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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生30巻8号

1966年08月発行

文献概要

随想 明日を担う公衆衛生

地域の保健意識の一側面

著者: 小松寿子1

所属機関: 1高知大学教育学部

ページ範囲:P.424 - P.425

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私は1人の学校保健の研究者である。5月3日に,社会政策の若い研究家である某氏と一諸に高知市の一角の部落を数家訪問してさまざまのことをそれらの家の人について聞いてみた。その中でとくに印象に残ったのは,その人々が"戦前の方がむしろよかった"といっていたことである。20代の人は,自分らの小さいときは,ドロンコ遊びでもなんでもやりたいことが思いきりできた。今の子どもたちには思いきり何かをやる自由が与えられていないといった。40代の人はこういった。"わしらの若い頃は,人の山でまきを拾ってきてもそれをやかましくとやかくいわなかった。今はこまかいことまで合理性を偉い人らがするようになり,プロパンを使っている。日雇労務者として賃金のもらえる日は,月のうち精一杯20日で,1万円程度の収入である。近ごろ,息子が18才の嫁をもらっているが,足を悪くし運転手ができないのでペンキ屋に勤めている。その収入が少ないので一家が食べていけない。日雇労務者の仕事が終わってからお好み焼の店に出かけて皿洗いをして1万4千円もらう。締めて2万4千円で食べていかなければならない。戦前の方が楽なように思える。疲れて時どき目まいがする。病気ではないかと思うことがある。今の世の中では気を締めつけられるような気がする"
 仲間の某氏が「甲状腺がはれているね」といった。ふとみると大きくはれていた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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