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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生3巻2号

1947年12月発行

雑誌目次

第1日目抄録 第1日目

挨拶—第一囘公衆衞生學會における

著者: サムス大佐

ページ範囲:P.7 - P.8

 本日,ここに,第一囘公衆衛生學會において挨拶することは,たいへん喜ばしいことである。この學會がどうあるべきであるか,また,アメリカの公衆衞生の進歩發達の跡については,この前の大阪においての發會式でお話したのであつた。この學會が開らかれるまでには,いろいろな努力と獻身的な準備とによつたものと思はれる。會長田宮博士,またその他の方々の努力に,心から敬意を表する次第である。
 近時,日本の社會的政治的諸情勢にいくたの變遷がみられた。公衆衞生關係では,厚生省に大きな變革が行はれ,數ケ月前には勞働省が誕生して,厚生省は全く眞の厚生省として確立されたのである。

第1日目 特別講演

國民榮養の現状

著者: 有本邦太郞

ページ範囲:P.8 - P.12

1.緒言
 厚生省榮養課では一昨年12月以來連合軍總司令部の覺書にもとづき國民の榮養調査を實施してゐる。開始當時は全國少數の都市及び農村についてであつたが現在では9都市,21農村及び數ケ所の鑛炭山及び鐵道從業員について1年4囘(2.5.8.11月)これを實施し,毎囘その對象は概ね16萬人である。
 調査は榮養攝取量の調査と身體的症候の調査の二部より成り,前者は如何なる食品を幾何量,如何なる方法によつて入手し,これより幾何の榮養量を攝取しつつあるかを一定の期間を定めて調査し,後者は被調査者の約半數について體重の増減のほか榮養の不足に原因すると思惟せられる12種類の症候に就てその發現状況を調査するのである。各々の調査方法に就てはここにその詳細な記述を省略し,今囘は昨年度の成績及び本年2.5兩月の成績についてこれを總括的にのべてみたい。

研究發表

5)殺鼠劑ANTU(α-Naphthyl-Thiourea)の毒性檢定成績

著者: 堀田進 ,   森脇美都夫 ,   潘以宏

ページ範囲:P.15 - P.16

 邦製ANTUの齧齒類動物に對する毒性を檢定した。
 1)本剤わ齧齒類動物に對し強い毒作用を有する。その半數致死量(Reed-Muench法による)わラツテ,マウスおよびモルモツトを通じて,體重10gr當り0.15mgであつた。從つて普通大の家ネズミをたおすにわ1頭當り3mgで充分である。

8)熱帯縞蚊の牛深町(熊本縣天草郡)棲息に就いて

著者: 小栗一好 ,   小林和夫

ページ範囲:P.17 - P.18

 昭和19年10月下旬,當時デング熱の流行しありし牛深町に於て,コンクリート製防火用水槽より,我々は從來内地に於けるデング熱傳搬蚊と目されて居りしヒトスヂシマカに酷似せる小形縞蚊の棲息を發見し,分類學的に之を檢索せる結果,本種はAëles aegyti Linnaeus(ネツタイシマカ)なる事を確認せり。爾來,昭和22年5月下旬迄,不定期なれど毎年牛深町に於てネツタイシマカの棲息を観察し得たるを以て,本種が牛深町に定着しつゝあるものと思考す。而して牛深町に於ける昭和16年-21年の6ケ年の各年平均氣温及び本種の無動期たる5月-10月の6ケ月の各月平均氣温,更に結霜を殆ど認めざる事より,牛深町は本種の恒久的棲息地たり得べく,熱帶性昆蟲なるにも拘はらず本種の適應性と棲息條件の具備如何に依りては今後牛深町以外の地域に於ても機會を得て,移入されなば棲息可能の地域もあり得べしと思惟され,更に研究調査の要ありと思考す。尚お九大操内科,鹿兒島醫専宮崎教授及び我々の調査の結果,現在迄,福岡,佐賀,長崎,鹿兒島,宮崎各縣に於ける諸港灣都市竝に主要都市に於て未だ本種の棲息を全く認めず,唯牛深町に於てのみ認め既に4ケ年の間絶滅する事なく棲息し居るは,醫用昆蟲學上興味深きものありと思考し報告する次第なり。

