icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生32巻10号

1968年10月発行

雑誌目次

特集 Health Manpower

Health Manpower問題の国際的動向

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.386 - P.391

問題の背景
 第2次世界大戦の後,いわゆる福祉国家welfare stateを志向する新しい時代の流れの中で,世界の各国が当面した国民保健の共通の基本的な課題は,いわゆるHealth Manpowerの開発確保である。すなわち先進諸国においては,人口の都市化・老齢化・死因・傷病像の質的変化と医療技術のめざましい進歩,教育水準の向上による保健に対する国民の関心の増大,病院医療の高度化などによって,医療・保健サービスに対する需要が急激に増大し,複雑化した半面,医療・保健などに従事する各種の技術者は,量的にも質的にもこれに対応することが至難となってきた。この問題はそれぞれの国の社会体制によって,その困難さに質的な差はあるが,医療サービスに対する需要の増大と医療技術の進歩の決定的なすう勢が共通であるため,社会主義の諸国にとってもきびしい問題であることには変わりはなかった。また新興独立諸国においては,政治的独立をかちとったとはいえ,生活水準の低位,疾病と不健康の蔓延などの国民保健の厳しい悪条件に加えて,医師をはじめ医療・保健の専門的技術者の絶対数が極度に不足していることも周知のとおりである。
 世界人類の健康の理想実現を掲げて戦後設立されたWHOが,その20周年に当たる1967年の世界保健デーの主題を"partners in Health"と定め,医療・保健にとりくむ人々の活動の重要性と,その利用に対するすべての人々の理解を呼びかけ,またその働き手の厳しい不足の現実を全世界に訴えたことも,この間の厳しい事情を反映したものであった。この問題について筆者はすでに本誌第29巻第8号(昭40. 8)に"公衆衛生技術者養成の国際的動向"と題して,国際的にみた公衆衛生技術者の諸類型・教育訓練・身分資格・需給などの諸問題を,西・東・南の諸国に大別して紹介した。しかし,いわゆるHealth Manpowerの問題はその後の激動する世界の動きの中で,いっそう深刻化しつつあるので,本稿では前記の報告との重複は極力避けて,主要な各国における最近の動向などについて簡単に紹介することとしたい。

川崎市における医師不足対策

著者: 佐々木忠正

ページ範囲:P.392 - P.393

医師の絶対数が足りない
 保健所医師の不足が訴えられて久しい。これが打開策として,種々論じられてきたが,医師全体としての絶対数が足りないとして"もっと医師を養成せよ"と主張する村中氏らの論がある。昭和29年(病床数56万5000床,医師数8万9885人)を100として昭和38年には病床は74%(98万34床)医師は20%(10万6512人)の増で,医師の増加率が病床の増加率に遠く及ばない(筆者の試算による昭和40年末の病床と医師の増加率のアンバランスはさらに激しく,90%と22%となっている)
 また医療需要の著しい増大が,いっそう医師の不足に拍車をかけているとし,医師養成の増加を声を大にして叫ぶべきであると結んでいる。一方,昭和41年は大学受験者急増対策の一環として,全国大学の医学部においても定員増加が行なわれた。文部省大学学術局大学課の発表で,昭和41年5月1日現在の医学部学生定員は3820となっていて,これは前年度の2925に対して30%強の増で,一歩前進ではあるが,積極的な医師増強策ではないのが残念である。

地方衛生研究所の医師不足

著者: 児玉威

ページ範囲:P.394 - P.398

地研医師不足の現況
 近時,わが国の産業の発展と生活水準の向上,公衆衛生と医療の進展,医療技術の進歩による業務の専門化などの要因により,医師に対する需要の増大は著しいものがある。これに対し,医師の供給の伸びは,はなはだ低調であって,医師の不足は各方面に大きな問題を投げかけている。
 地研に勤務する医師については,もともと保健所のような予算定数というものはなく,多くの府県では地研技術職員の総わくのなかに包含して考えられている。したがって,まず地研活動における業務分析,地研のあるべき姿などから医師の必要定数をわり出し,これを標準として医師の不足を論ずるほかない。

