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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生31巻5号

1967年05月発行

雑誌目次

特集 リハビリテーションと地域保健活動 焦点

リハビリテーションをきる—公衆衛生の立場から

著者: 吉田寿三郎

ページ範囲:P.256 - P.265

 第三の医学として脚光を浴びているリハビリテーションに欠けているものはなにか。本稿では公衆衛生の立場からするどくメスを入れてみた。

地域におけるリハビリテーション

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.266 - P.270

 巷に1人の放置された障害者もいないという理想を実現した北欧三国のリハビリテーション行政に学ぶ点はないだろうか。筆者の目でみたその実際を紹介する。

わが国のリハビリテーション—現状と将来

著者: 田波幸男

ページ範囲:P.271 - P.275

 リハビリテーションの歴史は古い。一方戦後の医療,公衆衛生の進歩によってその情勢も変動してきている。その歴史をふまえたうえで数々の問題点を分析してみた。

リハビリテーション技術者の教育・訓練

著者: 佐藤哲

ページ範囲:P.276 - P.281

 最近クローズ・アップされてきたリハビリテーション,医療と公衆衛生の接点をさぐりながら,その教育体系に焦点をあててみよう。

活動 リハビリテーションの施設と活動

職業的リハビリテーション

著者: 花岡俊行

ページ範囲:P.282 - P.284

積極的な職業的リハビリテーションの必要性
 Rehabilitationの究極の目標は,身心障害者を社会生活に適応させ,自立させることにある。職業的rehabilitationはその過程の最終段階に相当し,医学的rehabilitationにひきつづいて行なわれることが理想である。回復した機能を維持させながら,さらに生産的環境へ徐々に適応させ,職業相談から就職まで,一貫した指導を行なうことを目的としている。
 わが国の身体障害者の人口は約100万人といわれている。そのうち,実際の職業についているものは46%で,大部分が月収2万円以下の低所得者である。一方雇用率からみると,労働省の調査では官公立団体の身体障害者の雇用状況は1.4%,民間事業所(従業員100人以上)では1.12%にしかすぎない(1964〜65)。

リハビリテーション学院の教育と問題点

著者: 小林治人

ページ範囲:P.284 - P.287

学院の設立
 PT(Physical Therapist),OT(Occupational Therapist)は昭和40年に「理学療法士及び作業療法士法」ができた時に,その名称(訳語)もそれぞれ理学療法士,作業療法士(以下PT,OTと略記する)と統一されその身分,業務などが規定され,その教育の基準が示されることになった。実はすでにそれより数年前からリハビリテーション,特に医学的リハビリテーションは日本の医療の中の真空地帯であるとして国際的に批判を受けていた。そこでこの分野を埋めていくには医師をリーダーとする治療チームが必要であり,それを構成するいわゆるパラメヂカルな職種の中でも主役的存在であるPT,OTが必要不可欠のものとなっていた。厚生省は国立療養所東京病院のなかにその養成所を作るという形でこの問題を具体化した。それにはその療養所建物の移転後へ,リハビリテーション・センターをつくるという青写真がついている。窮余の一策というか一石二鳥の名案というか,とにかく文部省(医科大学)がやらない以上,厚生省としてはやむをえなかったのであろう。昭和38年5月のことである。その後,蘭学事始的混頓のなかで創業者などの苦労がつみ重ねられ,順調に発育して近く第2回卒業生が出るまでに整備された。筆者もここ2年余りその建設運営に参与している。

香川県保健婦のリハビリテーション活動—地域の患者を拾いだすことから出発

著者: 前谷キミ

ページ範囲:P.288 - P.290

リハビリテーション活動への理解ととりくみ
 ここ数年来本県の保健婦が最も努力していることのなかに,ほんとうに住民や家族が今一番困っていることを一緒に考えてあげたい,いかにして家族のよき相談相手となってあげることができるか,ということがある。これはたやすいようでなかなか難しい問題である。また誰でも口にすることだが,とにかく忙しすぎるという。
 定例で開かれる各種の健康相談,集団検診,結核や母子の家庭訪問などにいっぱいであって,何かに重点をおくと何かがかけるということである。このような忙しい多量の業務のなかで,いったいどこに重点をおけば保健婦本来の業務ができるのだろうかと悩んでいる。

