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特集 保健所活動30年記念特集 保健所活動30年史 周辺からの提言 保健所活動にこう期待する 社会福祉の立場から
保健所と地域福祉活動の接点—とくに社会変動との関連で
著者: 三浦文夫1
所属機関: 1社会保障研究所
ページ範囲:P.531 - P.533
文献購入ページに移動保健所活動が始められてから今年で30年とのこと,地域住民の保健と衛生のために,たゆみない努力を重ねてきたこの分野の伝統と経験の厚みを今さらのように感じる。ひるがえって同じく地域住民の生活と福祉の向上を目標とする社会福祉の行動体系――とくに地域福祉活動――を考えると,その歴史はかなり浅いと思われる。もちろん戦前でも,方面委員制度とか,セツルメント(隣保事業),農村社会事業などのすぐれた経験がないわけではない。しかしそれらは「点と線」のようなもので,「面」としての広がりと展開に欠けていたり,特定問題地域を対象とし,福祉に欠ける住民の援護に焦点が合わされていた。したがってそれらの活動は,現在問題になるような普通の地域における一般住民を対象として,その地域社会全体の福祉の向上をはかるものとは,若干異なった意味あいをもっている。
もしこのような意味で,地域福祉活動を考えるとするならば,その活動が制度化されたのは,1951年の全国社会福祉協議会の設立にその契機をみることになるかもしれない。もっとも全社協の活動を仔細に検討すると,若干の例外はあるが,地域福祉活動の本格的な展開はさらに数年後のことである。したがってその経験と歴史は,たかだか10年前後ということになり,地域住民と結びついて,地域のヘルス・センターとして30年の歴史をもつ保健所活動に比較すれば,それはきわめて短いものである。
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