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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生36巻12号

1972年12月発行

雑誌目次

特集 公衆衛生当面の課題(第13回社会医学研究会特集)

「社医研」への誘い

著者: 丸山博

ページ範囲:P.744 - P.744

 社会医学研究会(略称,社医研)の第13回総会は昭和47年(1972)7月23(土)・24日(日)の両日にわたり,大阪府下の天野山金剛寺でひらかれた.本誌本号はその特集号となる.
 ふりかえってみれば,昭和30年(1955)4月,京都の大徳寺大仙院でもたれた「全国公衆衛生懇話会」に端を発して,全国的公衆衛生のボランティアーの連絡をはかる運動がはじまった.

医療の問題点

著者: 曽田長宗 ,   西尾雅七 ,   前田信雄 ,   山下節義

ページ範囲:P.745 - P.751

1.大阪府下公立病院の現状(報告者:木村慶・大阪大)
 木村慶は,表記の演題について報告した.
 国民のなかで,公害,災害,都市問題と並んで医療にかんする自治体の行政責任を追求する要求と運動がひろがりつつある.そのなかで,公立病院の果たすべき積極的役割がのぞまれるが,現状をみると,大阪府下の衛星諸都市の公立病院は年々減少し,住民からの不満,従事者の不足などが顕著になってきている.

保健婦活動のあり方

著者: 木下安子 ,   林義緒

ページ範囲:P.752 - P.768

1.過疎地保健婦活動からの訴え(報告者:宮本秀美・京都府丹後町)
 今まで保健婦2人がいたが,2人ともやめ約1年のブランクのあと就職して,1人で働いている.人口9,600人,年間出生150人足らずで京都の北端にあり,医療にも産業にも恵まれていない.丹後チリメンと観光にたよっている.その町での1年半ほどの経験を話したい.出稼ぎは昔より少なくなったが毎年200人ほど酒づくりや土木関係で出て行く.はた織りして,夏は民宿にきりかえていくところも多くなった.昔の農漁業のときは,女手が休めたが今は休めない.その上はた織りは音がする.音にせかされて,町中落ち着かないムードがある,女性の健康も阻害され,経済的にも産前産後の保障もない.
 保健所と管内の各町が協力して疲労度検診(血圧,尿,血液,診察)というものをしていたが,府から過剰サービスと指摘され,検診は中止された.その上行政の平等ということで,町単独の事業を計画した場合には技師派遣を遠慮させて欲しいという方針になった.過疎地の町村保健婦にとって,専門技術職員のいる保健所はよりどころである.町で医師や検査技師を雇いたくても,人材がない.ぜひとも保健所の協力が必要なのである.結局保健婦1人の力にしか頼れず,まにあわせの保健サービスしかできない.

公害・有害食品・薬害

著者: 東田敏夫 ,   大橋邦和 ,   太田邦夫

ページ範囲:P.769 - P.782

(公害,有害食品,薬品などに関連する報告8題,追加2題あった.ここでは報告と討論をできるだけ忠実に再録した.ただし,報告の内容は各演者に「要約」してもらった.)

公衆衛生と保安処分

著者: 大平昌彦 ,   乾死乃生 ,   丸山創 ,   青山英康

ページ範囲:P.783 - P.798

 報告・討議を始めるに当たって,座長の一人である青山より,本研究会で「保安処分」問題が,公衆衛生活動との関連で討議されることになった経過が報告された.青山は,昨年の第12回社会医学研究会の総会の際に,社会医学研究会としては,単に「保安処分」新設に反対する決議を行なうのではなく,全会員が各自の日常活動の場面で,この問題に取り組み,一年後にその活動結果を報告し合うとの決議がなされたが,今回の討議がこの決議の実践として持たれたものであることを指摘し,さらに昨秋の第30回日本公衆衛生学会総会において,「若い公衆衛生従事者の集い」に結集する社会医学研究会会員の有志の提案により,「保安処分」に関する委員会(委員長:小林陽太郎)が結成されたことが報告された.その後この委員会委員でもあり,今回の報告者でもある桑原・森・吉田の三氏から,「保安処分」の問題を検討する場合,これを単に公衆衛生活動の一分野としての精神衛生活動との関連にのみ限定するのは,その問題の本質を見失う危険性があることが指摘され,この問題のより幅広い視野からの討議が必要であるとの結論に達した.

