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発言あり
安楽死
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ページ範囲:P.143 - P.145
文献購入ページに移動生命,それは誰のものであろうか.いうまでもなく,その人自身のものである.しかし,もしその生命が危うくなった時,その帰結を決めるのは,一体誰なのか.この問題は医療の中では,毎日直面することであり,きわめて古く,そして常に新しい問題なのである.西欧キリスト教的発想においてすら,このことはゆるがせにできぬ問題となりつつある.
昨年,渡辺淳一氏が,小説現代で提起した,死の選択をめぐる決定権が医療にありうるのか,という問題は,小説の中であるが故に余り論議をよばなかったかもしれないが,社会政策のある程度ととのった北欧諸国においてさえ,重要な論点となっている.近代医学技術の進歩は,たしかに迫りくる死を,一時遠のかせたという功績をおさめた.しかし,病者の悩みや家族の苦しみを救うものではなかった.今日でも,末期がんの患者に何も施療しないでくれと,医師や看護婦にすがる家族は後をたたない.
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