特集 60年代から70年代へ
成人病—循環器疾患について—1960年代の回顧とその評価
著者:
小町喜男1
所属機関:
1大阪成人病センター
ページ範囲:P.412 - P.415
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1960年といえば,私どもの所属する大阪成人病センターが1959年9月に設立されて,ようやくその第一歩を踏み出した時にあたる.そして,そのセンターの設立第一期は,成人病のうちでも循環器疾患を中心として運営していた時期である.このことからもわかるように,60年代のはじめは循環器疾患対策が従来からの一部の研究的な動きとは別に,行政的にも具体的な対策に踏み出そうとしていた時期である.各都道府県でも,そのもっとも進歩的なところは,成人病センターを設立したり,主要保健所にセンターを附設したりした.また官公立病院にも高血圧センターが設けられた.さらに,わが国の各地の多くの保健所に心電計が配置され,地域住民を対象とした高血圧検診が実際に計画され,行なわれるようになってきた.このことからみる限り,まさに循環器疾患対策は順風を満帆に受けて勢よくすべり出していくようにみえた.そして10年たった.実際はどうであったろうか.
1960年代を終った現時点では,循環器疾患対策は行政全般としてみた場合は,1960年のはじめのスタートの時と決してその位置を大きく変えていない.すなわち,スタートの時にもっていた問題の多くはそのまま解決されずに残り,また,循環器疾患対策として広く一般化されるという方向にはあまり進んでいない状態である.