10)愛知縣下のマラリア撲滅作業豫備調査成績

著者: 鯉沼茆吾 ,   川瀨久男 ,   船橋達郎 ,   村瀨カツ ,   野原鑨

ページ範囲:P.21 - P.21

 愛知縣海部郡地方の風土病三日熱マラリア撲滅の準備作業として,今夏郡内飛島村のマラリア蔓延状況を調査した。
 熱發作を起した數を郡内學童に就て調査した處,昭和21年夏は4.7%,22年夏は4.8%で木曾川河口の南部に多發し北部には尠い。

16)赤痢乃至類似症の病名に關する公衆衞生的意義

著者: 箕田貢

ページ範囲:P.26 - P.27

 最近病名として赤痢の意義を從來普く赤痢菌種として認めらるる細菌以外の傳染病原菌種に依り發病する急性大腸炎患者の總てに適用し以て防疫の徹底を期せんとする論者漸く多からんとす。
 凡そ病名の一般概念として,臨牀症状,侵害局所の特異性組織變化,及び病原菌種を以て之を決定することは言を要せず。

17)腸チフス,パラチフス混合ワクチン豫防注射の反應に就て

著者: 小島三郞 ,   增山忠俊 ,   中村康平 ,   高橋市五郞 ,   金子勘太郞

ページ範囲:P.27 - P.27

 小學兒童に對して,從來のワクチン及び新劑ワクチンについて,その反應及び腸チフス凝集價について考究した。
反應に於ては
 1.腸チフスのみのワクチンは,パラチフスとの混合ワクチンより反應が強い。
 2.在來の日本のワクチンを菌景を2倍にした濃度でもつて,その0.3cc O.6ccの2囘に注射しても,反應は,餘り強くあらわれない。
 3.新劑ワクチンは,在來のワクチンに比して反應が強い
 4.新制ワクチンの0.1cc 3個皮内法によれば,反應は,殆んどあらわれない。

23)神戸刑務所の榮養調査報告

著者: 山田弘 ,   桝田敏明

ページ範囲:P.30 - P.31

 神戸刑務所の驚ろく程高い死亡率は,衣食住の好くない状熊,ことに受刑者の榮養低下に依ると思はれる。そこで今年の1-6月の受刑者1人1日平均食用量を算出してみたところ,熱量,蛋白質ともに不足で,なかでも副食物は量質ふたつ乍ら惡く,動物性蛋白質と脂肪の不足は,注意されなければならない,すなわち副食に徹底的な改善が必要である。なほ今年(1-8月)の榮養失調死亡者に付いてみると,2等食(比較的重勞作以上),3等食(中等労作)の群は少なく,4等食(輕勞作)の群から最も多かつた。最近の健康診査に依る榮養失調症の發見率でも同じことが云へる。4等食は一番劣つてゐて不適當であると思はれる。

