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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生35巻7号

1971年07月発行

文献概要

講座

症例による老人の精神医学—老人の痴呆

著者: 金子仁郎1

所属機関: 1大阪大学医学部精神医学

ページ範囲:P.439 - P.442

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 老年になるにしたがい脳は老化し,知能殊に記憶力は漸次減退し,活動性が低下するが,通常日常生活に支障をきたすほどにはならない.しかしなかには,ある者は知能の減退が強く,他人の世話にならなければ日常生活たとえば着衣,食事,排泄,洗面なども満足にできず,外出しても道がわからなくなり迷ってしまうというほどになる.このように他人に依存しなければ独立して生活できぬほどの知能の減退を示したものを「痴呆」のなかでも重症痴呆と呼ぶ.精神薄弱の場合は知能指数でもってIQ70以下を精神薄弱とし,さらに軽愚,痴愚,白痴と区別するが,老人の場合はこのような知能指数による明らかな区別あるいは限界はなく,現実生活のあり方で一応の区別をするよりほかはない.記憶力の中等度の低下のみられるのを軽症痴呆,理解力,判断力,計算力の低下がみられるのを中等度痴呆とする.
 このような痴呆をきたす原因は明らかでないが,ある程度遺伝的体質が関係しているようである.50〜60歳代にすでに痴呆がはじまるのを初老期痴呆と呼んでいるが,このうちピック病は遺伝関係が濃厚である.アルツハイマー病は老年痴呆と症状や病理所見も類似し,両者には移行があるものと考えられている.これらの初老期痴呆ことにアルツハイマー病は最近注目されるようになりだした結果,臨床例が多数発見されるようになった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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