保健所医師の不足

著者: 古川武温

ページ範囲:P.399 - P.401

 保健所医師は,本年3月末についに1500を割り,1497人となった。
 保健所医師の不足は,すでに保健所創設のころからいわれていたことだが,1500人という数は,公衆衛生行政をになうに必要とされる行政医官(仮称)の最低限度数を割ったことを示す。国および地方における保健所医師充足対策は,部分的には将来を見通した長期的な対策もあったが,総体的には後手,後手に回って,ついにここまできた感がある。この機会に,過去の経過をふりかえり,いささかの私見を加えてみたい。

Health Manpowerに意見する

医師の偏在をなくせ

著者: 田中正四 ,   百々栄徳

ページ範囲:P.402 - P.403

医師の地域的な偏在
 最近,わが国では医師不足が各方面で訴えられているけれども,昭和41年末届出の速報によると,11万0759入であり,人口10万対111.8である。これは,昭和31年末の9万6139人,人口10万対106.5に比べて1万4620人も増加しており,人口増加率よりも上まわった増加を示している。欧米先進国に比しても,著しく低い人口対率とも思われない。医療の近代化や生活水準の向上に加えて,人口の老齢化などによる医療需要の増大があるにしても,医師総数としてはそれほど医師不足とは考えられない。構成のうえで,従業地の地域的な偏在,あるいは従業の業種的な偏りが顕著になりつつあることが,医師不足が訴えられる最大の原因と思われる。
 府県別の届出数をみると,1位の京都府は人口10万対172.9で,46位の埼玉県の71.9の2.4倍もの値を示しており,府県間の差異があまりにも大きい。ここ10年間の動きでみると,大都市がある府県およびその周辺の府県や,医科大学のない県が人口対率の減少もしくは低い増加率を示している。大都市およびその周辺の府県では,医師の増加が,あまりにも急激な都市人口増加に歩調が合わなかった結果であり,将来,徐々に改善されるものと期待され,また人口対率は減少したといっても大都市では全国平均をかなり上回っており,問題はそれほど深刻ではない。やはり問題は,医科大学のない県にあると言えよう。中には佐賀県のように,10年間で医師実数は30人も減少したのに,人口10万対率は97.4から106.7と逆に増加した県もあるが,この人口減少傾向は,後述の無医地区問題ともからんでいっそう深刻な問題を惹起するものと思われる。医師不足の切実さから,医師養成数を増加すべきだという意見がかなりあるけれども,既設の大学の定数増や,大都市への新設では,現状の打開には役だたないことは明らかであり,医大のない県への新設,しかもこれらの県は財政的にも豊かでない県ばかりであり,国立もしくは医療保障の見地からも地区の特殊事情を十分考慮した優遇措置を講じたものとすべきである。

誇りある病院の専門医を

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.403 - P.404

Health Manpowerの病院での不足
 Health Manpowerの不足は各方面から叫ばれているが,病院からの声は特に強い。そもそも医学の進歩や文化・社会の進展の内には,医療需要を増加する要因と減らす要因があるはずである。将来予防医学の発達によって疾病が減少し,自動検査機械とcomputerの結合による自動診療装置や,遠隔診断方式の開発などが,医療従事者の必要数を減らす時代がこないとは限らない。しかし,現実にはこの方向への力はまだまだ弱く,逆に文化の発達,所得の増加,知識の向上など,社会の進展は急激に医療需要を増加させている。また医学の進歩は医療の分野をひろげ,医師その他の時間と手間をとる医療技術を,ますます増加させているのであるが,それらを引き受けるのは主として病院であるから,病院がますます多くの医療従事者を必要としてきている。そもそも近代病院では,医師の専門分化のみならず,各種の新しい専門職種群がふえてきているのが1つの特徴であって,これらすべてを総合的に考察する必要がある。しかし,医師はやはりその中心であり,紙数の制限もあるので,医師不足問題を中心に考えてみよう。
 人口10万当たり医師数は昭和40年で111.3でこの数はわずかではあるが年々増加している。

見逃がせない精神障害者の治療中断

著者: 高臣武史

ページ範囲:P.404 - P.405

精神衛生活動の重要性
 公衆衛生活動で,医療従事者の不足が強く叫ばれている。その中でも特に深刻なものの1つに,精神衛生活動の領域がある。
 精神衛生活動の重要性は,近年,特に問題になってきた。それは狭義の精神病対策ばかりでなく,高齢化,家族制度の変化,都市化や人口の過密化,産業機構の変化などに伴う社会構造の変化から,老人問題,児童の教育や青少年問題,家庭や職場における対人関係,などの精神衛生問題がクローズアップされてきたからである。事実,離婚や家出,自殺,非行犯罪,アルコールや薬物嗜癖などの社会病理現象の予防対策が,緊急な課題になっている。

