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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生36巻8号

1972年08月発行

特集 法改正の動向

無過失賠償責任法案

著者: 沢井裕1

所属機関: 1関西大学法学部

ページ範囲:P.494 - P.496

文献概要

無過失責任法案の国会提出まで
 公害についての無過失責任論の歴史は古いが,公けの機関がその立法の必要を説いたのは,昭和41年8月の公害審議会の中間報告が最初であろう.これには財界の反対が強く,同年10月の本答申には,これが反映して,賠償責任は,被害が一定の受忍限度をこえる場合にのみ生ずるとの留保がつけられたが,ともかく無過失責任主義の必要性がなお強く主張されていた.
 この答申を基礎として,昭和42年8月に公害対策基本法が制定されたが,この無過失賠償責任については何ら触れるところがなかった.昭和45年9月,宇都宮市における一日内閣で佐藤首相は企業の無過失責任を早急に検討したいと言明したが,3ヵ月後の64国会では,無過失責任は民法の大原則の例外となるものだから慎重に検討するとの答弁をくりかえすのみであった.昭和46年には,野党三党が無過失賠償責任法案を国会に提出し,これに対応して,政府の公害対策本部案が発表されたりして具体的な動きがみられた.しかし,いずれも規制物質に限定され,因果関係の推定規定もない不十分なものであった.そのようなものでも,結局,陽の目を見なかったのである.いかに陰の反対圧力が強かったか推測される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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