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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生30巻4号

1966年04月発行

雑誌目次

特集 地区組織活動の再検討 主題

新しい郷土づくりと地区組織活動—10年以上続く住みよい郷土建設運動の中から

著者: 武田卯

ページ範囲:P.178 - P.183

 新潟県における地区組織の名称は「新潟県住みよい郷土建設協会」と名づけられてから10年以上になった。
 時がたつにつれ人々の考え方も世の中の動きも変わってきているがこの名前だけはかわっていない,かえようともしない。

地区組織活動の課題と展望—社会変動の中で生きた活動となるためのビジョン

著者: 永田幹夫

ページ範囲:P.184 - P.188

I.地区組織活動と社会変動
 組織活動といわれるものは,それがいかなる種類のものであっても,すべて人間の社会活動の一つにはちがいないから,社会経済の動向に影響されて常に変化しつつあるといえよう。その変化は,ときには急激に,ときには緩慢に,あるいは潜伏状態のままで進行するが,とにかく常に活動の途上に多くのさまざまな問題をなげかけ,矛盾を生み出していく。組織活動はこれらの問題を排除し,矛盾を克服することによって進展するのであり,ある期間を経てふりかえってみると,そこには一定の成果とともに,組織活動全体として,その内容,方法あるいは性格にいたるまで,驚くべき変化が刻まれていることを知るということになるのである。
 地区組織活動は,地域社会において住民が自らの生活の向上のために自主的かつ実践的な共同行動をすすめ,それを通して生活態度や意識を変革していくことをねらいとするものであって,その目的も内容,方法も住民生活に根ざすものであるから,社会経済の動向とそれによる生活内容の変化は,ただちに地区組織活動のあり方を左右することになる。

地区衛生組織活動の特性と行政の接点—主婦達の手で作った自主活動を通じて得た成果

著者: 中川和子

ページ範囲:P.189 - P.192

I.組織のあらまし
 本題に入る前に私共の組織のことを簡単に述べたい。
 私共の団体は吹田母子会といって昭和25年に結成した家庭の主婦ばかりの集りである。自分達の住んでいる地域の保健衛生を少しでも向上させるために,みんなが力を合わせて自分たちで出来ることをやって行こう……ということで発足したわけです。初めからそれに賛成の者だけが入会したので3,500人ばかりだったが,16年間に少しずつふえて現在会員は12,000人になった。しかし5万近い市の世帯数からみれば,なお1/4にしか当らない数である。

座談会

地区組織活動を再検討する

著者: 松原治郎 ,   奥田道大 ,   橋本正己 ,   山下章

ページ範囲:P.194 - P.203

 公衆衛生活動の基本である地区組織活動は,従来の活動形態ではどうにもならない一面が,社会情勢の変化の中から生まれてきているといわれている。組織活動が今日的問題として提起されるのはいかなる理由によるのか,社会変動に即応した組織づくりとはどういうものか,その理論的導入から,再検討と今後の方向を示唆していただいた。アンケートに示されている現場からの発言とあわせてご検討いただきたい。

アンケート

住民の自主的活動の線で,他

著者: 鷲谷善教

ページ範囲:P.205 - P.214

 地区組織活動が公衆衛生活動の重要な部分を占めることは,今さらいうまでもない。戦後20年,激しい社会変動の中で,公衆衛生活動を支える基盤の変化に即応して,形をかえ品をかえながら関係者達の努力によって地区組織活動も発展をとげてきたのだが,現実はまだまだの感が深い。なぜなのか,その辺の事情を今日の時点でどう考えるべきか。寄せられた多数の発言の中に明日への礎がほしいものである。

公民館活動を足がかりに,他

著者: 小尾和子

ページ範囲:P.219 - P.226

 a:私の活動している地域においては地区組織活動といっても,ほんの,ひと握りの現状であることをまず報告しなければならない。どうして活動が活動をよぶ組織的な連鎖ができないのか,ここに問題があると思う。
 1)健康に関する問題が,町理事者および住民の中で大きくとりあげられないこと。これは町議会の模様をみても解るが,この町は,港の拡大,道路重整備,観光開発,施設作りに主力をそそいでいる。

講座

公衆衛生の臨床講義

著者: 小林彰

ページ範囲:P.215 - P.218

医学生に好まれない公衆衛生分野
 厚生省でも各都道府県の衛生当局でも,非常に困っていることの一つに公衆衛生関係医師の不足ということがある。私も長い在職中,年々いつも悩まされた問題であった。第一このみちは医学生たちからも好まれない。保健所習練がインターンの場として組み入れられていながら,毎年の報告では所によって重多少の高低はあるものの,学生諸君に歓迎される場という結論には程遠い。
 医師たちが公衆衛生の行政分野へ進出を好まないのは種々の理由がある。第一には身分,更に収入の問題がある。よく事務官僚は別段医師の待遇をひくくはしていないという。表面上はそうであろう。しかし,現在の制度のままではこの方面で医師の占め得る地位は限られた狭いものであり,医師になるまでに費した費用と時間とを無視しているのではあるまいか。もう一つは研究に対する技術者と事務官との考えの違いもある。この問題にはまだまだ申し述べたいこともあるが今日の主題と離れるからこの程度にとどめる。

