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研究
環境汚染の総合評価に関する一試案
著者: 西田耕之助1 石川義紀1 鈴鹿孝1 佐々木雅一1 上田順一2 山口和朝2 服部定治2
所属機関: 1京都大学工学部衛生工学教室 2京都市衛生局公害課
ページ範囲:P.563 - P.572
文献購入ページに移動国民生活審議会1)は,わが国の生活環境の整備が著しく遅れているうえに経済の高度成長に伴う環境の劣化が著しく,国民生活の安定向上に由々しい問題を提起している.それゆえ各種の公害をはじめとする生活障害の対策を応急策から予防策へ転換させるべきであると主張し,生活環境改善の窮極は①安全で,②健康的で,③能率的で,④快適な生活の場の実現であると述べている.しかし,わが国の現状はこの4条件で総括される望ましい生活環境2)とまさに対照的な姿となりつつある.すなわち,これまでのように都市の発展と生活水準の向上が対応する関係は成立し難く,むしろ都市公害と呼ばれるさまざまの生活阻害が常態化している.また,住民側では「マイホーム主義」に象徴されるごとく近隣とのゲゼルシャフトが崩れてしまっており,これらのことから創造的で人間性に溢れた都市像への発展が全く閉されようとしている.これにたいして種々の打開策が各方面で叫ばれているが,多くは応急策に他ならず長期的展望に立脚した抜本策の推進はほとんどみられない.このようなところに積年のわが国施策ならびに国民性の特色が窺われ,将来の禍根となるであろうことは否定できない.都市環境の抜本的改善においては望ましい都市像の明確化もさることながら,各都市の特殊性にもとづく現状把握と居住者の意識をも含めた生活環境としての適正な評価が大前提となることは当然である.
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