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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生36巻11号

1972年11月発行

文献概要

発言あり

著者:

所属機関:

ページ範囲:P.675 - P.677

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"文明病" といかに手を結ぶか
 酒は単に栄養源としてのみではなくて,それが中枢神経の麻痺作用を呼び起こし,疲労感の消失,壮快感,満足感をまねくために,古来より "哀歓の泉" として飲用されてきた.
 しかし,酒が「人生の破壊者」としての力をあらわす契機をつくったのは,産業革命であるといわれている.それは多くの労働者が低賃金で長時間労働した後,帰る住居はスラムであり,彼らの苦痛をなぐさめ,一時的の安らぎを与えるのは.強い酒以外には考えられなかったことによるものであろう.このことは,日本でも同様で,スラム街には焼耐,粕取りが大量に出まわり.アルコール中毒の発生に大きな役割りを,はたしている.今日,世界の文明国では,ほとんどすべてアルコールが大きな社会問題となっているし,アルコール中毒は,文明病ともいうべき様相を呈している.とくに,産業構造の高度化近代化につれて,人間の生理機能を無視した交替制勤務や不規則制勤務が増加し,また,単調労働の増加による労働からの疎外感の増大,組織の合理化にともなう組織の統制力の強化が,個々の労働者をより抑圧している状況では,人生の破壊者としての酒は,単に社会の底辺をささえる労働者のみの問題ではなくなってきている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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