25)酪酸菌に依る食品腐敗防止の研究(第一報)—水産食品の防腐に就て

著者: 相磯和嘉 ,   藤原喜久夫 ,   眞銅參太郞 ,   中島正博 ,   萩野島子

ページ範囲:P.31 - P.32

 演者は土壤より分離した酪酸菌の培養液が,微酸性(pH 5.2-5.6)の状態に於て腐敗微生物に對して發育阻止乃至殺菌作用が著明である事を利用して,食品の防腐に之を應用する研究を行つて居るが,今囘は水産食品の防腐實驗の成績を述べる。酪酸菌を使用した防腐食品は酪酸臭のつくのが應用上の缺點であるが,最近酪酸菌を或種の酵母と共に培養することに依て,防腐效果に影響なく酪酸臭を除去することが出來た。この酪酸菌酵母培養液を80°30′に加熱し,酵母を殺菌したものを使用して,魚肉に於て2,3の防腐試驗を行ひ次の成績を得た。
 1.蒸煮鰯,鯖,蛤等を酪酸菌酵母液(pH5.2)に6時間及24時間浸漬した後,シヤーレに取り,之にPseudomonas achromobacter,Flavobacterium,Micrococcus,B. proteus,B. Coli B. subtilis,B. mesentericus等の腐敗菌の純培養を塗布し,27℃-30℃に充分の水分を與へて保持するに,14日間全く塗布菌の増殖を見ず,蛤の場合の實驗でも同樣の防腐效果を認めた。

26)ヴタミンB2の研究

著者: 寺田宏

ページ範囲:P.32 - P.32

1)健康人81名の尿中B2排泄量は平均5.5γ%,1日量は70γ,でこれは夏の測定値である。冬66名の測定値は4.4%,1日量59γ,で夏と冬の差は統計的有意ではない。然し同一人38γ,名の夏と冬のB2排泄量は夏5.7γ%,1日量88γ,冬3.4γ%,1日量48γ,で差は明かに有意で,夏は冬に比して尿中B2排泄量が多い。之は一面B2排泄量の個人差が甚しいことを示す。
2)2,及び1mgの化學的純粹ビタミンB2を經口的に負荷すると,健康人に於て尿中B2排泄率は夫々負荷量の9.9%,7.4%で,病人に於ては夫々23%,22.3%で,糖尿病に2mg負荷の場合は40.2%排泄され,糖尿病では明かに排泄率大である。

32)梅小路機關區機關助士の勞働量に就て

著者: 西尾雅七

ページ範囲:P.35 - P.35

 蒸氣機關車乘組機關助士の勞働量を知る爲めに,先づ各種作業のエネルギー代謝率を實驗的に測定した。即ち投炭作業(小シヤベル)は6.2,同じく大シヤベルは6.7,灰落作業は12.0,火床整理は8.0であつた。
 なほ機關車運行中は灰落作業を除き何れも0.2増となる。

第2日目 研究發表

37)サルフアダイアヂン服用による血清殘餘窒素の變動について(第一報)

著者: 龜田信夫

ページ範囲:P.38 - P.38

 ササルフアダイアヂン服用による肝機能障碍の有無を追及する目的を以て,當院收容の特殊女性淋疾治療患者に就いて若干の調査をした。服藥方法は東京都防疫課指示に基いて米國製サルフアダイアヂン錠劑(1錠0.5瓦含有)を使用し1日4囘各1瓦宛全量20瓦服用させた。實驗期間中はサルフア劑以外の薬物は投與しなかつた。結論としては左の如し。
1)本實驗例の樣なサルフア劑服用により血清殘餘窒素量は1人平均29.8mg/dlより47.5mg/dlに増加し,其の差は有意である。(有意水準1%)

41)同一家系内に於ける結核症と數種の他の疾患との關係に就いて

著者: 岡田博 ,   不破博德

ページ範囲:P.40 - P.40

 余等は結核症と他の疾患との拮抗及協力の關係に就いての研究をなさんとして,先づその一部として,同一家系内の結核症と,或る程度の遺傳的傾向を有すると考へられる他の數種の疾患の發現頻度に於て兩者の關係の右無を調査した。
 材料としては,名古屋大學醫學部第3,4學年學生及附屬醫學專門部第4,5學年生徒に本年夏期休暇宿題として家系を出來る限り詳細に調査せしめ,570家系を得,それ等の中,更に正確を期するため直系の成員のみを採用した。

45)新潟縣岩船町に於ける結核の疫學的考察

著者: 鈴木晃

ページ範囲:P.42 - P.43

 岩船町は人口4169名戸數800戸で職業別戸數の割合は漁業最も多く28.0%である。
 ツ反應は5歳から高齡者迄全町民3368名中陽性者は1103名(32.7%)で,中男子の陽性率は37.5%女子は29.5%。

