icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生30巻5号

1966年05月発行

文献概要

特集 地区診断を診断する 論叢 地区診断の効用と限界

ちみつな診察の上にたって

著者: 水野宏1

所属機関: 1名古屋大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.255 - P.257

文献購入ページに移動
 地区診断――わたくしは必ず地区保健診断とよぶことにしているが――がどれだけ効用があり,どの辺に限界があるかは,いうまでもなく診断をする人,あるいはグループの診断能力にかかわる問題である。地区保健診断の方法論の面では研究の歴史が浅い関係で,われわれの蓄積は未だ乏しく,そちらからの制約にすぐにつきあたるのがいつわらざる現状である。
 しかしながら地区保健診断に比べてはるかに長い歴史をもつ臨床の診断でも,常に進歩をつづけているとはいいながら,方法論からいえばどこまでいっても常に限界にあるわけで,その限界を絶えず破ろうとする意欲が臨床医学における研究の進歩の1つの原動力であろうし,現存する限界を補なうためには,常に新しい知識を蓄積し経験を積む努力を重ねつづけることが必要であろう。われわれもまた常に新しく方法論を開発する努力を怠らないだけでなく,常に経験を積み,勘を養うということが,たいへん非科学的な逆行的ないい方に聞えるかも知れないが――現段階においては,誤りの少ない診断をするために必要な条件のように思われる。経験を積むといっても,長年保健所に勤務していればよいというようなことではない。現在の保健所はおかしなところで,保健所が責任を負っているはずの患者--地域社会――についてはアナムネーゼもとらず診察もせず,病理検査もしない前に,とっくに処方が出されていてその処方に従って仕事をすることになっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら