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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生31巻8号

1967年08月発行

雑誌目次

特集 衛連6分科会の将来をさぐる 焦点

世界の医学教育—第13回世界医学教育会議に出席して

著者: 村松稔

ページ範囲:P.440 - P.444

 医学教育に関する論議はわが国でも最近とくに声高である。今回の第3回世界医学教育会議が,医学教育を社会経済発展における一因子としてとらえたことは,医学教育の将来を考える上で一つの重要な示唆を与えられるであろう。

研究と資料

列国の医学,歯学,薬学教育—とくに医師,歯科医師,薬剤師の需給面よりみて

著者: 美濃口玄

ページ範囲:P.448 - P.457

はじめに
 医師,歯科医師,薬剤師数がその国で現在満足すべき数であるか,不足しているか,または過剰であるかの判定は困難なことである。とうぜんこの場合質的な問題も考慮に入れなければならないであろうが,こうなるとますます問題が複雑になる。一応,量的にのみ考える時には,そのそれぞれの密度,すなわち10万人に何人の医師,歯科医師がいるか,または一人当りの医師,歯科医師に対するその地域の人口数がいくらであるかということが基準に採られるようである。
 筆者はこの密度を基準として,それぞれの教育養成される数と,死亡,引退による自然減少数,かつその国の人口増加数の3面から,列国の医師,歯科医師,薬剤師の需要供給について比較考察を行ない,さらにその教育面を考えて将来について予想を加えようと企図した。

人とことば

第一回日本聯合医学会開会之辞

著者: 田口和美

ページ範囲:P.429 - P.429

 今や本邦の医学は世界万国の医学と対峙して敢て遜色なきの程度に達せり。其淵源に遡れば遠く百余年の前に所謂蘭学の興りしものありと雖も直接の系統を尋ぬれば明治4年(1871)8月普国陸軍軍医鐸徳繆爾列児同海軍軍医鐸徳忽布満の二氏我政府の聘に応じて来朝せられし時を以て実験的医学輸入の初めとなすも可なり。
 此の歳10月繆爾列児氏は大学東校の教頭となり大に学則を改革し全然旧来の面目を一洗したり。爾来30年有為篤学の諸氏出でて幾多の艱難を排し偲々切々この短日月の間に能く今日の現状に達するを得たるは誠に盛なりと云うべく……,この趨勢を以て進みて止まざる時は邦本医学の泰西諸邦を凌駕し宇宙に冠たるは期して待つ国し。斯の如き医学の進歩に随伴して来れるものは即ち万べ医学会を開設するの時機ならん。これ不肖和美の同学諸君と相謀りここ日本連合医学会を創設し以て学術進歩の権衡を図らんとする所以なり……。

談話室

衛生関係六分科会の関連性と将来の展望

著者: 水野宏

ページ範囲:P.430 - P.431

 日本医学会に加入している学会は現在55であるが,わが国にはこのほかにも数多くの学会があり,衛生・公衆衛生に関係する学会・研究会もまたかなりの数にのぼる。科学の進歩とともに知識はいよいよ精細緻密化していくので,進歩の先端において存分に討議しようとすれば学会はいよいよ専門化せざるをえない。学会の分化は科学の進歩の必然的な結果というべきであろう。
 しかし分化が極まれば,森に入りて森を見ずのたぐいで,はじめの目的意識を忘れ去り枝葉末節に貴重な時間とエネルギーを消尽することが稀でなくなる。時に立ちどまり,大本にもどって,全体をみなおす必要があるゆえんであろう。さらに,分化した他の分野の問題点を,たがいに異なった角度からみなおし討議しあうことも必要である。医学会総会は分化した医学の諸分野をたがいに総合的にみなおし,さらに高い次元でこれをまとめあげる場であると考えてよいであろう。

座談会

衛連6分科会の関連性をきる

著者: 西川滇八 ,   小野三嗣 ,   近藤東郎 ,   鈴木継美 ,   天明佳臣 ,   西三郎

ページ範囲:P.432 - P.439

 第17回日本医学会総会において,その一分野として衛生関係の六つの分科会が連合して学会を持ったことは,「分化と総合」をテーマとする今次総会の示す史的展望に沿ったものとして.意義深いことであった。しかし連合学会の運営方法,また今後の6学会の連携・共同作業のあり方などについて,新たにさまざまの問題を提起したともいえる。そこで今号では,連合学会の各分野の方がたにお集まりいただき,現在の問題点の中から今後を展望していただいた。

