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特集 世界のなかの綜合保健 主題
世界的視野のなかの綜合保健活動
著者: 橋本正己1
所属機関: 1国立公衆衛生院衛生行政学部
ページ範囲:P.64 - P.69
文献購入ページに移動最近の半世紀において,人間の歴史が経験した運命の浮沈はまことに激しいものであった。第1次世界大戦は,19世紀が築き上げたヨーロッパの古き時代を根底から破壊した。ロシア革命は世界ではじめての社会主義国家を誕生せしめた。1929年にはじまるアメリカ資本主義の大恐慌,ニユーディール,そしてナチズムの台頭があった。イギリスではこの期間に労働党が強くなり,労働時間の短縮,各種保険制度の発足などの面で前進がみられ,スウェーデンもまた福祉国家の方向へと前進した。第2次世界大戦とこれにつづく核戦争の危険をはらんだ冷たい戦争,平和共存への前進と中ソ論争等々,要するにこの50年間の世界の歴史には,どのひとつをとっても人類の運命にかかわる巨大な諸事件が充満している。科学の進歩によって世界はますます小さくなったにもかかわらず,貧富の差はいっそう拡大されている。国民の福祉を向上し,健康を守り,日々の生活をいっそうよいものにしようとする努力が,洋の東西を問わず真剣につづけられている半面,全人類を200回も殺しうるほどの核兵器がすでに貯蔵されかつて経験したことのない深刻な危険をはらんでいるのが今日の世界である。
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