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特集 都市化のなかの保健活動
都市化による地域の変貌と保健問題—対策と活動のための方向づけ
著者: 柏熊岬二1
所属機関: 1大正大・社会学
ページ範囲:P.269 - P.274
文献購入ページに移動都市化(urbanization)というコトバは学問的な説明概念としてだけでなく,一般用語としてもよく使われるようである。もっとも,その意味するところはまちまちであって,場合によってはまったく性格の異なるものを同じ語で表現する例さえないではない。
では都市化とはいかなる内容をもっているのであろうか。一般的な用語としての意味はさておき,学問的に使われるさいにも,さまざまの概念が付与されているが,大別すると現象的,形態的な変化をいう場合と,構造的,体制的な移行をいう場合とがある。人口が増加したり,非農的職業の比率がふえたり,生活様式の合理化が進んだりする例は前者であるし,社会的分化が際立ってきて,機能集団が優越し,匿名化が進んで大衆社会としての構造特質をもつようになる過程は後者の性格をもった都市化である。より端的にいうならば,前者は非都市的な地域,つまり村落が都市的な様相を備えた地域に変貌していく過程をいい,後者は地域生活の変化というよりも,構造的基盤の推移を問題にする。したがって,前者の都市化はおもに農村なり漁村なりが都市的な性格をもつに至る道程に使われ,後者は村落の都市化というよりも,むしろ都市の都市化について使われることが多い。
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