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綜説
先天性代謝異常と口腔異常
著者: 岩波文門1
所属機関: 1東京医科歯科大学小児科学教室
ページ範囲:P.289 - P.296
文献購入ページに移動本邦では小児科学が,医学の中で一つの独立した分科としての体系をとりはじめたのは,1889年以来のことであり,この歴史は古いものとはいえない1)。しかしこの当時の医学研究の在り方は,いわば算術平均値的にすべての人間を一律に割り切ろうとする傾向が強かったように感じられる。そして本邦の小児科学にもこのような考え方が非常に強く,斯界を風靡してきたといいうると思われ,形態的にはたとえば体重について多数例の算術平均値を求めて,ややもすればこのある時期に求めた一つの算術平均値を確固不動のものと考えて,すべての小児の体重はこの平均値と一致することが理想的なものであるとして教育がおこなわれ,あるいは乳児の栄養面では算術平均的な処理によって一定の授乳方式を模式として示し,すべての乳児の授乳法はこの一律の模式に一致することが理想であるという指導がおこなわれてきた感が深い。すなわちすべての小児の体重,あるいは授乳法は算術平均的な処理から表示された,それらの一定の値と合致しなければならないという強制が,小児科学を推進する大きな力となっていた。このことは体重とか授乳法にとどまらず,小児科学の全般についてみられ,しかもつい十数年前まで,このような状態の中にとどまっていた。
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