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油症—米ぬか油事件
著者: 倉恒匡徳1
所属機関: 1九大・公衆衛生学
ページ範囲:P.626 - P.631
文献購入ページに移動昭和43年6月以降10月10日までに,九州大学医学部皮膚科外来を,痤瘡様皮疹を主訴として,爪の黒変,毛孔に一致した黒点,皮膚色の変化,眼粘膜の充血,眼やに(マイボーム腺分泌過多)などを伴う4家族の患者13名が訪れた.同科においては臨床所見から塩素痤瘡が疑われ,その家族発生と食用油の使用状況から,油に起因するものではないかと考えられた.10月4日に患者から大牟田保健所に届け出があり,患者の使用したライスオイルの分析が依頼され,同月10日にはこれら"油症患者"の発生が新聞報道された.つづいて10月14日,九州大学医学部,薬学部,福岡県衛生部合同の研究班が組織され,同月19日には九大農学部,工学部,生産技術研究所の専門家と,久留米大学医学部公衆衛生学教室の参加を得て,研究班(班長勝木司馬之助)は臨床,疫学,分析の3部会に強化編成された.疫学部会は九大公衆衛生学講座,衛生学講座,久留米大公衆衛生学教室,福岡県衛生部,北九州市衛生局,福岡市衛生局,大牟田市衛生部を構成員とし,著者はその責任者としてこの特異な疾病の原因究明に参加したので,以下疫学部会の研究成果の概要を述べるとともに,問題点について考察を加え,ご批判を得たいと考える.なお上記3部会の研究成果は,すべて報告されているので,疫学的研究の精細についても引用文献1を参照されたい.また他県の患者については,特にふれない.
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