46)ツベルクリン反應成績の時間的明示記載樣式に就て

著者: 城野寬

ページ範囲:P.43 - P.46

 青少年期結核は初感染に直接連續して發病するものが甚だ多いことは,今日我國諸家の研究によつて到達した結論である。而して結核の初感を證明するのに今日最も確實とせられるのはツ反應が陰性から陽性に轉化するのを識るにある。則ちツ反應成績は結核の診斷に重要な示標となるものであることは論を俟たない。勿論ツ反應陽轉必しも結核初感染を豫知せしむるものではない。また結核早期發見に對し陽轉のみを對象としては充分でないことも知られては居るが,斯るものは尠く例外的であると看做してよい。
 さて一般にツ反應檢査法として現今マンツー氏皮内注射法が普及し,同反應成績の判定規準としては野邊地博士等の提案が日本學術振興會第八委員會で認容採擇されて之が實務上一般臨牀家に非常な便宜と安易感を與へるものであり,從て同法の普及,ひいて結核の調査研究に一段の飛躍を與へるものと言へる。

47)昭和16年より昭和22年迄7年間の東京小兒科外來に於けるツベルクリン反應陽性率及び結核症發病率の推移に就いて

著者: 齋藤文雄 ,   宮崎叶 ,   平井信義 ,   堀江邦人 ,   三浦みさを ,   高橋久子

ページ範囲:P.46 - P.46

 表題の期間中に當研究所附屬小兒科外來を訪れた滿14歳以下の乳幼小兒13099名に就き,ツベルクリン反應陽性率及び結核症發病率を檢し,別表の如き結果を得た。6歳以下,殊に0-1歳,1-2歳では,兩率とも昭和22年を除き増加して居るが,統計的に有意と認め得なかつた。昭和22年の減少に就ては別に考察を加へた。發病者の病型も戰爭の推移に伴ふ變化は認められなかつた。

50)學童の健康指導に關する研究學童の結核豫防について

著者: 成田常次郎 ,   伊藤好男 ,   長谷川惇

ページ範囲:P.47 - P.48

 今日われわれが敗戰のうきめをみているのは,政治上に正しい指導原理をもたなかつたことに原因する。これと同様に,われわれが病氣になるのも健康上の正しい指導原理,換言すれば一つの生活原理を把握していないためである。
 今日わが國民の保健衞生を考えるとき,先づ肺結核を中心に結核問題を解決することを急務とする。これによつて他の傅染病や一般疾病を豫防し更に健康増進を計ることが出來ると信ずる。このためには衞生教育を幼時より實施することが必要で,即ちよいしつけが大切であり,このことは既に當局の認めるところである。

51)名古屋市街頭檢診報告

著者: 岡田博 ,   榎本敏雄 ,   館野眞 ,   不破博德

ページ範囲:P.48 - P.49

 我々は本年7月1日より10日間名古屋驛前及榮町交叉點にて街頭檢診を行つた。方法はレ線間接撮影,赤沈檢査ツベルクリン反應を用ひ,一部レ線直接撮影を行つた。區分として要療養要注意及異常なしの3種に分つた。要療養とはレ線像に新鮮なる病的陰影を認むるもの,要注意とはレ線像に何等かの變化を認め且赤沈の促進せるもの。

52)大津市山中町(無醫部落)に於ける町民健康管理の一試み

著者: 高槻碩夫

ページ範囲:P.49 - P.50

 大津市の邊縁部に山に圍まれた醫者の居ない部落山中町がある。此の無醫村部落に對して市役所衞生課は町民の健康管理を計畫中であつた。此夏大津醫學生會の積極的協力を得て同町の衞生基本調査竝に診療を實施した。そして此を基礎として町民の健康管理を開始して居る。
 衞生基本調査の内容は,1).總員檢診,2).乳幼兒檢診,3),乳幼兒生活状態觀察,4).妊婦檢診,5).妊婦生活状態觀察,6).結核檢診,7).榮養調査,8).檢便(驅蟲),9).住居調査であつて各々の項について山中町の特徴缺陥を把握せんとした。尚調査實施期間中に同町に發生した患者について診療を行ひ,發病の状態を知らうとした。

