公衆衛生29巻11号

1965年11月発行

特集 変貌する農村の社会医学的研究—第6回社会医学研究会・主題報告と総括討議 主題報告Ⅰ

農村人口の変貌

著者： 柳沢文徳¹ 天明佳臣¹

所属機関： ¹東京医科歯科大学医学部農村厚生医学研究施設

ページ範囲：P.622 - P.633

はじめに
　今日の変貌しつつある農村の実態を正しく把握して，これをどう理解するかという問題は，農村の保健医療にかかわるものにとっても重大な関心事である。なぜなら，農村における保健医療はその社会的経済的条件にきわめて強く規制されており，都市におけるそれとは明らかに異なった多くの独自性を持っているからである。従って，農村の実態とその社会経済的な背景の理解なしには，農村医学はその成立の一つの基礎を失ない，また正しい農村保健医療活動をも望めないと考えられる。
　さて，今次大戦後における農村の変化は1）農地改革による地主の解消に伴なう小作農の消減^1）2），2）農業技術革新，とくに農薬と農耕機械化，3）農家人口の減少，といえるわけである。ことに社会医学的見地から農村を考察するときには，農家人口の減少がもっとも大きな変貌であり，それを背景にして多くの問題を提供している。しかし外部からの力による変貌は1），2）のごとくであって，内的にみると農民自体の思想にはそれに伴なった変化は微々たるものである。