回顧と展望

明日の公衆衛生のために

著者: 塚原国雄

ページ範囲:P.445 - P.447

 公衆衛生の分野で働いてきた者として,この面において私の身辺に起こった印象に残っていることの2,3を記してみたいと思う。

私の保健所

共同保健計画にまい進—愛媛県宇和島保健所

著者: 小糸賢太郎

ページ範囲:P.458 - P.459

 保健所は行政組織の末端にあって,法の執行と本庁の命令によって衛生行政を行なっており,個人経営ではないので所長の自由になるものではない。職員も私の使用人ではない。中間管理職である私の働く保健所であるにすぎない。
 四国四県の愛媛県は予讃線,松山を過ぎて2時間半,終着駅が宇和島である。伊達10万石の城下町,城山を中心にした人口7万弱の宇和島市と5町2村の北宇和郡,合わせて15万の人口が県立宇和島保健所の所管である。R3型だが面積は県下14保健所のトップで,810平方粁,高知県と接する山間へき地と豊後水道に接するリアス式海岸,離島四つを加えて交通不便な無医地区20をかかえている。職員は40名,うち保健婦10名,医師は所長,保健予防課長の2名のみ,庁舎は県下で最も古い戦前規格型。これで地方の保健所を知っている方はだいたい想像していただけることと思う。

管内市町村の協力に支えられて—青森県弘前保健所

著者: 高松功

ページ範囲:P.460 - P.462

 日本海に面する寒漁港鯵沢町に所在し,3町5村人口約8万を管轄するR型保健所の木造建築物が,青森県西津軽郡衛生行政の中心的役所となっている。
 管内は約90キロにわたる不漁続きの海岸,砂丘に作られた水田単作地常,一部りんご畑で他の7割は国有林野からなっている。地域住民は,猫の額のような海岸沿いの平地,山間の峡谷および砂丘に点在する部落に居住している。産業は地場産業の第一次産業のみで,生活はわずかばかりの農産物,貧漁の魚,日雇などに頼っている。したがって,地区には出稼者が多く県内随一の労働移出地区である。以下にこのような貧農漁地帯の保健所行政の経験と町村の衛生現況を紹介する。

ひろば

辺地農村にて思うこと

著者: 大西若稲

ページ範囲:P.465 - P.465

 辺地農村に駐在してついに半生近くを送ることになった現在,痛切に感じることは,人間のおかれた場によって生ずる人間の格差という点である。ここに生きる人々はことさらに生活のきびしさに立向っていかなければならない。
 都会の人々とのこの格差は,文化,行政,経済,諸般にかかわるものであるが,私は職務の関係上とくに公衆衛生の分野でその感が強いように思う。辺地農村のこれらのギャップはわずかに,あるいは特定な少数の人々のニュースになるような善意と,犠牲と,熱意と,愛情によって埋められているにすぎない。ともすればこれらはあくまでも個人プレーにしか終らない。ここに辺地農村の問題点があるのではないだろうか。現地では個々人の努力だけではどうにもならない問題がある。それは辺地であるという特殊性と,農業者であるという職種性とが相まって,複雑な様相を呈している。一例を医療施設にあげてみると,交通機関のまったくない積雪路を4時間も馬車にゆられ,さらに1時間の列車に乗り,病院の待合室で2時間余も待たされて,3分の診断を受ける。疾病を持つ人が,12時間のうちの3分を忍耐強く待つことをしいられるのである。

研究報告

京葉工業地帯地区住民の公害意識調査—第2報——とくに工場誘致に対する地区住民のイメージについて

著者: 谷修一 ,   水野哲夫 ,   柳沢利喜夫 ,   田波潤一郎 ,   沖山鐐三郎 ,   本多作爾 ,   伊藤茂子 ,   佐藤豊 ,   淵本献司 ,   加賀谷洋蔵

