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特集 保健・医療と公的責任 第9回社会医学研究会・主題報告と総括討議 特別講演
社会保障の視点
著者: 小倉襄二1
所属機関: 1同志社大・社会学
ページ範囲:P.492 - P.494
文献購入ページに移動保健・医療と公的責任の主題は,社会保障のあり方と密接に関連している。この関連のしかたは,単に,制度的・技術的なものではない。国民の健康と暮しを守るための"構造"として,その相互連関と,公的責任を主軸とするかかわり方が問われているのである。
その意味において,まず,社会保障の現状とその位置を明らかにしておく必要がある。"生活の体系"という考え方がある。生活設計と言い換えてもよい。この次元におけるニードと,社会保障のあり方を結びつけて理解することが基底になると思う。わが国の現実では,"豊かな社会"幻想のなかで,価値の激しい転形が起こりつつある。これは,私的関心を生活発想の中心にすえた"私的生活主義"ともいえるものである。最近の労働者の政治―生活意識の諸調査にみられる傾向にも,この私的生活主義があらわな形で表明されている。しかし,このような私的生活主義による生活の再生産―流れは,きわめてもろく不安定なものである。高密度経済社会といった表現の背面には,きびしい合理化や緊張,公害に集中表現されるような生活基盤の破壊も進行しているのである。特に傷病によるくらしの不安と崩壊は,さしせまった課題を形成する。公的責任への明確なイメージと,そのような生活過程に深くくいこんだ私的発想の鋭いギャップがあり,社会保障の暮しにとって,持つ意味と位置のみきわめがきわめてあいまいである。
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