icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生30巻7号

1966年07月発行

文献概要

特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる ろんそう 社会保障・公衆衛生相互の問題点

個人を忘れすぎた公衆衛生

著者: 本田良寛1

所属機関: 1済生会今宮診療所

ページ範囲:P.380 - P.381

文献購入ページに移動
 憲法を引っぱり出してもうしわけないが,第25条の②に,『国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない。』と定められている。だからといって,行政面がおのおのの制度部門を,後生大事に分けてしまい,繩張りを作っているのはどうしたものであろうか。憲法で,社会福祉,社会保障,公衆衛生とあるのは,各制度を分けてしまえということではなくて,これらの制度の向上および増進に努めなければならない,ということである。
 しかし,この制度の相互間に,有機的な,一貫した横の仕組みがあるかというと,今のところは,仕切られた壁しかない。現実に,繩張りがあるということは,これらにたずさわる人たちの怠慢と失政としか考えられない。低所得階層を対象として仕事をしていると,これらの制度の間における縄張りとか無関連が,いかに国民の最低生活を営む権利を侵しているかを,毎月のように嫌になるほど見せつけられるのである。生活保護法にすら該当されずに,道に倒れるまで見棄てられている現実があるということは,これらの諸制度が,自立可能な人々には役立ってはいるが,自立能力の弱い人々には,最後に倒れる時まで適用されないことを証明していよう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら