文献詳細
特集 健康権
文献概要
はじめに若干の断り書きをしておかねばならない.ここに掲げた表題は,私自身の選択したテーマではなく,編集者から与えられたものであり,しかも,そのねらいは,「最近のイギリスの動きを中心として,健康を保持する権利を歴史的に概観し,わがくにの問題に言及する」という点において欲しいということであった.
そこで第一に「健康権」という概念についてコメントを加えておきたい.「健康権」という概念は,現在の法律学界において,厳密な意味での法的概念として認められているとはいいがたい.憲法25条には「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されている以上,「健康権」という概念が法律学において使用されたとしても,何ら不思議ではないはずであるのにもかかわらず,「健康権」という概念は用いられてはいない.ここに法律学界の支配的な傾向と医学者・公衆衛生学者あるいは非法律家との意識の間に,若干の懸隔のあることを認めざるをえない.そのヘダタリは何によって生ずるのだろうか.きわめて概括的にいえば「権利」というものが,社会意識に根差していると同時に,きわめて法技術的に構成されねばならない要素を含んでいることに由来するといえるだろう.
そこで第一に「健康権」という概念についてコメントを加えておきたい.「健康権」という概念は,現在の法律学界において,厳密な意味での法的概念として認められているとはいいがたい.憲法25条には「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されている以上,「健康権」という概念が法律学において使用されたとしても,何ら不思議ではないはずであるのにもかかわらず,「健康権」という概念は用いられてはいない.ここに法律学界の支配的な傾向と医学者・公衆衛生学者あるいは非法律家との意識の間に,若干の懸隔のあることを認めざるをえない.そのヘダタリは何によって生ずるのだろうか.きわめて概括的にいえば「権利」というものが,社会意識に根差していると同時に,きわめて法技術的に構成されねばならない要素を含んでいることに由来するといえるだろう.
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