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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生30巻11号

1966年11月発行

特集 人災と健康—第7回社会医学研究会・主題報告と総括討論

主題

公害発生・抑制・対策の背後にひそむ諸問題

著者: 水野宏1

所属機関: 1名古屋大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.607 - P.610

文献概要

公害研究の基本的態度
 藤森・水野両氏は「衛生学からみた公害の史的考察」において,足尾鉱毒事件を中心に明治以後の公害事例に史的考察を加え,次のような問題提起を行なった。
 「①公害を史的考察すればすべて,単に人間の生命や健康に影響を与えるからでなく,人間の社会生活を侵しているものである。②公害の発生は資本主義の発展の基礎にある生産の急激な増強によってもたらされている。資本蓄積--殖産興業が唯一の目的である資本や,それをおし進める国家権力にとっても,被害住民の要求をたやすく受け入れるものではない。③公害の問題が社会的にとりあげられる以前に,すでに幾多の被害が住民の上に加えられている。社会問題化された時には事態は進行している。それは公害を主に人間の生命や健康に影響を与えるものとしているからである。④医学的,衛生学的公害調査研究が,たとえ人間の社会的生活にふれなくても人間個体への影響をとらえているならばまだしも,公害の加害因子が人体の特定の器官に与える影響のみをみる方向に進んでいる。⑤人体に影響を与える時点は公害の最悪段階であり,すでに社会生活は侵害され,被害住民はさまざまな反応をおこしている。調査研究にあたるものがこの点をどう考えるかが,役割を果たせるか否かの鍵である。⑥被害住民にとって,公害の解決は被害を出さずに操業するか操業停止のいずれかである。この見地にたって住民の主体的な運動がはじまる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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