生かしたい医師の主体性

著者: 安井義之

ページ範囲:P.406 - P.407

産業医の立場から
 敗戦の廃墟から立ち直って,今日の隆盛をみるに至ったのは,わが国の豊かなすぐれた労働力によったことは,多くの人が等しく認めるところである。すぐれた労働力は,すぐれた健康からしか生まれない。働く人達の健康を守り育ててきたのは,企業内のHealth Manpowerに他ならない。高度産業社会に生き残っていくためには,労働力に頼るほかに道はない。ところが,現在すでに労働力の先行きに不安の兆がみえ始め,特に若年労働力,技術労働力の不足は著しい。自然科学の思考と,技術で労働力の基盤である健康を培う役割をはたすべき事業体内のHealth Manpower現状は,果たして満足すべきものだろうか。

現状打開のために—保健婦の立場から

著者: 上村聖恵

ページ範囲:P.407 - P.408

保健婦の現状
 昭和16年,保健婦規則により初めて保健婦が誕生し,同23年,保健婦助産婦看護婦法の制定により,法的に飛躍的な制度ができてから満20年になる。この20年の間に,全国の保健所網が整備され,同時に,公衆衛生の1分野を受持つ保健婦も,充足されてはきているものの,現在ほど多くの問題を孕んでいる時はないと思われる。
 地域を担当している保健婦を所属別にみると,保健所保健婦6012人,国保市町村保健婦5994人,開拓保健婦177人合計1万2183人(昭和41年末調べ)で,保健婦1人の平均受持人口は8141人である。しかし,これは全国の市町村で人口・面積・交通事情,あるいは地域のneedなど考えられた配置によるものではなく,あくまでも平均の受持人口である。東京・大阪のように,平均1万6000人以上のところもあれば,山形のように3000人ぐらいの県もある。また全国3569市町村のうち,1人も保健婦を設置していない市町村が938(昭和40年調べ)もある。その未設置の理由をみると,市町村側に採用の意志はあるが希望者のない場合と,全然採用の意志のない場合がある。前者の場合の理由の大部分は辺地のため,待遇が悪い,辺地である上に待遇が悪い,によるものである。全然採用の意志のないもののうちでは,予算的措置ができないものがほとんどで,わずかではあるが保健婦設置必要なしもあった。

保健所職員は全員スカウトたるべし—農村保健所の立場から

著者: 黒田学

ページ範囲:P.408 - P.409

 村山保健所は3市1町を管轄するR4型保健所で,人口は全国平均なみ,面積は全国平均の6割増である。職員は36名,所内の医師は小生のみである。

Manpowerとして医師にのぞむ

著者: 青柳精一

ページ範囲:P.409 - P.410

 ユネスコのmanpower問題に,指導的役割を果たしているアメリカのハービソン(プリンストン大教授)とマイヤーズ(マサチューセッツ工科大教授)は,世界75カ国の人的資源開発レベルの統計的指標として,7つの尺度を使っているが,その1つに人口"1万対医師および歯科医師数"をあげているのには,興味をひかされる。
 これまで人口対比医師数は,もっぱらその国の衛生状態の側面を示す尺度として扱われてきたものだが,それを一歩すすめて,上述のような尺度としてとらえようという発想がおもしろい。

神奈川県内の医療施設の医師不足の現状—医療施設管理者の意向調査による医師の必要数

著者: 須川豊

ページ範囲:P.411 - P.413

 医師,看護婦など医療従事者の不足は,各方面で叫ばれているが,どれだけ不足なのかは,必ずしも明確でない。これを明らかにすることは,将来の養成計画の基礎となるので,各国で試みられている。種々の考え方があり,社会保障制度も関係するので,容易でない。わが国でも医師不足は大問題であがる,この点について厚生科学研究費による研究以外は格別の試みも行なわれていない。
 神奈川県では,この1方法として,医療施設の管理者の意向を調査した。この調査は,指定統計による医療施設調査の昭和42年12月末現在の医療施設を対象とし,関係各方面の協力を得て行なったものである。

人とことば

国民の心身の健康を想う

著者: 三浦運一

ページ範囲:P.383 - P.383

 今から23年前をふり返って,終戦当時の混乱と窮乏の状態を思うと,よくもわが国が今日のように復興したものだと思う。最近数年来の状態をみると,復興どころではなく,科学技術の革新とそれに基づく産業・経済の発展により,国民生活はわが国の歴史にみられぬほどの変貌をなしつつある。
 その間,生活水準の向上と医学・公衆衛生の進歩により,国民の衛生状態は,かつて経験しないほど大幅に改善されたが,一面この急速な産業・経済の高度成長により,国民の健康福祉上新しい種種な障害が生まれてきた。すなわち,戦後まもなく起こった都市のし尿処理難に続いて,下水・産業廃水による河海の水質汚濁,工業の発展に伴う大気汚染,各種の工業中毒,都市の人口過密と住宅問題,交通難と交通災害の激増など,都市の環境悪化が急速に進み,農村では農業振興に伴う農薬の危害などのほか,人口の流出による労働力の不足と労働過重,地域によっては人口の過疎化が大きな問題となっている。

談話室

医師不足に想う—特に保健所医師について

著者: 北博正

ページ範囲:P.384 - P.385

 公衆衛生従事者の質と量の問題をとりあげるといっても,あまりに広範で,とうてい許されたスペースで扱えるものではないので,そのうち,公衆衛生従事医師,特に保健所勤務医師に限定して考えてみよう。
 例年,秋の公衆衛生学会に関連して開催される,"衛生学公衆衛生学教育協議会"の席上で,厚生省当局から,保健所医師充足についての協力方をたのまれ,かつては保健所医師の不足は,この協議会のメンバー,すなわち医育機関で,この科目を担当している教授たちの責任であるかの言辞を弄し,某大先輩教授に一喝された役人もいたくらいで,その不足の程度のひどいことは,よく知られている。

講座 疫学・6

疫学調査における検査室の役割

著者: 甲野礼作

ページ範囲:P.414 - P.419

 人・物の交流が盛んな現代社会では,疫病の流行調査,防疫面でLaboratory epidemiologyの意義がますます高まっている。その主役である検査は何をなすべきか--実際の業務内容,あり方などを通して解説する。

特別レポート

第2回国際保健会議より

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.420 - P.424

 第2回国際保健会議(International Health Conference)が去る8月26日から30日までの5日間,コペンハーゲンにおいて開催された。この会議はイギリスの王室保健協会(The Royal Society of Health)の主催するもので,同協会は1876年に設立され,1965年現在,約3万4000名の会員を擁し,会員は医師のみでなく広く保健衛生領域の研究教育,行政などに従事する各職種を含み,またイギリスを中心に世界各国から多数が加入しており,この種の学術的団体としては世界最大のものといわれる。今回の会議には44カ国および国際機関,団体から約430名が参加し,日本からも保健所長を主とする23名が出席した。筆者も,日本公衆衛生協会および公衆衛生学会のご好意により,これに参加する機会に恵まれたので,その概要をお知らせしたい。
 会議の主な内容は,2時間単位の8つのシンポジウムであり,それぞれ3名の主報告者が30分ずつ報告の後,約1時間を追加討論に当てる方式である。

非常時の保健活動(3)

非常時におけるLocal Levelの保健と医療サービスについて

著者: ,   森本忠良

ページ範囲:P.425 - P.426

被災地San Nicolas,Agoncilloへ
 小生は,フィリピン現代史における最悪の悲劇を経験した,Batangas州の首都Batangas町のMunicipal Health Officer(MHO)である。
 過去数週間,高温のために休息状態であったTaal火山は1965年9月28日の早朝,突然に震動とともに悪化して火と煙と溶岩を噴き出し,数千の家族に一時,家を失わしめ,数百人を永久にその住家から追い出した。MHOとして,住民の健康と福祉に関してまっ先に頭にひらめいたことは,災害の状況に勇ましくたち向かうことと,被災者に役所が手をさしのべうることがいかに少ないかということであった。Provincial Health Officer(PHO)の承認を得て,保健所職員は初療用医薬品を持って,Taal湖岸にあってTaal火山に面したSan Nicolasの町へと進んだ。San Nicolasに到着してみると,町は荒廃し,住民はより安全な場所に避難していた。次にAgoncilloを訪れたが,そこもTaalの湖岸にあり,San Nicolasと同様の状況であった。その朝は被災者の救助については何らなすところがなかった。PHOと州の何人かのMHOからなる一行はTalisayに向かい,私はBatangasに戻って待機し,次の指示を待つように命ぜられた。

資料 地方衛生研究所における公害業務の現状と問題点

その1 地方衛生研究所の立場から—公害行政における地研の役割

著者: 加地信

ページ範囲:P.427 - P.429

 今日,地方衛研は種々の面で発展の時期にある。試験所の時代から研究所になり,また行政と非常に密接ないわゆる科学行政の中核的存在になりつつある。この時期に公害問題も衛研の1つの大きな仕事になってきた。この問題に関して当の衛研から,国の行政の担当者の立場から,また地方行政の責任者である衛生部長から発言していただき,3回にわたって連載する

研究

牛乳飲料のパターンの研究(第1報)

著者: 園田真人 ,   和田幸枝

ページ範囲:P.430 - P.432

はじめに
 産業としての酪農は,ヨーロッパにおいては13世紀よりはじまり,18世紀の農業革命でほぼ確立された。
 日本においては,牛乳を飲用に供した歴史は千数百年であるというが,産業的な乳牛飼養がはじまったのは,1887年(明治20)であって歴史は古くない。バター製造の開始も1925年(大正14)であり,昭和29年に酪農振興法が制定され,牛乳の集中化が行なわれるようになって,ようやくわが国の酪農は,一段階に到達したといえよう。以上から,わが国の栄養改善問題を論議する場合,牛乳は大きな比重を占めるようになってきたが,牛乳飲用の調査研究は,いまだ少ない。

感染源を究明した腸チフスの小集団発生

著者: 中川喜幹

ページ範囲:P.433 - P.435

はじめに
 保健所の行なう防疫活動のうちで最も重要なことは,伝染病患者の発生報告をもとに,敏速かつ綿密な疫学調査を実施することにより,感染源および感染経路を明らかにし,早期に感染源を除去するなど続発を未然に防止することである。
 当保健所管内には,約10年前から時々腸チフスが集団的に発生しているので,着任以来その発生に注目していたところ,たまたま昭和42年に入り散発的に患者の発生が続いたので,疫学調査を行ない,小規模の発生のうちに感染源を究明し,これを早期に除去し住民の不安を未然に防止することのできた事例を経験したので,その概要を報告する。

厚生だより

臓器移植法案制定準備委員会

著者:

ページ範囲:P.437 - P.437

 昨年12月に,南アフリカ連邦共和国で,世界で初めて心臓移植が行なわれて以来,各国ですでに30余例の心臓移植が行なわれているが,日本においても,初めての心臓移植が8月8日,北海道立札幌医科大学胸部外科和田寿郎教授ら,約20人のスタッフにより行なわれた。

抄録

大気汚染ならびに経済状態と,全死亡率および呼吸器系死亡率との関係,二酸化硫黄/地域医療計画への疫学的方法の活用

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.398 - P.398

 1959年から61年までの2年間にわたって,エリー地区において,21の測候所が調査した大気汚染ならびに経済状態と,全死亡および特定の呼吸器系疾患による死亡との関連性を検討して報告した。それによれば,50歳以上の白人では,大気汚染と全死亡率との間に,正の相関があるとの結果をえた。さらに,経済状態とは逆の相関をえた。粒子様の汚染物と男の慢性呼吸器疾患との間にも,同程度の相関があった。このほか,経済状態・全死亡・気管支・気管・肺腫瘍と粒子様汚染との関係も追究された。
 この論文は,同じ地区について,硫黄酸化物による汚染と経済状態,全死亡および特定呼吸器系疾患による死亡との関係を追求している。その結果,硫黄の濃度と50歳以上の白人男子の全死亡および気管支・気管・肺の腫瘍との間には相関は認められなかった。しかし,経済状態を5階級にわけた下2階級の住民においては,慢性呼吸器疾患と硫黄濃度との間に正の相関が認められたという。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら