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研究
福島県一般住民のトキソプラスス抗体保有率について
著者: 鈴木俊夫1 逢坂頼一2
所属機関: 1新潟大学医動物学教室 2福島県立会津若松総合病院
ページ範囲:P.230 - P.234
文献購入ページに移動トキソプラスマ(以下トキソと略)症の病原体であるToxoplasma gondiiは,Nicolle et Manceaux(1909)によって北アフリカでヤマアラシの一種Ctenodactylusgondiiからはじめて検出された。以来,人間を含め動物界に広く証明され,種々の臨床症状との関連が論議されている。さらに,最近の血清学的な検索から判明したことは,トキソは人および動物にかなり濃厚に感染しており,その中で症状を発現してくるのはごく一部で,その他は無症状に経過する,つまり不顕性感染者であるという事実である。私どもは臨床において,トキソに関係があると思われる特有な病像をそなえ,しかも高い抗体価を示すような症例をしばしば経験することを2,3の機会に報告し,さらにこのような経験を通して私どもは,福島県でもトキソ感染がかなりの高率に存在する可能性があると考えてきた11)12)。しかし,東北地方,とくに福島県では池田(1961)3),富永ら(1961)14)が行なったトキソプラスミン皮内反応調査報告があるのみで,一般住民について系統的に実施された疫学的調査報告はみられない。
今回私どもは,福島県内の感染実態を追求する目的で広域にわたって調査してみたので,その成績について報告する。
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