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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生36巻11号

1972年11月発行

文献概要

講座

生態学序論(4)—エネルギーの流れと物質循環

著者: 手塚泰彦1

所属機関: 1東京都立大学理学部

ページ範囲:P.708 - P.713

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4.生態系におけるエネルギーの流れと物質循環
 エネルギーの流れ(energy flow)と物質循環(circulation of matter)は生態系のもつもっとも基本的な機能である.生態系というシステムはエネルギーの流転からみれば解放的なシステムであり,物質の循環からみれば閉鎖的なシステムである.しかし,この2つの機能は独立に作動するものではない.物質の運動はエネルギーの消費をともなうからである.
 生態系の生物的構成要素としては,太陽の光工ネルギーを利用して無機物から有機物を合成する緑色植物(生産者)と他の生物を食う動物(消費者),生物遺体を無機物に分解する微生物(分解者または還元者)の3群があり,動物はさらに植物を食う植食動物と動物を食う肉食動物に2分されることはすでに述べた.生態系におけるエネルギーの流れと物質循環は上の群の生物の存在下で起こるのであるが,それをまとめて図示すると図1のようになる.すなわち,エネルギーの面からみると,すべての生物は太陽の光エネルギーに依存して生きている.というのは,緑色植物は太陽の光エネルギーを化学的エネルギーとして固定し,この化学エネルギーを動物や微生物が利用して生きているからである.しかし,この化学エネルギーも生物によって利用されると,最終的には熱エネルギーとなって系外に失われ,ふたたび生物によって利用されることはない.すなわち,生熊系ではエネルギーは一方的な流れである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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