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特集 ニュータウン
生活の場としてのニュータウン—主として住民生活の面から
著者: 中村八朗1
所属機関: 1成蹊大学文学部都市社会学
ページ範囲:P.592 - P.598
文献購入ページに移動イギリスの例に倣った「ニュータウン」という名称で大規模住宅団地開発の動きがわが国で始ったのは昭和30年頃に遡る.昭和30〜35年にかけて東京都下日野町(現日野市)に造られた多摩平ニュータウンはそのような動きの初期のものであったが,単なるベッド・タウンではなくてニュータウンであると盛んに強調されていたことを記憶する.
従来大都市周辺に設けられた住宅団地がアーバンスプロール(市街地の無秩序な拡大)をもたらすにすぎなかったことの反省に立ち,ニュータウンの場合は大規模な計画的開発によってそのような拡大を規制するとともに,大都市に流入する人口をそこで食い止めることが重要な狙いであった.そのためには単に住宅だけでなく,企業誘置によって居住者に職場も提供することが必要と考えられていた.しかし多摩平ニュータウンの場合は,実際には職場提供の考慮が払われておらず,したがって結局はベッド・タウンに終るという批判も加えられていた.これは多摩平に限らず,ほかの地域でその後造られたニュータウンの場合にも同様である.この点からみると,わが国でいわれるニュータウンも単に大都市地域周辺の大規模住宅団地と称して差し支えないように思われるが,しかしこれは都市計画の物的側面に関する知識に欠けている私の誤解なのかもしれない.
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