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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生35巻8号

1971年08月発行

雑誌目次

特集 レクリエーション

レクリエーションと現代生活

著者: 園田恭一

ページ範囲:P.456 - P.462

レクリエーションとは
 初めにレクリエーションという言葉の使われ方からみてみると,たとえば次のような説明がされている.
 「仕事や勉強などの疲れを,楽しみや喜びにより,精神的,肉体的に新しい力をもりかえすこと,休養,娯楽」(『広辞苑』岩波書店).

レクリエーションと健康

著者: 田多井吉之介

ページ範囲:P.463 - P.470

 レクリエーションは,その字義どおりにとれば,気晴らしや,スポーツなどの運動をして心身の疲労や消耗を回復するという意味になる.したがって「レクリエーションと健康」というテーマは,元来,議論の対象にはならない.なぜなら,健康にやくだつ心身の疲れをとる活動,そのものがレクリエーションとなるといった,同義概念なのである.しかも,そのための身体的方法については,職業別に3人の専門家の記述がなされるはずになっている.したがって,そのテーマを述べても屋上屋を架すことになる.そこでここでは.編集室の意向をえて,レジャーにおけるレクリエーションと健康の位置づけについて考えてみることにする.
 つまり,生活の多様化とレジャー増大化の昨今,その一部を健康づくり,いわばレクリエーションにさく必要性を考究してみることにする.したがって,筆者の題名を一口で正しく表現すれば,「レジャーと健康」ということになる.

サラリーマンのレクリエーション

著者: 佐原洋

ページ範囲:P.471 - P.474

(1)
 「サラリーマンは気楽な稼業」という流行語が植木等という俳優の名文句として,一世を風靡したことがあった.考えてみると,もう10年ほどもまえのことになる.
 ところが,ちょうどこの「サラリーマンは気楽な稼業」と言われだした頃から,実はサラリーマンはだんだん気楽な稼業ではなくなる気配になってきた.たとえば「モーレツ・サラリーマン」などという言葉が生まれてきた.さいきんでは「モーレツからビューティフルへ」などという流行語があるが,モーレツにせよビューティフルにせよ,いわくコンピューター,いわく経営学,いわく外国語,いわくビューティフルな教養などと,次から次へとサラリーマンに対して要求される知識や能力が,エスカレートするばかりである.

若年労働者のレクリエーション

著者: みうらたもつ

ページ範囲:P.475 - P.479

現代若もの気質
 1.契約人間
 学卒の若ものたちの,希望する就職先が,ここ数年で,次第に変化してきたように思う.つまりこれまでは,資本金の大きい,従業員数の多い,いわゆる大企業が好まれたが,どうも"大きいことはいいこと"でなくなったようである.
 彼らが殺到するのは,硬より柔,重より軽へ,つまりカッコイイ,ビューティフルな職場を選ぶ,もうすこし,まともにいえば,人間と人間の触れ合いのある,暖かさのある職場を本能的に嗅ぎ分けるようである.

家庭主婦のレクリエーション

著者: 足立喜美子

ページ範囲:P.480 - P.483

 家庭の主婦のレクリエーションについて述べる前に,今の日本のレクリエーションとは何かについて考えてみたい.近年,休日の自由時間のすごし方のなかで最も多いのが,「テレビ,ラジオ,新聞など」を見たり聞いたりするもので,約8割,つぎが「ゴロ寝などの休息」「庭いじり,日曜大工」「読書」「買物・訪問」の順で,「旅行」は第10位である(経済企画庁「消費者動向予測調査」昭和45年版).
 自由時間の過し方はレクリエーションと関係があり,最近のレジャー・ブームの中で,レジャーとレクリエーションは同じに見る人もいる.ところで,今年のゴールデン・ウイークについて5月6日付朝日新聞夕刊は,「連休戦争で大量の死傷」「354人が交通事故死,危険な運転マイカー族,けが人は2万越す」「レジャーアニマル2000万」との見出しで,戦後2番目の暗い記録を訴えていた.

アメリカのレクリエーション

著者: 渡辺俊男

ページ範囲:P.484 - P.486

レクリエーションやレジャーの源泉となっている国民性
 アメリカのレクリェーションやレジャーの源泉となっている国民性の特徴を私は滞米中至るところで見た.アメリカ人は子供から老人まですべてが余暇活動を楽しんでいる.その底に自由を尊び,自分の個性を大切にするという精神の泉がある.
 アメリカのレクリエーション活動は今やマスレジャー時代のまっただ中にある.若い人びとは,すべてのスポーツ,あるいはピクニックやドライブに,その季節季節には水泳やスキーに,年をとった人びとは釣りに,狩猟に,身体的な面だけではなく映画,ギャンブル,スロットマシンなどあらゆるレジャー施設に熱を入れている.かれらが余暇を楽しむ場は,街といわず村といわず到るところにある.アメリカにおけるレジャーは若いものたちだけのものではない.

レクリエーションとレジャー・ブームの背景

著者: 相磯富士雄

ページ範囲:P.487 - P.489

レクリエーション運動発祥の背景
 レクリエーション運動は米国にはじまる.その背景は,米国における1900年台の資本主義の急速な発展,とくに人口集中による大都市の形成,ならびに重化学工業,機械工業の発達にともなう労働形態の変化などによる労働時間の短縮である.当時,米国における急速な都市化傾向は,従来の日曜日には三々五々教会に集まり讃美歌をうたい祈りをささげるといった牧歌的・農村的風俗を崩壊し,とくに大都市の無秩序な膨張の中では子供たちの遊び場すらなく事故が急増した.「運動場はすべての児童にたいし,学校と同程度に必要な設備である」という主旨の運動場協会が1906年に発足した.
 またこのような背景の中で,新しい生活の更新,労働力の再生産を求められる結果,翌1907年には同会は青壮年もふくめたレクリエーション協会(National Recreation Association)にと発展した.

資料

若年労働者と家庭主婦のレクリエーションの実態

著者: 山岡通宏

ページ範囲:P.490 - P.491

はじめに
 経営管理的・事務技術的階層などが忙がしくなり他の階層との間に自由時間の格差が生じてきつつあるのではないかとの説が一部でいわれてはいるが,一般的に自由時間は増大する傾向にあろう.労働省「毎日勤労統計調査」によれば,従業員30人以上の事業所における非一次産業では週当たり労働時間は35年の46.8時間から44年には43.8時間となり,この10年間に約3時間短縮されている.また,NHK「国民生活時間調査」によれば,「テレビを見ながら家事をする」といった「ながら時間」も含めると自由時間(平日)は成人男子で35年の5時間20分から45年の6時間14分へ,成人女子で35年の5時間17分から45年の6時間16分へほぼ1時間増加している.ただし,この変化のほとんどが35年から40年の間になされており,しかもテレビ視聴時間の増加によってなされている点は注意を要する.
 このような自由時間の増大は,基本的には労働生産性の上昇によるものであるが,所得水準の向上を背景として労働と余暇に対する考え方が若年労働者を中心に大きく変化していることも見逃せない.「仕事は仕事,遊びは遊び」といった合理的意識の浸透は,この変化を端的に示すものであろう.

発言あり

現代人の孤独

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.453 - P.455

レクリエーションとリクリエーション
 「レクリエーションとリクリエーションはちがうんですよ.正しい用語はレクリエーション.リクリエーションのほうは再創造,造りかえるの意味ですから絶対に間違えないように…….」何年か前のこと,レクリエーション専門の先生から,釘をさされるようにこういわれたことを思い出す.ムキになってそれを強調したその先生の顔を忘れることができない.そして英語の辞書をひいてみると,たしかに綴りの同じrecreationということばに発音と意味の異なる2つの場合があり,はっきり別のものとして表示してある.
 だが,ふと,このごろは考えるのである.リクリエーションのないレクリエーションはありえないのではないか,と.英語そのものの意味はともかくとして,あすに向けての再創造のためのレクリエーションでなければ,単なるその場しのぎの,余暇つぶしの,気晴らしのための娯楽以上の何ものでもありえないのではないか.