ページ範囲:P.466 - P.471

はじめに
 千葉県市原市は近年京葉工業地帯の中核として発展しつつある都市である。海岸埋立地には諸企業がぞくぞく進出し,のり養殖がさかんであった昔の漁村地帯の面影はすでにない。工場進出に伴って市内およびその後背地での人口増加は著しいが,そこで発生する各種の公害問題に対して,筆者らは地区住民の意識調査という観点から検討している。その結果の一部についてはすでに本誌上に,公害による被害の現状,公害発生時の住民の行動のありかたなどを中心として報告した。今回は地区住民が企業進出に対して抱いていた各種のイメージを種々の角度から検討したので報告する。

少年期集団における神経症のスクリーニングテスト

著者: 大山昭男

ページ範囲:P.472 - P.475

はじめに
 近年,中学生や高校生の神経症が,教育の面でも健康管理の面でも重要な課題となってきた。神経症は,当人からの訴えも少なく,そうとう進行するまでは他人も気づかないことが多いが,単に学力の低下や生活能力の後退のみならず,性格変調,精神病,犯罪,あるいは家出や自殺などの非行の要因にもなるだけに,早期発見の必要性が痛感される。
 筆者は,神経症の早期発見の試みとして,京都大学保健診療所長の宮田尚之教授創制のNeurosis Screning Test(N.S.T.)を行ない知見を得たので報告する。

講座 情報科学とその応用・4

臨床診断に応用された情報収集の実例—電子計算機とマイクロ・フィルム併用による病歴管理

著者: 岡島光治 ,   岩塚徹 ,   安井昭二

ページ範囲:P.476 - P.483

はじめに
 公衆衛生や疫学の分野において,種々の調査資料の占める役割はきわめて大きいものであるが,臨床の領域で,上記の調査資料に相当する診療情報,すなわち病歴(カルテ)の果たす機能も非常に大きい。現在入院中の,あるいは通院中の患者の病状や診療行為に関する記録を残しておくことは,診療担当者である医師や看護職員にとってぜひ必要であり,また法律でも規定されている。さらに通院や入院が終了した後にも,病歴の必要性は,同じぐらい,あるいはそれ以上ある。
 その第一の用途は,その患者がふたたび病院を訪れた時,前にどのような病気にかかっていたか,あるいはどのような手術をしたか,どの薬に過敏反応を示したか,(たとえばペニシリン・アレルギー)などを知ることは,診療上絶対に必要であり,またそういった情報から今回の病気の診断がつくことも多い。第二の用途は,臨床医学研究に病歴を役立てることである。臨床医学は診断学にしろ,治療学にしろ,たくさんの病歴のなかから因果律を演繹したものの総合といってもさしつかえない。したがって,病歴は臨床医学にとって最も大切な研究資料である。

厚生だより

厚生省に公害部発足

著者:

ページ範囲:P.484 - P.484

 近年,大気汚染,水質汚濁などの公害により生活環境が著しく悪化し国民生活にとってもはや看過できない状態となっており,国民の健康を保持し,生活環境を保全するために,公害対策をいっそう強力に推進することが急務となってきている。
 厚生省では,公害から国民の健康と生活環境をまもる見地から,環境衛生局の所管のもとに,公害防止施策を進めているところである。重大な社会問題となっている公害問題に対処していくためには,総合的な公害防止施策を策定するとともに,ばい煙,水質汚濁などに対する規制を強化し,また公害監視体制を整備するなど公害防止のための諸施策を充実強化することがきわめて必要となっている。

日本脳炎の防疫対策

著者:

