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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生31巻1号

1967年01月発行

文献概要

研究

都市の地域社会における結核蔓延の実態論的研究

著者: 小林治一郎1 吉田三郎 藤田寛子 高田とし子 竹内亨斉

所属機関: 1神戸市長田保健所

ページ範囲:P.40 - P.48

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1)「一斉検診」などによって発見された者は,「自覚症状によって受診」して発見された者よりも経過がよい。
2)「発病前に定期検診」を受けている者は,受けていない者よりも経過がよい。
3)「経過」と「受療状況」との間には直接には明確な関係はない。医療中止,不受療の理由の7割は,「自覚症状が少ない」と「知識の不足」とであった。自覚症状の「ない」者は5割,「あまりひどくない」者は3割であった。
4)「生活規則がよく守られている者」は経過がよいが,「自覚症状の少ない」者では生活規則が守られにくい。
5)住居の「2部屋以下」の者は,「3部屋以上」の者より経過が悪い。
6)生活状況の「下」の者は,「中」,「上」の者より経過が悪い。「結核発見の方法」,「発病前の定期検診」などの結核管理技術の利用状況でも,「下」が他より悪く,本来の経済状況のほかに,これらの事情が作用していることはたしかである。
7)企業の規模が「49人以下」では,それ以上のものより経過が悪いが,「49人以下」の企業では定期検診を中心とする結核管理技術の利用が少ない。
8)「臨時日雇」,「商人職人」,「自由業」,「家事」,「無職」の群の経過が最も悪く,「常用労務者」,「民間職員」,「官庁職員」の群がこれに次ぎ,「小中学生」,「高校生以上」,「乳幼児」の群が最もよい。これは定期検診を中心とする結核管理技術の社会的な普及度とほぼ平行するようである。
9)「年齢」が多くなるほど経過は悪い。これは結核管理技術を利用している状態とほぼ平行する。
10)「性別」と経過との間には明らかな関係はない。
11)「転入者の結核」の大多数は,転入後3年以上たってから発病している。したがって転入後の発病とみなさなければならない。
12)以上の10の要因を分析し,さらに長田区の11の地区における蔓延状況と比較して整理すると,基本的な条件としては,
 ①定期検診を中心とする結核管理技術
 ②住居の広狭,収入の多少などの生活状況(経済状況)
 ③自覚症状が少ないという特性を中心とする結核症の知識
 ④地区における伝染源
 の4つとなる。したがって対策はそれらによりおのずから定まってくる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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