56)奈良縣吉野郡野迫川村に於ける蛔蟲寄生率について

著者: 石田一郎

ページ範囲:P.51 - P.52

 緒言:戰後食糧及驅蟲劑の不足と生活環境の惡化より,國民保健上その感染率の著しく高率と考へられ注目せられる。寄生蟲特に蛔蟲の保有状況を山村たる野迫川村に於て糞便塗抹標本檢査に依り,體性反び年齢により分類してその蟲卵保有率と,併せて概標本中の蟲卵含有状況を檢査してこれが對策に資せんとした。
 野迫川村の環境:野迫川村は紀伊半島の山嶽部にあり,和歌山縣橋本町より森林道路約10里を唯一の交通路とし,荒神嶽(1260米)を中心とせる南北約5里,東西約7里の山間に(海抜平均800米以上)各部落の戸數約20乃至50,人口150人乃至300人を有する14の占在する部落よりなり,村の總人口は約2900人にして男女略々同數,1年平均温度攝氏12度前後を示し,住民の家業は主として,山林勞働者にして食糧の自給は不能で,若干の野菜類は開墾一部で耕作して補給す。飲料水は泉水溪流より良質のものを各戸にカケヒに依り導入して使用するも,便所は便池を木(桶平均直徑2米深さ3米)を使用し,肥料として直ちに便池よりくみ出して使用する習慣あり。糞便と外界とは開放的にして衞生學的に不備なり。

58)小兒に於ける腸管寄生原蟲寄生状況殊にラムブル鞭毛蟲症に關する研究(第一報)

著者: 水野宏

ページ範囲:P.52 - P.53

 ヂアルヂアラムブリアの寄生によつて慢性の下痢を來すことは一般に知られてゐるが最近この原蟲の小兒寄生によつて,下痢,貧血に加ふるに發育の停止を見るとの報告がアメリカの小兒科雜誌に次々と發表せられてゐるので,その本態を究明するために研究を始めた。
 (1)名古屋市内某小學校兒童に就て,腸管寄生原蟲の檢索を行つた。唯一囘の檢索であるが,その中ヂアルヂア,ラムブリア寄生率は13.6%に上つた。

59)最近に於ける名古屋市學童の寄生蟲調査成績

著者: 西宮一

ページ範囲:P.53 - P.54

 終戰後の寄生蟲蔓延状況を戰前と比較し,その陽性率の増加の原因に就いて名古屋市學童を對策として調査した。
(1)最近10ケ月間の成績では,檢査人員34133名中有卵者47.78%,蛔蟲卵7.39%で斷然多く,他の寄生蟲は非常に尠い,男女の寄生率を比較すると,1年生では男に有卵者が多い。學年別では。2年生が最も多く,5年生が最も尠い。昭和11年以後毎年の成績を比較すると,昭和15年迄は減少してゐたのが終戰と同時に急に増加した。他都市の成績と比較すると,名古屋市學童は寄生率が低い。十二指腸蟲の寄生率を浮游液で檢査して,9.4%に檢出した。