ページ範囲:P.485 - P.485

 梅雨襲来とともに,今年も日本脳炎の流行期がやってきた。全国的に大まかではあるが,届出患者の年次的発生傾向のみならず,きめの細かい東北,関東地方のウイルス血清学的確認患者の年次発生傾向からみて,今年は流行年に当るというわけで,本年頭初の衛生主管部長会議,さらに重ねて防疫主管課長会議の席上で,その旨披露されるとともに厳重な防疫対策を実施するよう指示された。それを裏書きするかのように6月末日までに厚生省防疫課に入った都道府県からの報告によると,届出患者数はすでに60名を越え,昨年同期に比べ2倍以上という早いペースを示している。加えて憂慮される徴候として,6月6日長崎県でコガタアカイエカからウイルスを分離したが,これは昨年に比べ2週間早い。また豚のHI抗体陽性率をみると6月下旬,鹿児島,宮崎などで抗体価の高い豚がかなり発見され,これも例年より1週間は早い。ちなみに昨年の患者数は2,301人で,戦後では中ぐらいの流行であった。蚊の発生状況では,九州各地はカラカラの梅雨のせいか若干少ないが,宮城は例年に比べて多く,39年の流行年と同様の傾向とのことで,関係者を心配させている。
 日本脳炎の致命率は30%,事故率は60%と高く,後遺症も四肢のまひ,言語障害,白痴などと悲惨さは言語を絶するものである。加えて対症療法以外は著効を示す治療法もないので,予防対策に期待するところ大である。

ニュースの焦点

日本脳炎を予防するには

著者: 山下章

ページ範囲:P.486 - P.486

 また日本脳炎の流行期がやってきた。すでに先月の中頃の新聞に"日本脳炎今年は流行年"と警句している。それによると,「昭和30年頃までは1年おきに流行を繰返していたが,33年からはだいたい3年ごとの流行期をとるようになり,ことしはその流行年に当たること,昨年はウイルスの最初の検出は6月21日であったのに,ことしは6月6日に長崎県愛野町で採取したコガタアカイエカから検出され,昨年より2週間も早いこと,患者の初発が昨年は5月23日であったが今年は5月3日に愛知県の安城市で第一号が発生し昨年より20日も早い」などの理由をあげている。もともと日本脳炎は,瀬戸内海海岸の地方病であったものが,戦後全国的に流行するようになり,したがってその被害も大きくなった。
 日本脳炎にはまだ特効薬は発見されていない。そのために致命率は伝染病中最も高い。昨年は2,163名届出られ1,445名死亡している。死亡をまぬがれた者もそのほぼ半数は,大小の筋肉麻痺や脳神経症状が後遺症として残る。昭和22年から20年間の死亡者の合計は21,166名とばく大な数になる。この伝染病の病原巣については,学者によって必ずしも意見が一致してはいないが,媒介昆虫はコガタアカイエカを主とする蚊属であることは異議はない。だから蚊の発生を皆無にすれば,本病の発生はありえないことになる。しかし,下水道をはじめとする生活環境整備の遅れているわが国では,これは当分望めそうもない。

モニターレポート 岐阜から

岐阜県精神衛生研究会ひらかる

著者: M・K

ページ範囲:P.459 - P.459

 新緑の候とはいえ,連日の晴天で露ほどの雨もなく砂けむりにまきこまれる昨今である。隔月に開催されている岐阜県精神衛生研究会も今年に入り3回目,5月25日(木),午後1時から,今月は精神衛生センターの担当で開かれた。
 テーマは精神衛生センターの調査,研究活動を中心に演者4名によって発表された。同センターの中島所長は,昭和40年6月から発足した岐阜県精神衛生センターの展望と岐阜県における精神障害者の管理状況について述べられた。

ニュース

総合保健医療活動の実験—八丈島町立病院の活動と5人の若い保健婦

著者:

ページ範囲:P.471 - P.471

 羽田から空にあがって南へ291キロ,伊豆七島の南端に八丈島がある。面積68.33km2,周囲58.91kmのこの島に,昨春2人,今春3人,東京は世田谷の一偶から,都合5人の渡り鳥が住みついた。まだうら若い娘たちである。
 「とにかく,やりたいことは何でもやってみなさい。島をひっかき回してもいいですよ!」こんな魅力的なことばにまんまとひっかかった(?)娘たちは,しかし元気いっぱい,八丈の地に足を踏まえはじめている。この5人の娘,いわずとしれた公衆衛生の第一線の戦士,新米の保健婦たち,東京都立保健婦助産婦学院の卒業生である。

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新聞に拾う

ページ範囲:P.487 - P.487

食生活,食品衛生関係
 日本人の食生活はやはり米とみそ汁が中心 食糧庁で31日に発表。一回に米1合弱とのこと。(1日,毎日・朝)
 レモン飲料,6社に不当表示の排除命令 公正取引委員会が出す。(1日,毎日,朝日・朝)

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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