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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生30巻12号

1966年12月発行

文献概要

人とことば

人間とは何か—それを知らなければならないわけ

著者: アレキシス・カレル

所属機関:

ページ範囲:P.653 - P.653

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 沢山な科学的発見の中からわれわれはいろいろなものを選択したが,この選択が人間の最高の幸福を考えに入れてされたのではない。それは単に自然放任であった。「最大の楽と最小の苦労」という原則や,スピードや,変化の楽しみや,自分を忘れたいという希望などが新らしい発明を成功させたのである。併しどうして人間が迅速な交通機関や,電信,電話,タイプライター,計算器,家庭用の新らしい道具などによって造られる,物凄い生活のテンポを耐えることが出来るかということを考えたものはなかったのである。飛行機,自動車,映画,電話,ラジオ(やがてテレビジョンも)が一般に用いられるようになったのは,その昔の昔,人間がアルコールの飲用を始めたのと同じことなのである。スチーム,電気照明,エレベーター,動物的な道徳,食物の化学的な操作などが採用されたのは総てそれらの改良発明が,ただ便利で愉快だというからであった。そしてそれが人間に及ぼす結果などは考えに入れられていなかったのである。
 工業労働においても工場が労働者の肉体や精神に及ぼす影響は全く考えられなかった。近代工業は個人又は株主等が最大の利益を得るように,「最小の費用,最大の生産」という原則によって営まれる。工業はその機械を使う人間の本当の性質も,工場生活が労働者やその子孫に及ぼす影響をも少しも考えずに発達して来た。又大都市は少しも人間のことはかまわずにどんどん建設された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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