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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生36巻9号

1972年09月発行

雑誌目次

特集 結婚と公衆衛生 座談会

結婚と社会

著者: 湯沢雍彦 ,   古川哲史 ,   田村健二 ,   諸岡妙子

ページ範囲:P.546 - P.553

 社会の最小単位である家族の基礎ともいえる結婚は,公衆衛生に最も関連のあるものの一つであるが,本誌では,6月号で特集した「性」とも深く関わる「結婚」についてのアプローチを試みた.
 この座談会では,社会学,倫理学畑の先生方にお願いして,結婚とはなにか,結婚と家庭,また社会との関係などについてお話しいただいた.

結婚と医学

著者: 竹村喬

ページ範囲:P.554 - P.565

 「女の一生」で,医学的に最も大きな転機は,初潮,結婚,妊娠,更年期などである.とくに,結婚は劃期的なもので,女性としての登竜門でもある.したがって,結婚は,女性としての第一歩を踏み出したことであり,その有する意義はきわめて大きいといわねばならない.
 一方,妊娠,分娩は結婚によって,はじめて可能であり,両者の因果関係は今さら説明を要しない.このように,結婚は,医学,とくに産婦人科学との結びつきがかたく,高年初産婦,家族計画,勤労婦人など,社会的にも問題となっていることが少なくない.

優生結婚

著者: 名取光博

ページ範囲:P.566 - P.570

 男女の精神的,肉体的結合が結婚であり,その結合状態を永続させ,確実なものとするために結婚式があり,婚姻届の制度で,法律的に男女を平等に保護しているのが,結婚の形式である.そのような形式とは別に,多くの夫婦は,しばしば本人たちの意志とは別に,結合の結果として妊娠し,新しい生命を誕生する.それを愛の結晶と呼ぶ.
 もっとも,はじめから,新しい生命の誕生を予測し,より優秀な子孫を生むには,どんな男女の組み合せがよいかと,本人,家族,その親せきをも含めての遺伝関係を検討し,これならばと結婚に踏みきる場合も多いであろう.恋愛結婚にしても,その交際期間を通じて,本能的に人はそのような検討を重ねているはずである.優秀な子孫を生み育てることは社会全体にとっても,きわめて意義あることである.

結婚と離婚

著者: 野々宮喬史

ページ範囲:P.571 - P.578

 一般に婚姻形態は,その国の習慣や風習はもちろん,時代によっても異なるので容易に統計では判断のできないことはいうまでもありません.特にその国の婚姻制度との不適応性の問題があって,統計上の集団化や等質性の点で難しい事柄が多いわけです.わが国の人口動態統計は,官庁統計としては唯一の婚姻統計ですが,婚姻は法制上届出婚となっており,届出を婚姻の成立要件としていますから,当然この戸籍届の集計に過ぎない人口動態統計では内縁についての把握は不可能です.いわばこの法制に適応しない婚姻関係は陰の部分とでもいうべき集団で,しいてあげれば国勢調査の配偶関係別人口では事実婚をも含めて捉えていますので,情報のシステムとしてはいわば国勢調査でストックとして捉え,一方人口動態統計では,そのうちの届出婚の発生と解消(離婚—死別・離別)をフローとして捉えることによって,一応基礎データとしての交絡は保たれてはおります.またその他の資料は,特殊な調査が若干あるようです.
 しかし,いずれに致しましても,わが国の婚姻制度がmonogamyとして,しかも届出主義であり,資本主義社会の一先進国家としての法制上の理念と実際の現実との矛盾が婚姻の社会問題となるのですから,自ずとそれらの調査の方向もそのギャップに向うことは自然でしょう.

未婚者と未亡人

著者: 諸岡妙子

ページ範囲:P.579 - P.590

 18世紀半ばの坊様ズュースミルヒの発見した右の真理は,20世紀の終りに近い今なお,大真理であることは間違いない.
 試験管ベビーが生まれようとし,精子の凍結保存が成功する今日でも,1人の男は1人の女を,1人の女は1人の男を求あて,互いに結ばれようとする.大戦終結直後のベビー・ブームの赤ん坊たちがぞくぞくと適齢に達して結婚し,1970年1年間に婚姻数は未曽有の100万組を突破した.連日3,000組の天下晴れてのカップルが生まれている勘定である.恋愛の自由や性の解放が謳歌され,親のいうことなど聞こうともしない若者たちなら,相惹かれた同志の結合さえあればよかろうし,もし四六時中一緒にいたければ同棲すればよろしかろう,と思われるのに,男も女も結婚という,墓場につづくといわれる門の中に自らを押し込みたがる.2人の男女が互いの愛を永遠に契り合い,かつ社会の中で,他からの承認をうるために,結婚という制度が必要なのだ.この契約は,夫は妻を,妻は夫を盗まれないための防塁の役も果たす.そこで,愛の証しと承認と,またその安全のため,男も女も結婚したがるのである.

事例

都市における婚前学級,新婚学級

著者: 杉原正造

ページ範囲:P.591 - P.593

 川崎市では,昭和41年12月いらい,結婚の挙式まえ2〜3月といった婚約中のカップルを対象とした婚前の教育—婚前学級—と,さらに昭和45年3月から結婚後2〜3月前後のカップルを対象とする新婚早々の教育—新婚学級—を実施している.都市における若い男女性の市民を対象とした"結婚をめぐる教育"の1事例について述べてみたい.
 申すまでもないが,戦後20数年を経た今日のわが国民の"暮らし"は都市も農村も過去に体験したことのないくらい大きく変貌しつつある.京浜工業地帯の中心に位置し,工業都市として急速に発展してきた川崎市も本年4月1日から政令指定都市としてわが国の10大都市の1つに仲間入りをし人口100万人をかかえて,あらたな歩みをはじめている.

