教室めぐり・25 信州大学公衆衛生学教室
地域住民の健康をめざした医学
著者:
釘本完
所属機関:
ページ範囲:P.309 - P.309
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昭和34年に公衆衛生学教室が新設されて今日に及んでいるが,当初より教室の基本的な研究課題として「地域集団の健康管理」を設定して作業をすすめてきている.もっともcommunity healthを対象とするということは,いわば公衆衛生学そのものの基本的命題であるから,ここであらためて教室の研究目標とすることはおかしなことであろう.しかし,新設の公衆衛生学教室へ赴任してきた当初の自分の偽らざる感じは,農村社会を現場にひかえた大学として,とくに公衆衛生のあり方として,地域社会のもつ意味がいかに重要であるかということで,これまで都会の旧い大学においては実感できなかった公衆衛生と地域とのむすびつきの重要性が新鮮,強烈かつ緊急な問題としてあらためて痛感させられた.
われわれは地域住民の健康問題に関して,直接その地域のなかから具体的な実践課題を見出し,その対策の樹立,実施のなかからこれらの体系化を図ることにもっとも基本的な目標をおくべきではないか.信州大学をささえる地理的,社会的条件は,われわれの研究がわれわれをとりまいている具体的な住民生活の中から出発し,その健康問題に関する分析検討,一般化,体系化と同時に再び速かにその社会に還元することを強く望んでいると思われた.