施設紹介

七沢リハビリテーション・センターの概要

著者: 栗原忠夫

ページ範囲:P.298 - P.299

設立のねらい
 本施設が設立された趣旨は脳卒中後遺症のリハビリテーションのためで,いままでともすれば見捨てられがちの年老いた,からだの不自由なかたたちに,少しでも明るい生活をとりもどさせたらという考えがそのもとになっているのである。長い間人生の労苦に耐え,ようやく安息の晩年を迎え,これから余生を楽しもうとしているとき,突然に脳卒中は人を襲う。全国で死因別死亡では脳卒中が最高で,だいたい17万人ほどの人が毎年死亡するので,17万人ぐらいの人が後遺症で悩んでいることになる。
 そうした老人たちに救いの手をさしのべることはとうぜん必要であるが,この救いの手はそれとともにそれをとりまく生活全体を救うことにもなって,その意義はさちに大きいものと考えられる。

グラフ

脳卒中後遺症に悩む老人に福音—七沢リハビリテーション・センター

ページ範囲:P.251 - P.252

 "からだの不自由な老人に明るい生活を"という趣旨のもとで,41年12月設立されたリハビリテーション・センターは,神奈川県厚木市の市街地の景勝の地である七沢に威容を誇っている。地下1階,地上5階の老人医学全般にわたる総合医療研究機関であり,主として脳卒中後遺症のリハビリテーションに主眼をおく病院のほかに,特別養護老人ホームが隣接して,治療と日常生活訓練が密接に連けいされて行なわれているのがこのセンターの大きな特徴である。
 中心となるリハビリテーション部には,部長,PT10名,OT2名,ST2名,ヘルパー6名というスタッフがそろい,活発なリハビリテーションサービスが行なわれている。これらの各専門家によって患者の状態があらゆる角度から把握されてプログラムが作られる。患者は安心して訓練がうけられ,他のあらゆる疾病に対しても即時に治療が受けられるという総合病院システムになっている恵まれた施設である。

談話室

リハビリテーションと綜合保健活動

著者: 福田邦三

ページ範囲:P.253 - P.255

 ひとむかし前の公衆衛生学者も,公衆衛生当局も,リハビリテーションということにはだいたい興味がなかった。しかし今では本誌でリハビリテーション特集が出るほど関心が高まり,広まった。それは何を意味するのか。このことを,まず談話室の話題として取り上げてみよう。
 衛生ということが言われはじめたときには,人間の健康を守る,防衛するということを,「病気をまぬがれる」ことを中心にして考えていた。当時は病気の本態や原因がしだいにはっきりしてきつつあった時であるから,これを予防するような暮しかたが具体的に企画できるようになったわけである。この考え方は衛生学の太い柱として現在まで続いている。その意味での衛生学の使命は厳然としてゆるぎない地歩を占めている。

海外事情

欧米におけるリハビリテーション

著者: 上田敏

ページ範囲:P.292 - P.295

はじめに
 欧米におけるリハビリテーションの現況を過不足なく紹介するには筆者の見聞は不十分であり,また紙数も必ずしも十分ではない。そのためここでは筆者の経験した範囲内で,特徴的と思われるいくつかの点にスポットライトを当てていく方法をとりたいと思う。
 ひとくちに欧米といっても,アメリカもヨーロッパもわが国にくらべてリハビリテーションの面ではたしかに先進国であるが,それら相互の間でも比較をすればそれぞれのアプローチのうえでかなりの差が見出されることも否めない事実である。もちろんヨーロッパ諸国間にもそれぞれの歴史的・社会的背景の差による相異があるが,ここではそれらを比較的概括的に扱ってみたい。なお筆者は以前にも欧米のリハビリテーションの種々の面について述べたことがあるので,参照いただければ幸いである1-5)

ヨーロッパ諸国の結核のリハビリテーション

著者: 清水寛

ページ範囲:P.295 - P.297

 わが国では10数年前まではいくつかの療養所で少数の軽快患者に対して訓練や作業療法が行なわれていたが,それはアフターケアというべきもので,リハビリテーションと名づけられるものではなかった。
 近年化学療法の普及により,結核は治るようになったが,同時に「死にもしないが治りもしない」患者がふえつつある。このような背景のもとで,わが国でも最近結核のリハビリテーションが重視されるようになり,physio therapistやoccupational therapistを養成するリハビリテーション学院が開設され,多くの療養所で医学的リハビリテーションが実施されるようになった。

