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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生3巻4号

1948年02月発行

雑誌目次

總説

學校に於ける衞生教育に就て

著者: 新井英夫

ページ範囲:P.163 - P.169

 こゝに私は學徒の養護の面と共に,更に強く健康に生きるための衞生の教育,訓練の重要さを強調しなければならない。
 教育としての學術衞生が何如なる取扱ひをうけるかと云ふと今後は教科としての體育は教材として運動と大きく二つに大別され,兩者が車の兩輪をなし,兩々相まつて,學徒の發育,健康の保持増進を期待し,これを基礎として人格完成への教育が展開されてゆくことになつたのである。

原著

結核患者喀痰の石炭酸反應(第1報)

著者: 横山桂壽

ページ範囲:P.170 - P.172

緒論
 1946年沼田氏1)により,飯島氏が赤痢患者の粘液便中に赤痢菌特異の抗體を發見した旨の發表があつた。余は此の飯島氏の創見にもとづき,結核患者喀痰中に結核菌特異の抗體をもとめて.結核菌體成分抗原を用ひて抗體を探索中,結核患者喀痰の生理的食鹽水の浸出液と,6%石炭酸水溶液とが室温に於いて著明な白濁を生じ,健康者喀痰の浸出液とは何等反應を生ぜざる事を發見した。
 其の後群馬縣立教員保養所患者50名に就き,當反應を試みた所,結核患者の中にも陽性に出るものと,出ないものとあり,反應陽性の喀痰を顯微鏡的に檢した所,其の大部分に結核菌を認め,反應陰性の喀痰中には全然結核菌は認められなかつた。

研究と資料

昭和22年東京都に流行した流行性腦脊髓膜炎の疫學的觀察

著者: 山下章

ページ範囲:P.173 - P.185

緒言
 流行性腦脊髓膜炎は我國の常在傳染病であるにも拘はらず,東京都に於てはその發生數は極めて少く散發的の發生に過ぎなかつたのであるが,昭和22年1月から6月末に亙り患者535名死者215名に達する流行があつたので,余はその疫學的觀察を行ひ,將來本病防疫のための參考となり得る二三の所見を得たので茲にその概要を報告し諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

戰後に於ける癩の疫學的趨勢

著者: 宮崎松記

ページ範囲:P.185 - P.190

【本稿は昭和22年11月3日第20囘日本癩學會に「戰爭と癩と題」して發表した研究の一部である】

酪酸菌に依る魚介類の防腐試驗(第一報)

著者: 相磯和嘉 ,   藤原喜久男 ,   眞銅參太郎 ,   中島正博

ページ範囲:P.190 - P.194

緒言
 土壤に廣く分布してゐる酪酸菌から選擇した或る菌株を,葡糖澱粉等の炭素源に適當に窒素源を加へて培養すると,所謂酪酸醗酵を起してメジウムは酸性になる。この培養液のpHを4.8-5.6の微酸性に止る樣に調節して置くとこの培養液は鹽酸,硫酸,燐酸等の鑛酸や醋酸,乳酸,酪酸等の低級脂酸の同じpHの液に比較して,各種の腐敗微生物に對し著明に發育阻止作用が強い。この際酪酸菌の生菌を含んで居る事が効果を持續させる上に於て必要の樣である。
 この作用は適當の炭素源さへあれば寒天培地の上でも動物の腸管内ででも觀察されるので徴生物間の一つの拮抗現象として理解される。

論述

結核濃厚感染部落に關する考察

著者: 大塚正八郞

ページ範囲:P.195 - P.197

(1)緒言
 終戰以來,一時忘却せられた農村結核問題が再び眞劍に取上げられ,種々論議されて居る折柄,結核の浸淫に惱む一部落と更に高度の家族感染に懊惱する一家族の状況を報告し,農村保健衞生にたづさはる大方の御參考に供するのも意義ある事と思ひ,先年群馬縣邑樂郡M村に於て行つた縣衞生課,舘林保健所後援による調査事項の中一部を不備も省みずこゝに概述する次第である。

都市環境に就て—地理學の立場より

著者: 木内信藏

ページ範囲:P.198 - P.203

1.序
 文明人が大地に定着生活を營む形式に二種類ある。一は農村形式,他は都市形式である。日本の居住樣式も亦此の對立した生活より構成されてゐるが,正しい意味の對立になつてゐない。我々の都市は工業取引等幾多高度な機能を營みながら,その基礎をなす所の都市景觀は尚未熟で田園的性格を保存し,そのために衞生能率等は遺感な點が少くない。殊に戰災を蒙つた町では麥畑の中にバラツクが立ち,その生活樣式は田園へと退化してゐる。併しそれは眞の農村生活ではないから多くの非能率が行はれてゐる。ニユーヨーク地方計畫の目的が「地域間の摩擦を與ふ限り少くする」ことにあつたと同樣な意味で,土地の地域的利用を最も能率化すること,例へば住宅地區の配置や粗密,交通の問題等が採上げられねばならない。
 一體農村から成長した都市は,多くの非合理なものを含んでゐる。米國の地理學者トレワルタ教授はヨーロツパ都市は中央が狹隘で周圍ほど計畫的に寛濶にできてゐるが日本の都市は中央が街區整然として周邊が亂雜であると述べてゐる。自然的發達を遂げたのは共通であるが前者では中世の核ロンドンで言ふシテイを取卷いて逐次都市計畫が實施されたのに反し,日本では封建時代に行はれた規制を破つて,急激な膨張が起り,それを追越す計畫が實行されなかつた爲である。曲折した田園道がそのまゝ利用され,地方より多量に集中した人口は,充分な都市社會的訓練を受ける前に,膨張の波に呑まれて自分の都市の姿を見失つてしまつた。

