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特集 綜合保健活動と保健従事者 主題
公衆衛生技術者養成の国際的動向—綜合保健活動の立場から
著者: 橋本正己1
所属機関: 1国立公衆衛生院衛生行政学部
ページ範囲:P.432 - P.437
文献購入ページに移動近代公衆衛生活動は,イギリスの歴史に典型的に示されているように,産業革命を契機とし,主として急性伝染病に対する社会的防衛として,前世紀後半,まず環境衛生の整備と行政制度の導入によってその基礎を確立し,20世紀前半,予防医学の発展と相まって,急性および慢性伝染病の克服に輝かしい成果を収めた。しかしその後,西欧諸国ではおよそ1930年代以降,人口,産業,死因,疾病等の構造の近代化が進むとともに,老令人口,老人性慢性疾患の増加等はしだいに社会の重圧となり,とくに第二次大戦後はいわゆる福祉国家の建設に対する綜合対策として,社会保障制度とその重要な内容として,予防と治療を綜合した綜合保健活動を主体とする医療保障制度の確立に,世界各国を通じて積極的な努力が払われているとはよく知られているとおりである。
公衆衛生技術者養成の問題も,このような発展過程の中で,それぞれの国と時代の要請に応じて発展したものであることはいうまでもない。歴史的にみれば,公衆衛生活動の担い手として,前世紀の後半まず制度として登場したものは,イギリスのPublic Health Act, 1848にみられるとおり,保健医官Medical Officer of Healthと清掃監視員であり,ついで今世紀に入るとともに,母子保健等に重点をおいたいわゆる対人保健サービスの担い手として保健婦が登場し,その教育訓練,資格等が制度化されている。
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