演題一覧

ページ範囲:P.799 - P.799

医療
〔座長〕曽田長宗・前田信雄・西尾雅七・山下節義
1.大阪府下公立病院の現状 木村慶(阪大・公衛)
2.公的病院と私的病院の運営上,医療活動上の比較検討 宮入昭午・玉川雄司(京都南病院)

グラフ

トウキョウ '72—非道

ページ範囲:P.739 - P.740

発言あり

医療産業

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.741 - P.743

人間尊重の施策を
 ゆがめられた医療とは何か,国民健康の動向は老齢人口の激増と成人病の増加,精神病,公害病など都市化によってもたらされる「現在病」,この膨大化する医療需要を前にして現在の施設には二つの問題点がある.その一つは,医療サービスの質的低下,二つには,医療労働者の絶対的な不足である.この解決策は病院経営の合理化であり,病院の機械化システム化であるとされている.
 医療産業は,大じかけな金もうけの手段として資本主義の本領を発揮,各メーカーは競争で市場独占し,思うがままにコストをきめてゆく.医療産業は資本主義社会の本質を端的に現わしているといえる.

研究所総点検

国立遺伝学研究所

著者: 森脇大五郎

ページ範囲:P.802 - P.803

設立の事情
 本研究所は昭和24年5月31日に文部省設置法が公布され6月1日付をもって誕生した."遺伝に関する学理の総合研究及びその応用の基礎的研究をつかさどり,あわせて遺伝学研究の指導,連絡及び促進をはかること"を目的としていることからも明らかなように基礎的研究に重点をおいたものであり,文部省所轄の研究所としても独自の性格をもったものであった.後年共同研究所のカテゴリーに属する国立大学付属研究所が設置されるようになったが,むしろこれを先取りしたものともいえよう.研究センターとしての使命を帯び,全国の遺伝学者はもとより生物学関係の各学会からも大きな期待をもたれて設立に当たったものである.
 設立の議がおきてから実現までには戦争をはさんでではあるが10年を経過している.すなわち昭和14年10月第12回日本遺伝学会大会の役員会の席上において当時北大教授であった小熊捍博士が国立遺伝学研究所設立の緊要なことを説かれたことが設立への公的な第一歩といえる.つづいて博士は「国立遺伝学研究所設立の急務」と題する20頁に及ぶパンフレットを作成され国会に対する働きかけをされた.翌15年8月には京城で開かれた日本遺伝学会第13回大会が国立遺伝学研究所設立決議案を満場一致で可決している.この運動は戦争で一時中断されたが,終戦とともにいち早く再開された.

日本列島

北陸三県保健所長会

著者: 西

ページ範囲:P.751 - P.751

 昭和47年8月17,18日,石川県加賀市で北陸三県保健所長会総会が開催された.通例の総会行事のほかに,各保健所から研究あるいは事例紹介が行なわれた.そのうちのいくつかをあげると,
 「魚津市における母子健康実態の追跡調査について,第一報 妊娠から三歳児までの実態について」(富山魚津).「三歳児健康調査時における自閉症調査」(金沢中央).「脳卒中・心臓疾患対策」(石川小松).「管内における循環器検診の結果について」(石川輪島).「農村婦人の貧血と食生活ならびに農薬使用状況について」(石川松任).「坂井町に於ける貧血検査の結果について」(福井金津).「保健所における精神衛生活動について」(石川津幡).「越冬食品を中心とした栄養改善3カ年計画」(富山八尾).「門前町赤痢予防特別対策地区の保菌検索の結果について」(石川門前).「勝山市の種痘後の合併症調査について」(福井勝山).「離島能登島町の公衆衛生の現況(石川七尾).「黒部保健所管内に於けるじん肺・珪肺結核について」(富山・黒部).「山中漆器塗装従業員の健康管理について」(石川山代).「福野保健所管内のし尿浄化槽の実態について」(富山福野).「畜犬指導班実施結果について」(石川羽咋)などである.

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基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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