研究

四日市市における大気汚染

著者: 大島秀彦

ページ範囲:P.230 - P.233

 農村では水銀・農薬の中毒,都市では大気汚染の問題が大きくクローズアップされている。公害モデル都市ともいわれる悪名高い四日市はその最も大きな犠牲を蒙っている。企業進出と住民の間にあって,医学的な究明は一条の光を投げかけているものであろう。

資料

地区組織への住民の指向に関する調査

著者: 山下章

ページ範囲:P.227 - P.228

A 都市世論調査(1965.10 朝日新聞社)
 この調査は京浜・中京・京阪神・北九州の四大都市圏において,それぞれ2,000,800,1,500,1,000人を層化無作為二段抽出法によって行なったものである。
 1.いまお住いになっているところには,町内会,自治会や隣組のようなものがありますか。

時事内報

昭和41年度のがん対策

著者:

ページ範囲:P.204 - P.204

 昨年11月9日に政務次官会議は,総理府・厚生・文部・大蔵・自治各省と,科学技術庁の政務次官で組織するがん対策小委員会を設置し,12月14日にがん対策についての中間報告をまとめている。報告書は,
 1.がん対策推進協議会の設置

人とことば

組織活動発生の生物学的原理

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.177 - P.177

 組織は生きものである。その本質は,外形的に整っていることではなく,それが生きており,血が通っており働いて何ものかを生み出してゆくところにある。従って組織ないしは組織活動について考える場合,これを赤ん坊が生まれて生長,発育してゆく過程に対比してみるといろいろ教えられるところが多い。組織活動発展の生物学的原理とでもいうべきものである。組織は作るものでなく生まれるものである。生きた組織は,社会的要求に応えて生まれてくるものである。無理に人為的にでっちあげたものは,外形がどんなに立派であっても,満足に育ってゆくことはできない。
 組織の生命も,形を整えて生まれてくる以前に宿っているのが本当である。それでは一体組織の生命はいつ宿るのだろうか。この問題については,やはり赤ん坊の受胎の場合と同じように,すなわち保健所や市町村当局の実践に対する意欲と熱意が,地元の人達のそれと結びついたときであるといえる。しかも,この結びつきは,単に量的な,形式的なものとしてではなく,質的な内容的なものとして,いいかえれば,指導者相互の全人格的な結びつきでなければならないのである。

モニターレポート

妊娠届出をみて

著者:

ページ範囲:P.188 - P.188

 母子保健対策の一つとして,妊娠届を市町村に出して,母子手帳の交付をうけることになっているが,全国の統計をみると昭和39年では,出産数の92.3%がこれをうけていることになる。その届出を妊娠月数別にみると第1表の通りになる。
 すなわち全国,岐阜市ともに約半数は妊娠4〜5カ月に妊娠届を出して母子手帳をもらっている。ただ妊娠8カ月以上になって届け出ているのが全国で約15%,岐阜市で約10%(出産後に届け出たもの0.5%が含まれる)もあるということは,少し手おくれの感がある。とくに梅毒などの疾患が出産間近に発見されたのでは,あきらかに手おくれである。

老令化する保健婦

著者:

ページ範囲:P.233 - P.233

 最近,保健婦の老令化の嘆きをしばしは聞く。東京に近い農村地帯のある県で,すでに平均年令が40才を突破したという。年と共にぐんぐん高くなってゆくのである。まるで新陳代謝がないようだ。一体これはどうしたわけなんだろうか。
 処遇が悪いことは相変らずである。養護教車論が21,800円なのに市町村に入れば新制大学卒で16,000円,短大卒なら14,960円といった初任給の基準である。それでも新規採用者を基準どおりにすると前からいる人との差がほとんどなくなってしまう。反対に新規採用者が上になったりということさえおこるという。それに加えて職階性の格付の低いこと,旅費の支給さえきわめて低くおさえられている状態である。

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NEWS REFERENCES in February '66

ページ範囲:P.234 - P.235

各地で集団カゼ流行 発生地域は東京(学級閉鎖をした小中学校は12校),鳥取(11校),愛知(2校),三重など。症状はあまり重くないが,頭痛,発熱,のどの痛み,咳をともない,インフルエンザによく似ているためビールスの検出を急いでいる。(1日・夕)
 身障児対策に新構想 重症心身障害児対策をさらに進めるため,厚相は施設建設年次計画を作ること,施設職員に特別手当を出すことの2つの構想を固め,事務局に検討を命じた。(2日・朝)

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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