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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生35巻6号

1971年06月発行

雑誌目次

特集 保健婦 特別論文

保健婦活動の現状と展望

著者: 木下安子

ページ範囲:P.328 - P.343

はじめに
 1970年10月第28回日本公衆衛生学会総会が名古屋で開かれた.なかでも多くの出席者を集めたのはシンポジウム"住民との接点における保健活動--公衆衛生看護活動を中心として--"であった.会場を埋めたのは当然ながら保健婦で,こうした会合に足をはこばせるのも,保健婦が日常活動のなかで悩み,その解決をつよく求めているからであろう.
 4時間にも及ぶ討論が交わされたが,そのなかで,「保健所や自治体の枠が保健婦の活動を決定するのでなく,保健婦が主体的に住民のなかに入っていく姿勢こそ基本である.」「基本的な保健婦の姿勢,それをつらぬきとおすには,医師や上司に依存していては駄目で,教育の段階から保健婦自らの手でおこなうべきである」という"保健婦の自立性"を強調する発言が印象的であった.

保健婦教育の現状と展望

著者: 仁木コト

ページ範囲:P.344 - P.350

 近年看護婦不足をはじめとする看護問題が看護制度や看護教育のあり方にまで及んで行政,民間,医療保健関係者の関心事となり,それら問題点の焦点化と対策が今日的問題として論議されている.
 それは医学の高度化,機能分化,医療機関の拡充および社会変動によって増大された保健ニードや医療関係領域の拡大,あるいは社会情勢に対応した保健福祉策の充実などによって高められた看護の需要であり「必要性」に対する量,質,役割,期待の積と考えられる.

座談会

保健婦と保健所長

著者: 清水寛 ,   山下章 ,   宇津野ユキ ,   小林ゆき子 ,   西本多美江 ,   福永裕子 ,   山本裕子

ページ範囲:P.356 - P.369

 変貌激しい社会の中で,住民の要求を汲み上げていくには対人保健サービスをどのように展開していったらよいか.
 これが現在の問題となっている.そこで,これまでの保健婦活動をパートナーとしての保健所長はどう評価し実際にどのように協力してきたかという反省をふまえて,これからの保健婦活動の展望をさぐってみた.

同和対策ととりくむ保健婦

著者: 乾死乃生

ページ範囲:P.354 - P.355

 全国的な部落解放運動の高まりのなかで,昭和40年8月に同対審答申が出され,44年7月には特別措置法が制定されて,同和対策に対する国および地方自治体の姿勢も漸進的ではあるが一定の取組みをみせている.

サークル活動の紹介

—さつき会—"保健婦は何をするものか"をおしひろげて

著者: 宇津野ユキ

ページ範囲:P.352 - P.353

 「保健婦って一体何をするものか解らなくなってしまった」「医師は聴診器をもっていれば医師だってわかる,細菌検査は顕微鏡とシャーレ,X線検査技師はX線撮影を,栄養士は栄養指導を,とそれぞれ象徴的なものがあるのに,保健婦には何もない.いろいろなことをさせられていながらこれといったものがなく,それでいてこれをしちゃいけない,あれをしてはいけないというものがまたやたらとあって,全く保健所に入って毎日毎日がゆううつで,アレコレと胸ふくらませて就職したが,日ごとに意欲がなくなり,もうやめてしまいたくなった.」こんな会話が私の下宿の四畳半で若い成りたてホヤホヤの3人の保健婦で交わされたのは37年4月の末でした.
 話していくうちに,現状はこうでも,そこを何とかしていかねばならないんじゃないかというところまできた時,私達だけでなく同じような考え方をして毎日を悶々と送っている人が他にもたくさんいるだろうし,また既にこの現状を変えようと努めている人びともいるのではないかということに気づきました.

—大阪水曜会—年間200円で13年のキャリア

著者: 林義緒

ページ範囲:P.353 - P.353

 昭和32年にはじめて集りを持った頃,水曜日に集っていたので水曜会と呼んでいますが,最近は土曜日の午後に集会をしており,この13年間とぎれもせず続いております.会員は60人で年間200円の会費を払っています.1万2千円の会計で何ができるかと笑う人もあるでしょうが,ずいぶんいろいろのことがやれてきました.月1回の定例会なので年1回,ほとんど毎月テーマは変ります.そのなかでつづきものとしては,はり灸,看護史,漢方,保助看法の勉強会などで,あとは仕事を語る会として会員の仕事の紹介,事例研究,集会学会報告,講師を招いての勉強会です.
 テーマは会員の要望をもとに決め,こまかくは毎月検討して主話者をお願いします.

実践の看護を考える

著者: 白鳥邦久

ページ範囲:P.370 - P.371

1.実践の看護学
 わたしは看護学を総合的な実践の科学ではないかと思っています.しかも自然科学と社会科学の両側面に立脚する知識の体系であって,人間生態学的立場に立って看護を考えるべきであると思います.総合的な実践の科学としての看護学は,環境とのかかわり合いにおいて生活の合理化を目標としてとらえることができます.そこで,その目標に向ってなされるすべての努力が看護活動(保健支援活動と呼んでもいいような気がします)であると,思います.
 総合的な実践科学とは,いわゆる分析的研究によって成果の上っているいろいろな基礎科学にのっかって,それぞれの学問領域をはみ出してひとつの共通目標(環境とのかかわり合いにおいてとらえられる生活の合理化)に向つて,目的体系で整理されるべき知識の体系であると思います.