講座

婦人労働(3)

著者: 嶋津千利世 ,   原田二郎

ページ範囲:P.493 - P.496

 工場 前回までで,機械を利用することによって労働がどのように変化し,労働者にたいする資本の優位の手段として機械がどのように利用されるか,ということをみた.機械による労働が実際におこなわれる場所は工場とよばれる.したがって,機械による労働は,工場労働として現象し,そのような労働をおこなう者は工場労働者とよばれる.
 マルクスは,ユーアの説明を引用して工場をつぎのように説明している.

原著

ヘルス・ケア計画のビジョン—公衆衛生の立場からのアプローチ

著者: 立沢寧 ,   原田幸彦 ,   穂積登

ページ範囲:P.501 - P.508

 国民のヘルス・ケアについては,新しい目で見て,新しく考えなおす時がきたようである.
 医療の普及と,医学の進歩と,医療にたずさわる人の増加と,その背景として,科学の進歩と,経済機構の変化と,そのほか社会のもろもろの変化のおかげで,日本の国民の平均寿命は,昭和初期の45歳より,40年後の今日,70歳を越えてしまった.しかも医学の進歩は,ますます速度をはやめ,また社会は産業社会より情報化社会へと変遷しつつあり,人間の生活は大きく変化しつつある.

研究

定期健康診断時の蛋白尿について—特に九州大学保健管理センターでの検尿法とその成績を中心として

著者: 井上幹夫 ,   高杉昌幸 ,   吉田紗智 ,   宇都宮弘子

ページ範囲:P.509 - P.512

はじめに
 近年,若年者結核の減少と大学における健康管理に対する関心の増加にともない,精神衛生や心・腎疾患,糖尿病などの内科的慢性疾患などが健康管理の対象として重視されるようになった.ことに最近,検尿試験紙の出現により簡単に短時間で多人数の検尿ができるようになり,定期健康診断時に検尿を実施する職場や学校が多くなっている.
 しかし,このような集団検尿で発見された蛋白尿の診断的な意義や予定の見通しなどについては不明な点の方が多い.健康管理業務をすすめるためには,検尿によってスクリーニングされた尿蛋白陽性者に対して精密検査をおこない,個人ごとに異常の有無・程度を明らかにして,医療措置や就学上の指導をしなければならない.ところが,これまでの蛋白尿の研究は,主として病院での患者を対象として,尿蛋白の化学的免疫学的性状,発生機序,腎の形態的異常との関係などについておこなわれており,健康管理の面から蛋白尿の問題を疫学的に捉えたものはきわめて少なく,学生の蛋白尿陽性者の健康管理について指標となるべきものがないのが現状である.

人にみる公衆衛生の歴史・6

緒方 正規(1853〜1919年)—衛生学講座の創始者

著者: 川上武 ,   上林茂暢

ページ範囲:P.498 - P.499

 いまや講座制は根底より大きく揺さぶられている.封建的な権力機構として,ながく君臨してき九医局講座制が日本の医学・医療の最大のガンであることは周知の事実であった.
 インターン制度廃止を闘っていく過程で,問題の本質に気づいた医学生・青年医師の目は当然のことながら講座制そのものに向けられるにいたった.東大病院精神神経科医局の解散宣言もその運動の一つといえる.

根をおろす医師会活動

四日市市医師会—公害対策を主とした地域社会活動

著者: 麻生国雄

ページ範囲:P.492 - P.492

 医師会の地域社会活動の必要が叫ばれてから,既に相当な年月が経過しているが,その成果の方は決して立派なものとはいえない.
 もちろんこれまで地域社会活動がなかったわけではなく,学校医活動,予防接種に対する協力,3歳児健診などが行なわれてき,現在もまた各地で実施されている.