産業衞生の要綱—第1囘

著者: 重松逸造

ページ範囲:P.204 - P.206

アメリカ合衆國公衆保健局國立衞生研究所産業衞生部編纂
 本要綱にのべられている事項は,醫學者,工學者及びその他の産業衞生專門家の過去25年以上にわたる周密な研究と,實際の経驗とに基ずいたものである。 本要綱は實際的である──合衆國内で最も古い大工場の多くは,數年前から本要綱で推奨している方式を採用して,その有益で且つ實際的であり,その上経濟的にも完全なものであることを認めている。すぐれた産業衞生對策を計畫實施することによつて,次のような實際上の結果を得ることができる。(1)疾病,傷害,勞働者異動,贅材損耗の減少,(2)賃金の損失,、疾病費,補償費保險料の減少により勞働者及び使用者のこうむる負憺の減少,(3)全從業員の健康及び能率の増進,(4)綱紀の粛正略言すれば,産業衞生は工場が最大の生産を擧げるための助けとなるものである。

海外情報及び最近の文獻

乳小兒結核豫防に對するB. C. G. 接種の價値判定に就て,他

著者: 早川

ページ範囲:P.207 - P.315

 Americen Journal of Public Health, September 1947, Vol 37にニユーヨーク市衞生局小兒衞生課,小兒科顧問醫のMilton J. Levine,M. D,F. A. P. H. A氏が"An Evaluation of the Use of BCG in the Prevention of Tuberculosis in Infants and Children"という題でBCGの効果を記述しているが,その要旨を紹介したいと思う。
 從來結核豫防に使用せられたワクチンの種類は枚擧に遑ない程であるが,BCGがその最たるものであることは疑ふ餘地がない。元來本ワクチンは牛結核の弱毒生菌であり,グリセリン加馬鈴薯培地上の累代培養によつて減毒せられ海猽,家兎,牛等に進行性の結核を惹起しない程度となつたものである。1922年以來既に,5,000,000以上の小兒に接種を試み何等認むべき症状もなく,又た強毒性結核菌に還元したと言ふ確たる事實もない。又實驗的にも動物に使用して,結核豫防上効果があることが證明せられてゐる。然しながら,實驗動物で得た結果がよいからと言つて,直ちに人間にもよいとは限らない。公衆衞生學的立場からBCGワクチンの眞價を決定するには,是非共人體實驗が必要である。

新刊紹介

Global Epidemiology(全世界疫學)第1巻

ページ範囲:P.215 - P.217

 米國陸軍醫務局醫學情報部に蒐集せられた全世界の疾病衞生地誌叢書
 第1巻は二編よりなり前編は印度及び極東諸國即ち支那佛印日本,朝鮮,馬來,南方諸島,流球ビルマ,セイロン,後編は大平洋地區オーストラリア,フイヂー島,ギルバート,エーリス諸島,ハワイ,日本委任統治地區,蘭印諸島,ニユーヂーランド,ボルネオ,フイリツピン,   ,ソロモン,ニユーギニア等に亙る地區につき各下記事項が簡略に解説してある。

保健所のページ

疾病豫防手帖に就いて

著者: 靑木茂

ページ範囲:P.217 - P.218

 昨今BCGが研究の域を脱し結核豫防國策として實際に取り上げられるに至つた事は我國の結核對策上新規を盡したものでその期待大きなものが有る。
 こゝで私の提案したい事は,疾病豫防手帖(名稱は他に適當なものが有るかも知れないが)の出現である。戰時中國民體力手帖の名の下に一時試が行はれたのであつたが何時とはなしに消滅して了つた。この手帖はBCG接種の對象が年少年者である場合,又年少年者でなくとも自分のツベルクリン反應の檢査を受けた正確な時期及びその反應結果,又BCG接種を受けた正確な時期をとかく忘れ勝ちで接種されてからの期間が長ければ長い程そうである。殊に低學年の小學生にその上膊を見て始めて嘗て接種を受けたことのあるのを辛じて知り得ても,唯聞いただけでは皮内注射を受けた事は覺えてゐるがBCGとツベルクリン反應とを混同して答へ正確な返答を求めることが不可能な場合に屡々遭遇する。中には注射を受けたことさえも忘れて了つてゐる者も多數有る。

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ニユース

ページ範囲:P.218 - P.219

本年度腸チフス豫防接種計畫
 1.被接種者満3歳〜60歳。
 2.國家檢定ズミのワクチン使用のこと。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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