発言あり

保健婦の医療行為

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.325 - P.327

保健婦の専門性は医療ではない
 無医地区問題,僻地医療の問題は,現在の国民医療の問題のなかで深刻である.それは,現在の医療制度の欠陥から生じたヒズミでもある.無医地区問題解消のための保健婦設置の動きがあるが,これは,安上がりに無医地区の問題を保健婦に肩代りさせる手段であり,それが保健婦の医療行為につながるのではないかとの懸念がある.保健婦は医師の肩がわりではないし,僻地や離島に行かない医師そのものに問題がある.その原因は,政治の貧困であり,行政の問題であり,また現在までの封建的な医学教育の結果でもあるとの意見が多い.この意見には全く同感である.しかし現実は,医師のいない離島や僻地に生活をしている人たちがいるのである.この事実をどのように,医療従事者は受け止めるべきであろうか.僻地に生活をしているもので,こうした評論家的な意見を聞くことで満足している人は1人もいない.医療が現実の生活のなかに導入されない限り,医師も保健婦も,我々の健康問題とは縁遠い職種であるとの考えを深くするだけである.また一面,無医地区同様,全国には約20%の保健婦未設置村がある.このほとんどは僻地や離島が多く,さらに財政規模の微弱な村のみである.こうした僻地や離島には保健婦業務は不必要であろうか.

講座

環境保健の提唱(最終回)

著者: 長田泰公

ページ範囲:P.373 - P.376

 本講座の第1回に筆者は,広範にひろがった環境問題に対処するために「国際的なレベルで,国のレベルで,あるいは地域のレベルで,綜合的な保健計画と保健活動のなかに組立てるべき環境対策」,「このあるべき姿を名づけたのが環境保健ということばであろう」と述べた.本講座の最終回に当って,この「あるべき姿」を述べる義務があるわけであるが,専門外のことゆえ,その全体像を描くことは到底できそうもない.そこで幾つかの資料をもとにして,環境保健の組織と活動について筆者なりの考察を加えることにしたい.

報告

放射線防護に関する公衆衛生上の責任—放射線専門委員会第4回報告(WHO)

著者: 山県登

ページ範囲:P.377 - P.387


 本報告は,1962年9月11〜17日に,ジュネーブで開催された放射線専門委員会の報告である.委員はMartinez Baez(メキシコ),Chadwick(アメリカ),Henningsen(デンマーク),El Kharadly(アラブ聯合),Krotkov(ソビエト),McLean(イギリス),Pellerin(フランス),Watari(日本)の8名で,他の国際機関からは,IAEA,ILO及びFAOの代表が参加した.事務局としてDobson(WHO),Blatz(アメリカ),Hydeman(アメリカ)が出席した.

私たちの保健所・30 香川県・高松保健所

総合医療を旗印に

著者: 神原正文

ページ範囲:P.372 - P.372

沿革
 香川県には7保健所と1支所があり,当高松保健所は,支所を持って,管内は1市7町面積438km2,人口34万5千と県人口の1/3強を有し,他県の県庁所在地保健所と同じく大型保健所となっている.職員数は73名で4課制(総務課,衛生課,業務課,指導課)で運営されている.当保健所の特徴についてご紹介すると,まず第一に,当保健所は,香川県保健衛生センター内に設置されていることである.
 この衛生センターは地上9階地下1階で,県医師会,県薬業連合会,県ガン予防協会の団体のほか,衛生研究所,成人病センター,精神衛生センターが同居しており,西に隣接して県立中央病院があり,この地域は,知事のいうところの,香川県の保健医療センターを形成している.この保健衛生センターは,昭和42年5月に設立されてすでに満4年が経過し,そのあいだ医療関係者ならびに一般県民の利用に多大の便宜をもたらしたのであるが,時代のすう勢とともに,これら施設の利用者は増加の一途をたどり,最近ようやく該センターの狭隘を感じるに至っている.すなわち隣接の県立中央病院の増改築(地上12階地下1階)の竣工に引き続いて,保健衛生センターの狭隘も解決されるものと期待している.

北から南から

僻地医療のあり方を求めて—高知県幡西地域保健医療センター

著者:

ページ範囲:P.376 - P.376

 今年1月12日に高知県立宿毛病院内に新設された「高知県幡西地域保健医療センター」は,厚生省,県厚生労働部,県病院局,関係市町村,地元保健所および医師会,岡大医学部など幅広い協力態勢の下に活発な活動を進めている.
 センターのメンバーは医師2名,保健婦2名および看護婦6名と事務1名の11名で,幡西地域に存在する19カ所の無医地区に対する2週間に1度の巡回診療とともに,総合的な検診を実施して,より積極的な地域保健管理活動を進めている.これら検診,診療に加えて地域住民の要求に応えて,白ろう病調査などのその地域特有の職業病対策や,生活環境調査にもセンターとして機能を発揮している.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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