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特集 公害問題—その新しい考え方
公害対策の国際的比較
著者: 橋本道夫1
所属機関: 1厚生省環境衛生局公害部公害課
ページ範囲:P.88 - P.93
文献購入ページに移動公害対策基本法は日本の公害行政の原理・原則・仕組みを法律として規定している.国際的にみてこのような法形式のものは,フランスが日本でいう公害のみならず,産業活動に伴う近隣への危険や,不衛生(含ねずみの害)な環境を排除するための基本法を制定しているものがあるのみである.西ドイツの営業規制法と民法に根拠をおいた近隣への権利の侵害の規制は,日本の純粋な行政法の基礎としての基本法とは別の意味での基本法の性格を持つものと言えよう.これは営業の権利と市民の権利についての関係を,相互に規定しているものであり,これを行政上実施に移すための大気汚染防止法が,保健省所管の法律として制定され,その実施は州法によるという方式をとっており,これは連邦形態をとっているドイツとしての取り組み方を示している.イギリスの場合には,公衆衛生法の中に制定法による生活妨害の規制(Statutory Nuisance)の規定があり,それに基づいて大気清浄化法や騒音防止法が制定され,またアルカリ事業等規制法との関連をつけている.これは市民の生活妨害の防止という基本的立場から,公衆衛生の問題として順次とりあげていったイギリスとしての,立法および行政施策を示している.
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