教室めぐり・26 日本医科大学衛生学教室

科学的"雑学"に徹する

著者: 乗木秀夫

ページ範囲:P.497 - P.497

 日本医大の衛生学教室は,昭和10年代にその基礎ができたようである.当時は,現在の予研の所長をもって現役を退かれた故小島三郎教授が,当時東大付属伝研部長として,消化器系伝染病の研究と環境衛生と,さらに先生の別の面のスポーツ医学とが,衛生学教室をささえていたようだ.そして,前公衆衛生院長の古屋芳雄教授が民族衛生学を,また,村島教授が短期間であるが,厚生科学という部面を講義しておられ,その教育時限数も多かった.
 新しい制度になってからは,これらを統合し,さらに整形外科のスポーツ医学,内科学の寄生虫病学なども加え,内容的にはマンモス化してきた.しかし,依然として,伝染病を対象とする研究が多く,それを拡げて,現地疫学から地域管理へと伸びたようである.

研究所総点検・4

国立衛生試験所—100年の伝統の上に新たな衛生試験所構想を

著者: 川城巌

ページ範囲:P.500 - P.500

沿 革
 明治維新の直後,外国から物心両面の文化が恕濤のごとく流入してきた当時は,わが国の医薬品も少数の和漢薬を除けば,ほとんどがいわゆる洋薬と称する輸入品で占められていた.しかし,これらのものは玉石混淆で,なかにはその品質が粗悪であったり,膺造物であって,ために悲惨な中毒患者も著しく発生するというような状態であった.そこで当時の政府は国民が使用する医薬品は,まずその品質を自己の手で確かめるべきであるとの信念をもって,1874年(明治7年)当時の文部省のもとに司薬場なるものを東京,大阪,横浜などに設置し,主として輸入医薬品の試験を行なうことになった.
 その後,司薬場は衛生試験所と改称され,内務省所管となったが,その後,横浜を除く東京と大阪衛生試験所は厚生省に移管され第二次大戦まで発展的に業務を続け,食品衛生の分野までも担当した.しかし大戦中の爆撃により東京,大阪両試験所とも灰燼に帰し,業務も麻痺状態に陥ったが,昭和24年東京試験所は世田谷区上用賀の現在地において国立衛生試験所と改称,大阪は同大阪支所として再起した.

厚生だより

昭和45年度乳幼児身体発育調査

著者:

ページ範囲:P.513 - P.513

調査目的
 厚生省では昭和25年および昭和35年に乳幼児の身体発育に関する調査を実施し,乳幼児保健の基礎資料として保健所,病院などの保健指導の現場で使用する乳幼児身体発育値を作成してきた.近年,公衆衛生中でも母子保健および栄養水準の向上,改善につれて乳幼児の身体発育状態が大幅に改善されてきたため,従来の発育値では実状に合わなくなり,今回,昭和45年,全国的に乳幼児の身体発育状態を調査し,新しい乳幼児身体発育値を定めて乳幼児保健指導の基礎資料を作成したものである.

資料

昭和44年患者調査概況

著者: 小畑美知夫

ページ範囲:P.514 - P.515

 本資料は昭和44年の患者調査を集計したものです.

特集をふりかえる

35巻6号「保健婦と保健所長」を読んで—保健婦は自らの力量をいかに育てるか/保健婦と保健所長をよんで

著者: 高木久子

ページ範囲:P.474 - P.474

 保健婦は,保健所長との関係にあって,住民に対してどんな責任ある働きかけをしたかを考えてみることが重要であると思いました.
 第1に,保健婦が,日頃,直接住民に接していながら主体的にやってきた仕事がなさすぎるとの意見が多いのは,(私もそう思います.)保健所長という上司である医師の指示に絶対的にしたがうという域から脱していない段階でしか,ことを処理せず,住民に対する保健婦としての役割からくる責任あるかかわり合いが少なかったともいえます.そして,所長にしても上司ということを盾に保健婦を便利屋としか見ない面がなかったかということです.そこには当然住民不在になりがちの業務しかないといえます.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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