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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生35巻4号

1971年04月発行

文献概要

綜説

生活環境中の発ガン物—特に芳香族アミンを中心として

著者: 竹村望1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学公衆衛生学教室

ページ範囲:P.247 - P.253

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エッピング黄疸事件
 数年前にロンドンのエッピング地区で,突然84名にのぼる黄疸患者が発生した.始めは流行性肝炎の発生と思われたが,よく調査していくと次のような事実がつきとめられた.すなわち,ある貨車の中に小麦粉と同時にエポキシ樹脂の硬化剤として使われる4.4'-diaminodiphenyl-methane(図1)が積んであったところ,この硬化剤を入れた箱がこわれたために,この化学物質によって小麦粉が汚染され,この小麦粉でつくったパンを食べた人たちに黄疸の発生があったことがわかった.そこでイギリスのMedical Research Council研究所のSchoental1)はこの硬化剤の毒性検査を行なったところ,雄のラットに肝障害のほかに肝ガンと腎の血管腫の発生をみ,雌のラットに子宮の腺腫の発生をみた.エッピングでの黄疸事件は,diaminodiphenyl-methaneがヒトに肝障害をおこさせ,また実験結果から発ガンの危険性もあることが示された.
 しかし,これまで芳香族アミン類には発ガン性のものがあることが知られており,図2に示したようなアミン類は過去の職業ガンの発生や動物実験の事実から発ガン性が証明されている.このなかのいわゆるベンチヂン(4.4'-diaminodiphenyl)の化学構造から考えると,diaminodiphenyl-methaneも一応発ガン性の危険がないかを疑ってみる必要があったであろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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