人とことば
社会医学と医学教育
著者:
ガルドストン
所属機関:
ページ範囲:P.413 - P.413
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シデナムが,もう一度生を得て,現在の医学教育を観察するとすれば,驚いてまごつくかもしれないが,ごたごたした細部はともかくその基本的な形式が,彼のよく知っていることを,否,それより,彼の想定した特異的疾患と,特効薬が現在の医学の経験と教育に有効に取入れられているのを見て,大いに満足することであろう。医学教育の目標と目的はシデナムの時代から変わっていないのである。つまり初学者に疾患の存在を認識し,何らかの疾病論的範疇にあてはめて,正しく診断することを可能ならしめ,疾病(または病者)を治療することにより疾病をなくすか,その悪性の影響度を評価したり,または減少させようとすることを教える。予防医学の教育も同様な目標,目的に由来し,単に時間的状況がずれているものとして,つまり疾病とその合併症とを治療するよりもむしろ予測することにある。
特殊の医学的知識が急速に増大したのは,ここ100年位の間である。これはルネサンスの医師や利学者たちのつくった切線の延長としての基礎医学が更に伸張したものである。この切線とは,疾病の治療に関心をもつということで,ヒポクラテスのような健康への関心は全く含まない。医学生が解剖室で訓練をうけはじめる時からの枢要な関心事は,解剖学の初期にそれが納骨堂で行なわれた頃から,死と疾患にある。