ベッドタウンにおける婚前学級,新婚学級

著者: 染谷睦子

ページ範囲:P.594 - P.596

 当小平市は,東京都の西部北多摩に細長く位し,中央を青梅街道が貫き昔ながらのけやき並木が立ち並び,のどかであった武蔵野台地をわずかながら忍ばせております.しかし市全体を眺めたとき,ベッドタウンとしての郊外都市として急激な変化をみせております.
 人口は,昭和40年に96,784人であったものが,昭和47年では138,341人と年々増加の一途をたどっております.この人口増加に伴って保健婦も1名から4名に増員され,当市を所管する保健所を市内に新設されたものの,地区住民のニードにはほど遠い活動といわねばなりません.

グラフ

トウキョウ '72—結婚—けっこうでした……

ページ範囲:P.541 - P.542

発言あり

結婚

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.543 - P.545

まず親となる自覚をもて
 固いこというのは止めて,一般論としていおう.男女が結ばれて夫婦になるのが結婚だが,現在,この男女にもっとも望みたいことは,親となるための自覚をもってもらいたいことである.
 結婚するのは自由だけれど,そして結婚の直接の動機が愛情であろうと性欲であろうと,それはそれで是認できる.とにかく,2人の結婚を周囲は大いに祝ってくれる.結婚披露宴は「若者の騒ぐパーテー」であることが多い.新婚旅行もやたらとデラックスである.もちろんそれはそれで結構である.

講座

生態学序論(2)—生物群集の成りたちとその関係

著者: 手塚泰彦

ページ範囲:P.597 - P.602

2.生物群集
 あるまとまった地域内にたがいに関連しあって生息しているすべての生物(生物群集)とそれを取り巻く無機的環境の総和を生態系(ecosystem)と呼ぶことはすでにのべた.
 今回は,生態系を構成する二大要素のうち,生物群集はどのように構成され,構成員の間にどのような関係が存在するかを考察してみよう.

教室めぐり・34 京都大学公衆衛生学教室

喫緊な転換期の対策

著者: 徳永力雄

ページ範囲:P.603 - P.603

 本教室は昭和24年1月に誕生し,現教授の西尾雅七先生が初代教授として就任された.以来今日まで20余年間,広い分野で活発に活動してきたが,教室の状況は昭和35年ごろを境にかなり変化してきたように見受けられる.すなわち昭和35年以前は教室誕生の意気に燃えて30余名のスタッフがガムシャラに研究に従事した時期で,研究内容も鉛・二硫化炭素・ベンゼンなどの中毒に関する研究,国民栄養(ビタミン)に関する研究,医療体制(健康保険問題)・乳幼児死亡・結核など社会医学的統計学的研究,等々きわめて多岐にわたり数多くの仕事がなされた.35年以後は新制大学院制度発足とともにスタッフも少なくなり,長期のプロジェクトの下で過去の研究の発展と熟成を期した時期とでもいえようか.三つの研究班に分かれ,それぞれが独立に研究を進めているのでその現状を簡単にご紹介したい.
 西尾教授,山下節義助手らは,社会医学的方法で公害,老人,社会福祉,結核,医療制度などについて大学内のみならず自治体や住民も含めた幅広い人々と共同研究を行なっている.西尾教授はかねがね,住民自治・地方自治に立脚した公衆衛生活動とその組織化の必要性を説かれているが,研究分野,方法においてもこの方針を貫ぬき,最近は公害防止条令(京都府)や森永ヒ素ミルク問題などについて大いに活躍している.

人にみる公衆衛生の歴史・17

太田典礼(武夫、1900〜)—産児調節運動と避妊技術

著者: 川上武 ,   上林茂暢

ページ範囲:P.604 - P.605

 大正期にはいり産児調節は,一方で人口問題との結合により,他方で第1次大戦後の生活難よりくる国民の要望もつよく,重要な社会問題と化した.一部では労働運動・農民運動との結合もみられ,国民のあいだに広く浸透していった.しかし,その具体的効果となるとまるでおぼつかなかった.避妊の失敗による人工妊娠中絶が跡をたたず,避妊=堕胎という誤解もうまれるくらいであった.しかも,藩によるちがいはあっても江戸時代に盛んにおこなわれた堕胎が明治政府の人口増加政策のもとで禁止され,非合法の状況でしか行ないえないため,母体の危険もはるかに大きかった.そのなかで確実かつ安全な避妊技術をめざした医師の1人として,太田典礼(武夫)があげられる.

私の意見

米菓で肥るか/「性」特集号への田舎からの追加

著者: 津田順吉

ページ範囲:P.578 - P.578

 20年来小学校の校医をしているのだがこの頃,肥満児の問題が論じられているので,私のような老医も少しく注意している.そのせいか,時々おやっと思うように肥った児を見る.しかし,養護教師にしらべてもらうと,いわゆる肥満児の部類にはいる児はいくらもいない.500人中10人ということであった.しかし肥った子がなかなか多い.
 各家庭の栄養がよくなったためかと考えていたが,ある若い同業の他の小学校の校医をしている医師と雑談をしているなかに次のような見解がのべられた.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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