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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生31巻7号

1967年07月発行

雑誌目次

人とことば

「専門的近視眼」について

著者: M・バーンズ

ページ範囲:P.373 - P.373

 私は,社会福祉における活気のなさと,生き生きしたリーダーシップの欠如について種々の云い訳けのうちで,最も途方もないと思うものについて,最後に述べようと思う。それは,40年前にくらべて今日は,大さわぎをしなくてはならないような具体的な問題がないのだという議論である。毎日の新聞を読み,われわれの住んでいる周囲を見まわすとき,そこにあるのは,何とかされなくてはならない問題ばかりだといってもいい時に,「問題がない」とは一体何事であろう!われわれは,わが国の生産向上にすっかり満足してしまって(もちろん,それが多くの社会福祉政策にまさって人々の福祉のために貢献していることは解るけれども),この生活水準の向上からとり残されている人々の存在が,眼に入らないというのだろうか。年額1,000ドル以下の現金収入しか持たない400万世帯,また450万人が,積極的なソシャル・アクションを必要とする社会問題でないというのか。低収入,しばしば堪え難いほどの生活条件,労働条件,そして不安定な社会的地位(自分自身も,また家族も),という問題になやむ幾十万の移民は,われわれの関心事でないというのか。人種の故に差別され,就職の機会や教育機関,適当な住居等を平等に与えられていない幾百万の仲間が,わが国の良心にとって,大きな恥辱でないというのか。

焦点

赤痢対策,これでよいか

著者: 福見秀雄

ページ範囲:P.374 - P.380

 近年とみにあらゆる意味で変貌の著しい赤痢に対して,旧態依然たる行政施策では追いつけないという状態が今や重要な問題として提起されている。赤痢対策はこれでよいのか。その撲滅理論についての見解を述べていただいた。

最近の乳肉衛生(とくに人畜共通疾病)の問題点

著者: 北浦弥太郎

ページ範囲:P.381 - P.385

 血清豚事件が世上を騒がせたことは記憶に新しい。これら一連の乳肉衛生関係の事故があとをたたない原因はどこにあるのか。食品行政の立場からその問題点と改善について論及した。

私の保健所

みんなで考える行政の推進—北海道北見保健所

著者: 左部勝

ページ範囲:P.386 - P.389

 私たちの保健所は,いわゆる民衆統制上の立場にたって,保健所重要施策として保健所機能の近代化,生活に密着した指導監視行政への重点指向,健康づくり運動の推進,医療体制の確立,産業開発に対応した衛生対策の五つの住をたて,みんなで考える行政をおしすすめているので,裏方の考えも織りまぜつつその一端を紹介したい。

辺地を多くかかえてつきない悩み—鹿児島県鹿屋保健所

著者: 土屋高夫

ページ範囲:P.390 - P.392

広くて交通不便な管内(第1図)
 鹿屋保健所の管轄地域は鹿児島県鹿屋市,垂水市および肝付郡の2市9町21万の地域である。九州の片方の脚にもたとえられる大隅半島の先端の大部分をしめ,九州本土の最南端に位置し,太平洋に面した地帯に属している。地勢は山が多く交通が不便で,鹿児島県のなかでも薩摩半島と比較して後進的であるといわれている地域である。気候は温暖で管内の大部分の海岸線は無霜地帯である。バナナ,ブーゲンビリア,ダチュラなどが露地栽培されてちょっと変わった風光をかたち作っている。地形は桜島の東にそびえる1,200mの高隈山に連なる笠之原台地を主とした台地と,肝付川流域,南部の1,000m級の国見山系の三つに大別され,南端に灯台で有名な佐多岬,東海岸には太平洋に面して内ノ浦町の長坪ロケット発射墓地,辺塚自衛隊射撃演習場などが山の上から直接海に向ってひらけている。管内はほぼ三角形をしているが,鹿児島湾岸,太平洋岸ともに長さが約80粁,三角形の底辺の長さも約40粁ぐらいあり面積が約1,200平方粁,佐賀県,神奈川県の半分ぐらいである。交通は肝付川流域に国鉄のローカル線古江線が垂水市・鹿屋市から宮崎県都域市方面へ通じているが,5町には鉄道は通ってなく2町は国道も通っていない。北部は国道,県道がよく発達しているが,南部は鹿児島湾に沿って国道が一本通っているだけで,東海岸の部落に行くには,ひとたび西海岸に出てから行かなければならない。

随想 衛生の旅

Gate 27と鍵とKeys先生

著者: 佐々木直亮

ページ範囲:P.398 - P.399

 1965年9月24日,私はミネソタ州ミネアポリスの飛行場についた。
 ミネソタという言葉はそのまま通じるにしても,ミネアポリスと棒よみにしては絶対に通じないのである。ポリス・ポリスといえば,policeのところにつれていかれる。"たくさんのりんご,メニアプルス"と発音すればMinneapolisとしてわかるのである。

