,その種類も少くない。一般に小児科領域で見られ,注目され出した主なものを列挙すれば第1表の通りである。しかしその頻度はそれ程高くはない。

原著

沢内村における保健計画の衛生行政学的考察—特に健康政策と直結した農村として

著者: 小野寺伸夫

ページ範囲:P.145 - P.153

まえがき
 住民の健康確保向上を村政の住に決定し,積極的な保健計画を推進している岩手県沢内村を事例にとりあげ,行政を科学と理解する衛生行政学の視角にたって健康農村建設の課題と将来について考察を行いたい。もとよりこの考察は実際活動を行っている立場としての判断ではなく,側面的な立場で健康政策を樹立するにいたった背景,住民の問題意識,計画の内容,更に,それを支える人,組織,財政の諸点について検討をすすめるとともに,活動の成果を間接的に判断してみたいと思う。またかかる自治体保健計画の事例考察を通じて,行政診断方法,計画の評価方法増について科学的な体系づけと応用が,いささかなりともはかられれば幸いであると思う。

東北一農村における高血圧対策の評価

著者: 佐々木直亮

ページ範囲:P.155 - P.162

はしがき
 秋田県由利郡西目村の保健婦さんから,村の高血圧対策について,はじめて相談を受けたのは,昭和32年7月5日秋田市で第6回東北6県地方公衆衛生学会が開かれたときのことであった。
 西目村は有能な指導者たちによって,明治・大正・昭和と,健康農村建設への着実なあゆみをつづけている村である。昭和30年に現村長が就任してから,健康農村建設が村政に大きくとりあげられ,結核対策については,近くの村に来ておられた岡治道博士の指導を受け,ほぼ全員結核検診を受けるようになるなど,当時村としての結核管理態勢は軌道にのっていた。昭和31年から,国民健康保険が実施され,村民の死亡内容の検討が行なわれたが,現在どの町村でも直面していると考えられる死亡様相の変化,すなわち,所謂成人病のしめる割合が増加していることを認め,とくに死因順位の第1位をしめる脳卒中が村の問題となっていた。

栃木県における精神病者の管理

著者: 小坂英世

ページ範囲:P.163 - P.167

1.栃木県の精神衛生事情
 栃木県は関東地方の北部に位するいわゆる「海なし県」で,面積6,419.44km2(全国第20位)人口1.513.624人(全国第25位)人口密度235.8(全国第24位)である。この県の精神衛生事情は次のごとくである。

紹介

レニングラード市の救急医療制度

著者: 山本理平

ページ範囲:P.134 - P.134

 救急ベッドと救急車とは,公衆衛生部の管理センターによってコントロールされる。レニングラード地方の全救急病院から,ベッド充足状態が報告される。重傷患者はJonalidze病院に収容される。全市の要所要所に設けられている11の救急車補助スティションは管理センターからコントロールされる。これらのスティションはベッドをもたず,また病院に所属してもいない。救急電話はすべてコントロール・センターで受けられ,それを受けるとすぐ作業員の1人によりカードが作成され,それに患者の名と年令および事故の種類と所在が記入される。このカードはそのための医師へわたされ,彼が出動する救急車のタイプと,それがどの補助スティションから出るかを決定する。彼は,各補助スティションにおける利用可能な救急車の数とタイプとを常にチエックしており,へやのボタンを一押しするだけでこの情報を得る。つまり医師つきまたは医師なしの救急車の数が,明るいスクリーンの上に出てくるようになっている。原則として電話をうけてから,救急車が出発するまでの所要時間は90秒である。
救急車のタイプには6つあって

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら