icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生32巻11号

1968年11月発行

文献概要

特集 保健・医療と公的責任 第9回社会医学研究会・主題報告と総括討議 特別講演

現代の貧困と自治体—政治経済学と保健衛生問題

著者: 宮本憲一1

所属機関: 1阪市大・商学部

ページ範囲:P.489 - P.491

文献購入ページに移動
保健衛生問題のとりあげ方
 保健衛生問題は,最近,近代経済学の中で脚光をあびつつある。たとえばアメリカのS. J. Mushkinの "Health as an Investment" という論文が1例である。これは1961年に行なわれた "Capital Investment in Human Being" というテーマの会議に提出されたものである。これまで近代経済学は,物的な諸関係を分析の中心にしてきたが,宇宙開発でソヴィエトのめざましい発展に刺戟され,人間の価値の評価に目をむけてきたのである。中でも有名なのが,T. W. Shultzの教育投資論である。Shultzは,国民所得の増大は物的設備の生産性の増大によるだけでなく,人的能力の増大にあることを主張し,人的能力を増大させる教育費を消費的支出でなく,投資的支出と主張したのである。先のMushkin論文もShultz理論にたち,人的能力を維持開発,あるいは補填する保健衛生費を投資的支出と考えているのである。そして,労働者が疾病その他の健康障害によって失う価値の損失に比べて,保健衛生費が小さければ,保健衛生 "投資" による "収益" があると考えているのである。
 このような近代経済学の新しい理論は,人間を経済学の中にひきこむことによって,それを物的なものに還元する危険をもっている。たとえば,健康障害の中には貨弊価値ではかれないものがあり,比較計量されるのはその一部である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら