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特集 明治百年と公衆衛生
日本医療百年史序説
著者: 川上武1
所属機関: 1杉並組合病院
ページ範囲:P.11 - P.16
文献購入ページに移動日本医療百年史は"明治百年"をどううけとめるかによって,その内容は異なってくる。竹内好によって口火をきられた"明治百年"の問題は,竹内の意図と反していまや完全に国家ペースで展開されいろいろと記念行事が計画されており,竹内もその問題提起を徹回せざるをえないような状態である。このような"明治百年"問題にどのような姿勢をとるかが,日本医療百年史の評価を規制してくる。
まずわれわれは"明治百年"を謳歌するか,挑戦するかを明らかにしてかからなくてはならない。この点をあいまいにしておくと,"明治百年"の出発点となった明治維新の評価,その後の進展について科学的な判断をくだせないばかりか,"明治百年"の反省も単なる回顧趣味か,現体制の補強工作に終ってしまい,そのなかから現状の矛盾・混乱を解決するための将来の展望を把握できなくなる。謳歌する立場からは,日本医療がわずかの間に近代化に成功し,いろいろの困難はあったにしても,いまや世界的水準に達したという成功談に終るのがおちである。たしかに歪みという点を無視すれば日本医療の近代化は速かったし,現在の日本医療の水準は世界的レベルに近いということができる。過去百年間の疾病構造の推移,医療技術の進歩,近代的医療の普及などをとってみても,日本医療が百年間に大きな進歩をとげたことは否定できない。
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