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特集 明治百年と公衆衛生 民間活動
民間の衛生運動史—その素描
著者: 水野洋1
所属機関: 1阪大医学部衛生学教室
ページ範囲:P.34 - P.37
文献購入ページに移動衛生運動というものをどう理解するかは別として,まず"愛の種痘医たち"の活動から述べなければならないだろう。鎖国の,しかも封建専制時代において,蘭方医たちが流行する痘瘡に対して,牛痘接種法による予防措置の確立のためにどんなに努力してきたことか。それらの詳細な事実については浦上五六氏の"愛の種痘医"に詳しく述べられている(医学史研究第6号より断続的に掲載中)。
長与専斉の祖父俊達が,大村藩において人伝痘苗の永続普及をはかり自宅種痘の許可を得て種痘料を安くさせていく活動などは,大村藩政の一端をになうものであったとしても,藩民の協力,理解なしにはやりとげられるものではなかったはずである。したがってここに,民間の衛生運動の一つの出発点を認めたいと思う。こうした"愛の種痘医"たちが痘瘡から生命を守る役割を果たしてきたが,一方この時代,飢死寸前の人たちや飢え死にする多くの窮民があったことも事実である。
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