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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生31巻12号

1967年12月発行

雑誌目次

特集 地域保健と職業衛生 主題

事業体の衛生管理と保健所の役割

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.682 - P.686

 事業所を,地域という保健行政上のわく内に入れて考えることから出発して,そこに働く人たちの健康保護の役割主体が保健所にあることを設定した。そういう観点から事業所の衛生管理の実情と保健所の役割とを考察してみた。

地域と職場の健康管理

著者: 坂本弘

ページ範囲:P.687 - P.692

 地域と職場,相関連しあう二つの場で,人間の健康に対する施策は現在どのような実情にあるのか,そこに派生するさまざまな問題について提起した。

事業体の衛生管理—戸塚保健所管内の実例から

著者: 西山勇

ページ範囲:P.693 - P.698

 元来,地域保健と産業保健は行政的には別個の方式で進められてきた。しかしその対象となるのは同じ人間である。ここに,地域の保健所管内で推進した地域と職場の結びつきの実例をあげる。

海外事情

諸外国の労働衛生対策

著者: 久保田重孝

ページ範囲:P.700 - P.703

はじめに
 非常に大きな課題で,果たして私にこれを述べる資格があるか否か,自分でもおおいに危惧しているところである。
 おそらく編集のほうでは,私が1960年,New York,1963年Madrid,1966年Wienと4年目ごとに国際労働衛生学会(International Congress on Occupational Health)が開催される機会に前後3回も外国に出かけたのであるから,何かまとまったものが書けるであろうと期待したのだと思うが,実はそれぞれせいぜい1〜2ヵ月の旅行であったから,それほど深く系統的に各国の労働衛生事情を調べあげることなどできるわけもない。ごく雑駁な,聞き書きをまとめることになってはなはだ恐縮である。

活動の事例

中小企業の衛生管理—その組織論と実例

著者: 乾修然

ページ範囲:P.704 - P.706

はじめに
 企業における衛生管理は,労務管理,安全管理,生産管理などとともに重要な一面を担っていることは論をまたない。
 しかし,衛生管理が提起する諸問題の実践過程において,その解決のためには広範囲な専門的知識と高度の技術を要するために,また衛生管理を推進するための組織体系が貧弱なるがゆえに,結果的には企業ならびに労働者の,健康保持増進に十分貢献しているとはただちに断定できないのが現状である。

東京の中心地を所管する保健所—とくに事業所との関連について

著者: 山下章

ページ範囲:P.707 - P.709

1.管内の特色
 東京都のそして日本の心臓部千代田区を神田保健所と分轄しているが,神田のほうは古くからの中小企業の地区であるのに対して,麹町のほうは皇居を中心に大手町,丸の内,有楽町,内幸町,霞ケ関,永田町と大会社,新聞社,ホテル,劇場などのマンモスビルと国会,官庁街で占められているというきわめて特殊な地区である。夜間の人口は4万足らずであるのに昼間は70万にも達する。したがって他地区に見られないような特徴が少なくない。

事業所の保健婦活動—とくに保健所との関連について

著者: 黒田晴子

ページ範囲:P.710 - P.711

 日本精工健康保険組合は,被保険者約6,900名を有し,東京,神奈川を中心に各工場,販売会社などあわせて30余の事業所が全国に散在している。そのうち都内とその近郊の被保険者1,000名と,その家族1,400名を担当している。

その実態と対策

北海道の職業衛生

著者: 阿部十郎

ページ範囲:P.712 - P.718

業務上疾病の発生状況
 労働衛生行政の一つの大きな柱として,いわゆる職業病対策がとりあげられているが,北海道では,職業病としてどのようなものが注目されているか。その手がかりとして,また当面の問題点を知るためにも,事業場から労働基準監督署に提出される労働者死傷病報告や,それをとりまとめた業務上疾病の発生状況報告,あるいは事業場が実施したじん肺健康診断や特殊健康診断の結果報告などを,いろいろ調べてみると(第1〜3表),次のようなことがわかる。

