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特集 綜合保健活動成立の条件—第22回日本公衆衛生学会総会シンポジウム 主題
地域の綜合保健活動—農村医療の立場から
著者: 若月俊一1
所属機関: 1長野県佐久総合病院
ページ範囲:P.578 - P.585
文献購入ページに移動私どもの仕事は地域の住民の現実から始まった。いわゆるニードからである。必ずしも医学がかくあらねばならぬという高遇な理想や精神から出たとはいえない。まったく,そのような発想をするには,現実はあまりにも矛盾が多く,あまりにも混乱していて,私どもにその余裕を与えない。山間農民にとり,さし迫って最も解決を要する問題は何か。--私どもは日毎の診療室の仕事の中で,ここを訪れる農民のあまりに多い「手遅れ」に驚き,そのあまりに乏しい衛生知識にあきれた。この手遅れに対して,得意の医療技術の腕をふるうことは重要だ。しかし,彼らにもっと知識と自覚を与え,手遅れをあらかじめ防ぐことは,さらに重要な仕事ではあるまいか。忙しい日夜の診療のひまをさいて,部落の中に入り,巡回診療と予防医学的啓蒙をすることの必要性を痛感した。--私どもはそれをやった。やらざるをえなかった。
衆知のごとく,WHOは「予防と治療との綜合的運営こそが完全な保健サービスである」といっている。最近のわが国の医療保障委員会假告にも「医療保障は,予防と治療とが渾然一体となって綜合的に運営され,国民の健康保持と増進が図られるところに,その意義がある」と述べている。1946年には,英国のいわゆる国民保健サービス法ができているのだ。いや,その前すでに1921年に,ソビエトロシアでは,全国民に無料の医療を与えるとともに,広範な保健活動の実施を法律化している。
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