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特集 医療保険抜本改正 Editorial
国民保健と「医療保険」の限界—医療保険再編成構想にひそむもの
著者: 東田敏夫1
所属機関: 1関西医科大学
ページ範囲:P.218 - P.225
文献購入ページに移動わが国における医療の現実はまことに分裂症的様相を示している.ここ数年間をみても,大学紛争,国公立病院スト,自治体病院閉鎖から,心臓移植,薬害,医療公害,人体実験,ニセ医師の横行などがあり,日本医学会総会も「医の倫理」をスローガンとしなければならなかったし,「医療を告発する」市民の会も拡がっている.昨年は,「中医協メモ」をきっかけに「保険医総辞退」に突入した.しかも農村へき地の医療の空白はつづいている.この時,国民医療問題に関連して,見逃すことができないのは,社会保障制度審議会(以下「制度審」)と社会保険審議会(以下「保険審」)の答申を「露払い」として,自民党の「国民医療対策大綱」の基本路線が着々と進められるだろうということである.
昭和44年8月5日,厚生大臣は,制度審および保険審に,「現行医療保険制度を下記の方針のもとに再編成することについて」諮問した.①国民の健康管理体制に密着した医療保険制度を確立する.②社会保険方式を今後とも医療保障施策の中核とする.③保険料負担の均衡を図る.④給付の漸進的合理的改善とその格差是正を図る.⑤財政の長期的安定を図る.医療給付の適正化を図る措置を講ずる.そして,厚生省「医療保険制度改革要綱案」(以下「厚生省案」)を示し,具体的には,①勤労者保険と国民保険の二本立とし,健保家族を国保にくり入れる.②「社会保険公社」で管理運営する.
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