技術解説

BCG経皮接種

著者: 清水寛

ページ範囲:P.305 - P.309

BCG接種と結核の発生
 A. CalmetteがBCG接種を開始したころの,フランスにおける結核家庭乳児の結核死亡率は24%であった。この率はBCG接種によって0.9%に低下した1)
 1936年までの3年間に,札幌市学齢児童のツベルクリン反応陽性率は約33.7%で,要医療率は9%にあがっていた2)

講座 情報科学とその応用・2

情報理論とはなにか

著者: 宮脇一男 ,   稲田紘

ページ範囲:P.300 - P.304

まえがき
 最近,電子計算機の発達にともない,各分野にわたって情報処理という概念がひじょうに重要になってきており,医学,医療の方面においても例外ではない。この情報処理に関連した諸理論のなかでも,情報理論はとくに重要な位置を占めるものである。
 情報理論とは,ひとくちにいえば,入出力系における情報の流れを,確率統計論などを用いて量的に評価する科学である。これは,元来通信工学に端を発したものであるが,最近では,境界領域の科学として,きわめて重要な意義をもつに至っている。医学,医療の分野においては,情報処理の歴史はまだ浅いので,この情報理論の効用は未知数ではあるが,医用情報の性質からみて,今後,諸問題の解決に相当な威力を発揮するものと期待される。

ニュースの焦点

ワクチン豚事件をとりまく諸問題

著者: 尾形学

ページ範囲:P.310 - P.310

 2月下旬,東京・品川で発覚した豚コレラワクチン豚密売事件に端を発した不法肉の問題は,全国的規模に広がり国民の食生活を不安のどん底に陥しいれた。その後の調査によって,さらに狂犬病ワクチンヤギの肉や,問題は異なるが,養鶏場で大流行したニユーカッスル病の感染鶏や死骸が食肉として販売された疑いがでるなど,さらに恐怖は広がり,放射能マグロ事件以上の大混乱となったことはよく知られているとおりである。
 本事件の主体をなした豚コレラが人にまったく感染しないものであったことは不幸中の幸いであった。しかし一応安全とはいえ,ワクチン製造後の動物の残骸が,知らないうちに健康な肉として販売され食膳にあがったという事実がたまらない不潔感を与え,国民の怒りを爆発させたのである。

厚生だより

保健所の施設

著者:

ページ範囲:P.291 - P.291

新設
 昭和42年度当初の保健所数は,新設の3保健所を加えて829となり,さらに昭和42年度に3保健所の新設を予定している。昭和36年当初保健所数と,昭和41年当初とを比較すると,U,UR型(都市型,中間型)保健所数は272が299と増加し,その他の保健所数(農村型など)は530が527と減少している。またこの期間(昭36〜41の6年間)に新設された保健所数は28で,その内訳はUR型が23,その他の型が5である。人口移動の激しさを如実に示すもので,人口の転入超過の最も高い東京圏(東京,神奈川,埼玉,千葉)に,実に15の保健所が誕生している(保健所の設置基準は,人口10万人対1保健所)。

モニターレポート 岡山から

行政・研究機関がタイアップした総合調査活動,他

著者: H・A

ページ範囲:P.265 - P.265

 地域開発と新産業都市で一躍脚光を浴びた岡山県は「農業県から工業県への脱皮」をめざして県勢振興計画が推進されているが,とかく南厚北薄の行政としての批判も少なくない。
 このような情勢のなかで県北部積雪地帯として特異な存在である,真庭郡八束村の中福田下部落52世帯を対象に総合調査を行ない,この調査の結果をまとめて地域保健計画の基礎資料とする計画が岡山県勝山保健所によって立てられた。

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新聞に拾う

ページ範囲:P.290 - P.290

医療保障関係
 薬代の本人負担は1日1剤15円に 厚生省は医療保険財政の暫定対策としての一部負担の方法について構想を固め,2日から開かれる審議会に諮問する。(2日,読売・朝)

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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