中小企業の健康管理の問題点—神奈川保健所管内,神の木町の調査から

著者: 鈴木聰男 ,   朝比志郎

ページ範囲:P.719 - P.723

はじめに
 中小企業における健康管理の実態,問題点さらに対策などについて知り,とくに保健所がその管内の中小企業の健康管理を行ないうるかどうかについての資料を得るために,典型的な中小企業の町であるこの地区を選び,横浜市神奈川保健所の協力のもとに調査を行なった。調査地区は神奈川県東北部に位置し,国鉄横浜線と京浜第二国道にはさまれた地帯で,調査を行なった昭和41年12月現在,この地区には事業所が全部で23あり,そこに働く従業員総数は428人であった。ここの全事業主と,それに従業員の約60%にあたる244人に対して,あらかじめ作製しておいた調査項目による1対1の面接調査を行なった。調査項目は,はじめに述べたように,実態,問題点,意見,要望などについて,なるべく広い範囲にわたって知り,そこからなんらかの対策が考えられるよう作製した。
 この地区の中小企業は,昭和初期ごろから臨海地帯に発展した大企業の下請工場として,この地区一帯にわたって設立されてきたものである。調査当時のこの地区に対する保健所の活動は,地区住民を対象としたもので,地区内の事業所に対しては,とくにこれといった活動はなされていない。また各事業所の共同出資の形で工業会なるものが地区に設置されている。

研究

欠勤情報による職場の健康管理

著者: 佐藤信一

ページ範囲:P.724 - P.727

はじめに
 欠勤ということは職場に勤務する人としては絶対にしないですむというものではない。もちろん皆勤ということもありうるが,集団全部が皆勤ということはありえないので,誰かは欠勤する。そこで,疾病統計を中心にして,欠勤の統計を健康管理のための情報と考えてみることはできないであろうか。私は,ここ2〜3年間,休業疾病を何とかして減少できないかという問題にとり組んできているので,掲題のようなことについて私見をのべる。

人とことば

将来の産業衛生

著者: 山口誠哉

ページ範囲:P.679 - P.679

 企業内労働者の動向と,企業経営は好むと好まざるとにかかわらず有機的なつながりをもち未来にいたるまであるいは闘争し,あるいは協調し進んでいくものであろう。そこにおいての労働者の健康保持,向上,労働環境の改善,安全衛生の維持向上は,従来見られた恩恵的または父権的給付ではなく,じつに企業を主体とした企業業務としての必然的対策として要求されてくるのである。産業衛生に包括される職業衛生,職業病予防,災害予防をはじめとする種々の労務管理的事項は,これはまったく従来考えられていた治療医学的,附帯事務的認識とは隔絶し,将来において予想される工業化の進展と労働力のその中における生存と,さらにはまた企業そのものの,正常な発展のために企業内においてその独特な地位を占めねばならないのである。
 産業衛生に包括され運営されるべき事項をあげてみると,将来はつぎのようなものが重要になってくるのではなかろうか。

談話室

地域保健と職業衛生

著者: 大平昌彦

ページ範囲:P.680 - P.681

A村の場合
 瀬戸内海に面した戸数560,人口3,000人余りの農業村。訪れる外来者を迎える自然は美しく,そのために村は観光事業にも力を入れている。しかしここは,ニューヨーク国際博の日本庭園以来,一躍注目を浴びるようになったA石の産地でもある。住民は農業のかたわら漁業も営んでいたが,最近急速に需要のたかまった採石,加工に従事するものがふえ,家内工業的な採堀から,協同組合組織による機械化も進んで,兼業から専業に転ずるものも多く,とうぜんのこととして珪肺問題が頭に浮ぶ。私たちの予備調査でも住民の健康への関心がかなり高いことが明らかとなった。
 では従来どのような対策がとられてきたか。元来このK県は,保健婦の事業別,業務別分担制の確立していることで有名である。すなわち従来の保健所保健婦の地区駐在をやめ,各種業務単位の分担に切り換え,住民に刻する保健指導や衛生教育などはもっぱら市町村(国保)保健婦に委ねられている。これは近来とみに増加した保健婦業務のいわば上からの合理化,系列化と見られよう。

グラフ

心筋硬塞に専門病院—東京女子医大狭心症センター

ページ範囲:P.677 - P.678

 脳卒中,ガンにつぐ死因順位の3位にある心臓病は,昨年1年間に7万人の命を奪った。そのうちの85%の6万人は心筋硬塞による死亡だといわれる。心筋硬塞は死亡率が高く,その大部分が発病直後の数日に集中している。この時期に適確,迅速な治療できりぬけられれば,死をまぬがれる患者も,この種の専門病院がないため,心筋硬塞による死亡は年々増加するという状態にある。このような状況のなかから生まれてきたのが,東京女子医大日本心臓血圧研究所の狭心症センターであり,今年8月末から業務を開始している。
 開設にあたって,都内各開業医(主として内科医)に案内状を出し,センターの利用と協力を呼びかけている。開業医師の判断でセンターの治療を必要とされた場合に電話で連絡を受けると,ただちに備えつけの救急車に医師と看護婦が同乗して,車内で救急処置を行ないながら患者を輸送するというシステムになっている。