アラカルト

保健文化賞受賞はこうして成った—鳥取県中山町受賞を育てた米子保健所の陰の力

著者: 樋口田鶴

ページ範囲:P.400 - P.402

 第18回保健文化賞を受賞した中山町について当保健所の陰の力を書くようにとのことなので,今日に至るまでの概要を説明の意味で綴ってみることにした。
 去る39年7月頃,米子保健所20周年記念事業の一つとして管内問題地図を作製してみた。米子市,境港市約12万はあまりかんばしくなかったが,1村8カ町は思ったより好成績が出ていた。もちろん食品,環境の衛生課に属するものと,医薬関係は市部が非常によく,予防方面は町村がすばらしくぬきん出ていた。町村における結核の住民検診,伝染病予防注射は平均90%を上まわっていた。結核発生率も1.4%に下り,妊婦検診も9カ町村は80%以上実施している。もちろん乳幼児検診も85%を上まわっている。ことに中山の成績は他の2,3の優秀町村の中に入る立派な成績を示していることに気がついた。

ひろば

周辺漫歩のはて

著者: 鳥谷虎一郎

ページ範囲:P.405 - P.407

 「公衆衛生」は昭和25年からとっているのでもう200冊余りたまった。ことのはずみで臨床から保健所長をやりだした私にはたいへん世話になった雑誌であり,公衆衛生開眼の誌でもある。最近ではサイバネティックスの導入についての紹介があり,田舎の所長の大脳新皮質も血行がいくらかよくなった感あり。この一年,二つの保健所の所長を兼務し忙しく,推敲も相かなわず,みぐるしきことになるやも分らずご容赦のほどを。

研究報告

人工妊娠中絶の統計的研究

著者: 廣畑富雄 ,   倉恒匡徳

ページ範囲:P.408 - P.411

はじめに
 昭和23年7月に優生保護法が公布され,人工妊娠中絶(以下中絶と称す)が容易に行なわれるようになった。同法はその後2回大きく改正された。昭和24年には経済的理由によっても中絶を行なうことができるようになり,昭和27年には中絶の手続きが簡易化された。中絶数は,本法の公布および改正を背景に急増した。昭和28年以後は,約10年間にわたって毎年100万件以上の中絶数が報告された。近年漸減したものの,未だ非常に多くの中絶が行なわれている。これは公衆衛生上重要な問題であろう。
 中絶に関する臨床的研究は多数あるが,全国を対象とした統計的観察は少ない1)2)3)。筆者は政府より公表された資料1)2)4)5)にもとづき,以下に統計的検討を試みた。

—月経に関する研究—第4報——周期安定性および障害症候移動と心理的側面との関連

著者: 松井清夫 ,   坂本弘 ,   杉浦静子

ページ範囲:P.412 - P.415

 月経にまつわる諸現象を,生産年齢層女子の健康指標の一つとしてとらえ,それぞれの事象について,関与する身体的・精神的・社会経済的要因を検討している1〜3)。本報では,月経周期安定性および月経障害症候内容の移動性と精神心理的側面との関連を検索した。

—カズノコの漬物の中に発見された—Anisakis様幼虫近縁の幼虫

著者: 辻義人 ,   木根淵英雄 ,   石川秀子 ,   金田光男

ページ範囲:P.416 - P.417

 Anisakisというのは,海産哺乳動物(クジラ,イルカ,アザラシなど)の胃壁に寄生する蛔虫類の一種であり,人の蛔虫と異なり幼虫期に中間宿主を必要とすることが特徴とされている。このLife Cycleは,上述の海獣から糞便とともに排出された虫卵が動物性プランクトン(第1中間宿主?)に侵入してある程度発育し,これを海産魚類(第2中間宿主)が経口的に摂取し,魚体内でさらに発育し,これを海獣が捕食し,胃に至って成虫になるものと推定されている。
 このAnisakis様幼虫を包蔵する海産魚類はさしみ,酢のものなどの方法によって人の消化管内に移行するものと考えられる。人の消化管内に移行したAnisakis様幼虫に起因する好酸性肉芽腫の臨床病理については,すでに吉村1)その他によって報告されているが,われわれは海産物を用いた食品にAnisakis様幼虫に近縁のものを発見したので報告する。

講座 情報科学とその応用・3

循環器成人病管理における情報収集の実例—眼底情報を中心に

著者: 新井宏朋

ページ範囲:P.420 - P.424

Ⅰ.情報科学からみた眼底検査
 われわれが眼底情報を収集するのは,社会人の脳卒中・心筋梗塞などをめぐるリスクを予測し,その制禦の方策をもとめようとするためである1)2)。われわれはこのために有用な情報が眼球網膜にあることを先人の知見により知っている。網膜面上とは具体的には綱膜中心血管(細小動脈,細小静脈ならびにその交叉部),周囲の網膜実質および視神経乳頭部である。情報科学の用語ではこれらを情報源と呼ぶ。われわれは検眼鏡や眼底カメラによって,これらの情報源から各種の情報を収集する。網膜細小動脈の狭細,口径不同,反射亢進,動静脈交叉現象,網膜出血,浸出,白斑,網膜および乳頭部の浮腫などである。情報科学の用語ではこの過程を"いろいろな情報路,すなわち多因子情報路からの情報収集"と呼んでいる。おのおのの情報路を通じては,それぞれ特徴のある信号(signal)が送られてくる。網膜出血という情報路からは出血"あり"または"なし"の2種類のどちらかが(これを2レベルの情報路という),口径不同という情報路からは-,+,⧺の3レベルのうちの一つが送られてくる(3レベル情報路)3)4)