68)竹屋氏の疲勞反應とKupriferroeyanid法の本態について

著者: 佐藤德郎

ページ範囲:P.55 - P.56

A:竹屋氏疲勞反應の本態
 竹屋氏反應は尿に弱アルカリ性コンゴー赤溶液と明礬溶液を加へ,殘留色素を測定する方法である。

69)昭和21年の發疹チフス流行と其の防疫

著者: 山口謹人 ,   中村廣夫 ,   平山毅 ,   大久保一郎

ページ範囲:P.56 - P.57

(1)病毒の侵入は,最多く東京より來り,其の流行の消長は東京の流行と略々一致す。從つて患者は東京と交通多き闇屋及東京に通勤する者に多し。
(2)患者の性及年齢は東京に交通多き青壯年男子,即ち16歳より50歳迄の男子に發生多く,15歳以下56歳以上は發生も少く,男女性別の差も少し。

70)近年に於ける福岡縣下の赤痢菌型の變遷

著者: 小野蘇牧

ページ範囲:P.57 - P.58

 福岡縣下の流行菌型は昭和13乃至昭和18年の間は主として駒込BIII,中村,川瀨等各異型菌により占められてゐたようであるが,昭和19年に入つて各地に於ける赤痢集團發生があり,何れも志賀菌による事が調査の結果明かとなり,檢査數393例中志賀菌を分離したもの67例異型菌を分離したもの9例である。異型菌は中村菌,川瀬菌,駒込B菌を證明した。
 昭和22年は調査を行ひえず,昭和21年も殆んど調査出きなかつたが,分離した少數の菌株は何れも志賀菌であつた。本年は調査しえた數ケ所の中,志賀菌を證明したのは3ケ所で,内2ケ所は中村菌と大野菌を夫れ夫れ檢出した。なお昭和19年及本年志賀赤痢流行町村からマンニット非分解菌を十數株を分離したが,本菌はモルガン菌と思はれ其の病原的意義は疑はしい。

73)昭和22年9月水害の救護對策

著者: 山口謹人

ページ範囲:P.59 - P.59

 昭和22年の大水害は,縣下316市町村の内228市町村に及び,被害人口42166名,死者86名,行方不明10名,其の損害百億圓に及び此の救護對策として救護班の派遣10月15日迄にて447班其の救護患者8309名,腸チフス豫防注射人員609743名となつている。
 救護班にて下痢患者診療の際は直ちに隔離し,サルフアダイアジン又はサルフアチアゾールを服用せしめ,赤痢の發生を防止した。救護班の活動は9月一杯として其の後は防疫班の活動となつた。

80)脚氣菌ワクチン皮内反應に依る脚氣診斷法の經驗

著者: 久保田亨一

ページ範囲:P.62 - P.63

 松村氏脚氣菌ワクチン(Mc. Tarland氏法No. 1)0.1竓を前膊皮内に注射し,24時間後該注射部に現はれる發赤の大いさを測定し,ツベルクリン皮内反應の判定基準に從ひ判定する事に依り,脚氣菌皮内反應による脚氣診斷法の價値を檢せり。施行症例は531例にして,次の結果を得たり。
 1.本反應は脚氣患者180例に於て總て陽性を示せり。

81)近視と體格・體力に關する研究

著者: 高橋英次 ,   佐藤誠三

ページ範囲:P.63 - P.63

 近視の發生については遺傳と環境の複雜な作用があるわけであるが,普通言う近視殊に軸性近視は眠軸の延長によつて起ると考へられ,之は何れかと言うと無力性體質に傾くものに多いと考へられる。即ち軸性近視は全身の筋力の弱さに或程度比例するのではないかと思う。
 今年6月に青森醫専で,弘前中學校生徒の身體檢査を行つた際に背筋力等も測定したので,その材料について調べた所を報告する。眼科で始め裸眼視力を檢査し,それが1.2に達しない者は檢影法によつて屈折状態を檢べ,白内障,角膜薄翳等眼疾患による,父強度遠視による視力障碍を除外して,屈折異常によるもの即ち近視と然らざる者とについて年齢別に體型及び體力の比較を試た。身長(H)及び比胸團(C/H)・比體重(W/H)・ローレル指數(W/H3)・レンホフ指數(D.J.P./A)等の體型を示すものについては特に有意の差は認められなかつた。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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