講座 情報科学とその応用・6

公衆衛生における情報の収集とその活用

著者: 杉山博

ページ範囲:P.728 - P.733

はじめに
 近年,電子計算機の著しい進歩発達とその応用としてのいわゆる情報処理のめざましい発展と,さらにそれをとりまく情報科学の広くかつ深い進歩発達によりおよそこの波の影響を受けない領域はないといっても過言でない状況である。医学領域についても広くかつ急速にその影響を受けつつあるが,さて公衆衛生の領域についてはどうであろうか。公衆衛生といってもその領域はまことに広大である。関連する基礎学の範囲はきわめて広く,その活動分野はまたまことに広範である。この"公衆衛生"のいかなる場面にいかなる理念で情報科学と情報処理を折りこんでいくべきであるか。実に問題は前向きに考えた"公衆衛生"の歩むべき方向であり,また情報科学および情報処理の進歩発展の場でもあるであろう。
 このような巨大な問題に対して,いかに展望すべきか。浅学非才の著者がとうてい論を尽すことは不可能である。といっても本稿をひきうけてしまったからには一応の展望を試みなければならないので,以下に公衆衛生の領域をつぎの各分野にしぼって考察してみたい。

ニュースの焦点

交通安全対策の今日的課題

著者: 田中恒男

ページ範囲:P.736 - P.736

 交通ラッシュにともなう事故災害の多発は,衆議院に特別委員会を設立させ,行政的な段階でも論議される事態となった。もちろんそれ以前から交通災害に対する疫学的アプローチや心理学的な検討が加えられてきたが,この数年来その傾向に拍車がかけられているようである。いっぽう総理府は,昨41年12月「陸上における交通事故――その現状と対策」と題して,施策の方針を明確にした。しかし,それにもかかわらず,昭和42年も交通災害は防止効果を示すにいたらず,主要死因としての不慮の事故死の増加原因となるいっぽうである。
 交通災害に対する施策として本年度開始された事故のうちおもなものは,
 1.免許の申請および更新に際して,精神病者でない旨の医師の診断を必要とするよう改正されたこと。
 2.道路交通法の改正にともなう交通安全への第一歩が開かれたこと。
 3.交通事故の被害者のための交通相談所が各都道府県ごとに設置されたこと。
 4.脳・神経外科を中心とした救急医療センターが,全国で逐次開設されてきたこと(全国を7ブロックとし各ブロック1施設の予定ですでに横浜はじめ5カ所に,本年7月1日から開設されている)。
 などであろう。

厚生だより

原子爆弾被爆者実態調査の概要

著者:

ページ範囲:P.734 - P.734

 昭和20年8月,広島,長崎両市に投下された原子爆弾の被爆者については,放射線の被爆による特殊な健康状態におかれているということで,現在,「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」(原爆医療法)により,健康診断,放射線障害に基づくと思われる特定の疾患に対する医療の給付,一般疾患治療費の自己負担分の国庫負担などが行なわれている。昭和40年11月,これらの被爆者の健康状態,生活状態についての調査が行なわれ,今回その概要が発表された。
 調査は,全被爆者に対して行なわれた基本調査(この概要は2月に公表ずみ),1/20の標本に対して行なわれた健康調査および生活調査などから成り立っている。

人口動態調査の改正について

著者:

ページ範囲:P.735 - P.735

 明年1月1日から人口動態調査が改正される。今回の改正は後述のとおりのものである。戸籍法,死産の届出に関する規程による届書を基礎とする第2次統計としてはそうとう大幅の改正であり,調査票の様式,製表方法は全面的な改正となる。

モニターレポート 岐阜から

岐阜県精神障害者の実態まとまる/学校保健学会に参加して思う

ページ範囲:P.692 - P.692

 岐阜県衛生部予防課ではこのほど昭和41年の精神障害者の実態をまとめた。
 それによると,昭和38年に厚生省が実施した"精神障害者の実態調査"の結果から本県の障害者は推計約22,000人で,このうち入院加療を必要と思われる者は約10,000人であるが,現在実際入院している患者は2,572人であるから,まだそうとう多数の者が家庭療養されていることになる。

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基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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