資料

高血圧症,脳卒中の治療状況—地域高血圧症対策のための国保資料の分析から

著者: 大沢進 ,   河路明夫 ,   高野正義 ,   西三郎 ,   小野寺正子 ,   橋本正己

ページ範囲:P.393 - P.397

はじめに
 近年,公衆衛生の分野に,高血圧症などに関する活動の要求がしだいに高まり,すでに一部の市町村,保健所では,老人福祉法などで規定されている事務以外に各種の高血圧症などの対策を自主的に行なっている。
 市町村,保健所段階の高血圧症対策は,従来の急性・慢性伝染病対策の場合よりは,いっそう,医療機関とくに民間医療機関と緊密な連携のもとで活動を進める必要がある。さらに現状では,民間医療機関の活動が中心とならなければならないともいえよう。一方,高血圧症対策が,公衆衛生活動のうち最も地域の生活に合ったサービスを要求されているにもかかわらず,市町村,保健所などでは,法令などによってなかば自動的に得られる報告のうち,地域の高血圧症の現状についての情報が得られるものが少ない状況である。このため,市町村,保健所などで高血圧症対策を推進するための基礎となる資料は,特別な調査とともに,集団検診その他の事業の分析などによって情報を得なければならない。

厚生だより

健康保険法等の改正

著者:

ページ範囲:P.418 - P.418

 健康保険法および船員保険法の改正は,社会保険審議会(会長代理清水玄)と,社会保障制度審議会(会長大内兵衛)の答申を得て,4月26日に衆議院へ提出され,5月30日に衆院本会議で審議が開始された。
 今回の健康保険法の改正は,政府管掌健康保険の赤字対策で,制度の抜本改正が行なわれるまでの暫定措置とされている。その内容は次の3点である。

基幹保健所構想

著者:

ページ範囲:P.419 - P.419

 ここ数年来,保健所問題の議論が活発に展開されている。厚生省内保健所問題研究会では,「公衆衛生における保健所の諸問題およびその改善案(第一次)」を,大阪市勤務医師会,医療および公衆衛生特別委員会では「大阪市における医療制度の改善に関する答申」を,東京都保健所長会では,「東京都保健所の将来像」をまとめている。議論は,保健所に対する行政上の要求と,それを満たすための条件の整備に集中されているが,ここでは基幹保健所の構想の概略を紹介する。

ニュースの焦点

国際観光年によせて

著者: 楠本正康

ページ範囲:P.426 - P.426

 今年は,世界ではじめての国際観光年である。昨年2月,国連の経済社会理事会において,1967年を国際観光年と名づけるよう国連総会に勧告した。その結果,昨年秋,国連はその第21回総会で,1967年を国際観光年とする旨を宣言した。そして,世界各国および関係国際機関に対し,観光が国際親善の増進と,国民生活の向上とに果たす役割を強調し,観光の正しい振興を図るため,各種の施策を推進するよう要請した。
 国際観光年の目的として,国連は「世界各国の人々の相互理解を深め,種々の文明の豊かな遺産に対する知識を豊富にし,かつ異なる文化の固有の価値をより正しく感得させることにより,世界平和の達成に貢献する」ことにあると高唱している。

モニターレポート 岡山から

高知県の保健婦技術研修会と医学教育/岐阜県の一山村で健康管理制度を新設

著者:

ページ範囲:P.385 - P.385

 戦後20年間も続いてきたインターン制度の完廃を叫んで,全国の研修生を結集した青年医師連合の運動は,ついに現行法の規定による医師国家試験,保健所実習のボイコットをした研修生を90%近くも生みだした。
 この混乱は伝統の中にとかく埋没しようとする医学教育制度,医局制度にもとうぜん持ちこまれ,数多くの医科系大学ではいまだに教授と学生の間に交渉が続けられている。

ニュース

第3回岡山県公衆衛生学会開かる/第39回東京都衛生局学会開かる

著者:

ページ範囲:P.389 - P.389

 昨年に引き続いて第3回岡山県公衆衛生学会が去る6月10日岡山県農業会館で開催された。
 今年は保健所法施行30周年記念を祝して,学会前日の6月9日,同じ会場で岡山県公衆衛生大会が開かれ,30周年を記念する県知事表彰(個人,団体各1名),記念講演およびシンポジウムなどが行なわれた。

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新聞に拾う

ページ範囲:P.427 - P.427

社会保障・医療制度関係
 幼児教育花ざかり 68%が幼稚園に通う。文部省の白書から。質的内容はまだまだ。(5日,読売・朝)
 医療保険の抜本改正の青写真12月までに坊厚相が方針出す。明年度予算で要求。(2日,東京・朝)

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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